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マンションの部屋にひとり取り残されて、やっと僕は今日がバレンタインだった事を思い出す。
僕らどっちも女じゃないし、しかも、新しい会社を立ち上げる為に、僕は連日連夜それこそ
骨身を惜しまず働いている。 手を貸したがる親類縁者が多い中、それこそ徒手空拳でやっていこうと
思っているのだから、その苦労は半端じゃない。
それでも帰ってくれば雄斗がいて、最近は時々慣れないながらも家事を手伝ってくれたりして
僕にとっては、大きな安らぎだった。
でも、もしかしすると満足してるのは僕だけかもしれない。
雄斗は僕がいくら忙しそうでも全く、毎日のペースは変わらない。
家から戻るとシャワーを浴びてから書類の整理。気が向けば一緒に食事の用意をして、夕食をとる。
僕が仕事の整理をしていると、雄斗はストレッチを始めて身体をほぐす。
バレリーナのように信じられないほど身体が柔らかい。 時間があれば、その後英会話のDVDを観たり
ネットをやったり。殆ど、自分の世界に入り込んでいる。
だから僕も家での仕事はすごく捗るから、ますます会話が途絶え……みたいな感じで過ごしてきた。
もう、仕事に出かけなくちゃいけないのに、こんなに心が疼くのはなぜなんだろう?
マンネリ化しつつある生活か? それとも僕には最近見せなくなった柔らかな笑顔を
女子中学生に見せた事か。
職場につくと今年は信じられない量のチョコレートを受け取るはめになった。 その数、183……ため息を付きながら、義理が殆どだろうが秘書課に頼んで、名前のチェックとホワイトディの
手配を頼んだ。
どうも毎年、有名菓子店に特注でケーキを注文させて渡すように頼んでいたのが、
こんなとんでもない数のチョコレートになった理由なのだろう。
現金だな……と思いながらも、心のどこかでこんな安い投資はないなんて考えてしまうあたり
僕もこの社会にどっぷりと毒された証拠かもしれない。
「もてますな。それともあなたの未来に対する投資ですかな?」
なんて皮肉る上司を軽くかわして、今夜は早めに家路を急ぐ。
すっかり忘れていたから、レストランの予約もしてないし、自宅で料理する買い物も
とても間に合いそうにないのだ。
「ただいま……」
夜、7時……やっぱりユウはまだ帰っていない。
もらったチョコレートは会社で処分するわけにもいかないので
結局家まで段ボールにつめて運んでもらったが、カードなどを抜いて児童養護施設に寄付する事にした。
まさかその手続きは秘書課に頼むわけにはいかない。
彼女達もほぼ全員がくれたのだ。
がちゃっと玄関を開ける音がする。
「お帰り……」
大きな紙袋を二つも持っている。
「まさか全部チョコ?」
「学校では禁止っていったら、待ち伏せされていてさ。いや〜〜貰わないわけにもいかないだろう?」
なんか鼻の下が伸びてないか?
「僕も義理チョコを養護施設に寄付するんだけど、ユウも一緒に送る?」
「いや、そんなことできない。俺がちゃんと食って感想を言ってやらないと」
なんだと? お前、それまさか全部食べる気? 50はあるじゃないか。
「胃を壊さない?普段食べ物で摂生してるのに」
「いいんだよ。あいつらがくれたんだ。特別さ」
「特別?」
思わず顳かみがぴくぴく動く。
「あぁ、俺の可愛い子供みたいなもんだからさ」
子供ね…… そりゃあ僕らはいくら抱き合ったって子供はできないけどさ。
なんか面白くない。
思わずむうっとした顔になったにちがいない。
ユウが俺の両頬を掴んでそっとキスをした。
「どこかに外食にでもいく?」
「お腹減ってない」 背中からゆっくりと甘えを含んだ声で俺を包み込む。
「じゃあ、子供ができるようなことしちゃおうか?」
はぁ?なにを血迷ってるんだか。
僕が何か言う前にぐっと腰を引っ張られそのままベッドに押し倒された。
「できるわけないだろ、男同士で」
「お前の怒った顔ってすごくそそるぜ。最近すましてばっかりだったもんな」
何をいってるんだか……そう思ったとたんにいきなり恥ずかしい格好に剥かれて。
「ちょ、ちょっと待て」
「そう言われると待ちたくなくなるんだよ、不思議な事に」
解すのもそこそこに早急に身体を繋げられた。いくらなんでも早過ぎだって。
「ユ、雄…と」
「熱いぜ、いつもお前の中……それに入れられてる時のお前の色っぽい事」
ゆっくりと腰を動かす。
「また、つけてないだろ」
生のまま入れたな!
「だからお前の身体の奥に俺の所有のしるしを注ぎ込んでやるぜ」
そういうと思いっきり腰を動かしてきた。
「やだ、やめ、よせったら……いや……あ、あ……っ」
必死に身を捩るが、普段身体を鍛えてるユウにかなうはずもなく。
「お、遅い…今さら……あ、竜……すげーいい…いくぜ」
身体の奥でユウが弾けるのがわかった。あぁ、解けてしまいそうだ。
ゆっくりと腰を引こうとするユウに僕は思わず足を絡めた。
「もう少しこうしていよう」
「いいのか?」
荒い息とともに雄斗の体重がゆっくりと加算されていく。
再び俺達はゆっくりとキスをした。 【おしまい】
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