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どちらかというと暗い印象の僕は今まで一度だってバレンタインにチョコなんか貰った事はない。
そういうとみんななぜか驚くけれど、それは僕にとって悲しい事実だ。
僕って第一印象が冷たいらしい。
全く面識のない女の子から冷血漢なんてとんでもないことを言われた経験もある。
古手川が僕の肩をぽんとたたいて、「いくつ貰った?」
なんて声をかけてくる。
「え?なに?」
「恍けちゃって、イケメンは言う事が違うね」
「え、まじにわからないよ」
「チョコに決まってンだろう?俺なんかやっと6つだぜ」
俺は思わず呻いた。
「いいなぁ。六個も貰ったんだ」
「いいなぁって」
古手川が絶句する。
「僕って子供の頃からもらったことないんだ。親もくだらないってくれなかったし」
「うそ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
そんな絶叫することじゃないと思うんだけど。
「俺の食う?」
「いいよ、くれた子に悪いじゃない」
古手川はまじまじと俺を見つめた。
「お前くらい、中身と外見のギャップのある男を見た事ないぜ。
黙っていれば、クールビューティって感じなのに。なんかきょどっていてさ」
そういって頭を撫でてくれた。
「なんか可愛いのな。お前が女ならパーフェクトなのに世の中うまくいかねーよな」
その時、古手川の頭をぽんと丸めたチラシで叩く男がいた。
「あ、玲司」
「ルナは例え女だって俺のもんだ。気安く触るな」
そのまま僕は海色のパジェロで連行されて。
幾重にも折り重なるようなスカイラインを抜けるとそこは
高台の上にたつ小さなフレンチレストラン。
まるで映画の中から抜け出したような別世界だ。 眼下に拡がる海がここを日本だと忘れさせてくれる。
ここは最近、玲司の一番のお気に入りだ。
「気安く他の男に触らせるなよ」
「やだな、古手川は同郷なだけなんだってば」
「でも、だめ」
最近、玲司は露骨に独占欲を示す。それが嬉しいなんて僕も相当いかれてるけど。
「ルナの為に特に別注で注文しておいたんだぜ」
美味しい食事の後に運ばれてくる小さなブラウーニー。
薄いチョコの板に
「You are my love,Luna」
なんて書いてある。玲司……お前こんなの注文して恥ずかしくなかったの?
「れい…じ……」
そうはいってもやっぱり嬉しくて。
「チョコも貰った事なかったなんて信じられないな」
そういってから、そっと小さな包みを僕に手渡した。
「これでチョコを受け取るバージンも俺が貰ったって事だな」
大人っぽく僕を包み込むように微笑む玲司に、僕もつられるように微笑み返していた。
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