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amulet |
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憂鬱な季節がやってきた。デパートだけでなくス−パーや、コンビニですらまるで逃れられないような一番目立つ場所にチョコレート売り場が居座っている。 俺は自分で言うのも嫌らしいがモテル方なのでチョコレートは山の様にもらうんだ。 だけどなそれが問題だったりする…… なぜって俺は甘いものなんか大嫌いだ。 嫌いなものを押し付けておいて女ってやつは見返りを期待しているんだろ?。 そう、ホワイトディってやつだ。 義理にもらったチョコなんか嬉しくはないし、突っ返してやりたいくらいが、それができるほど俺は男ができちゃいなかった。 それに今年は何が憂鬱だって北埜が、女からチョコを貰うななんていいやがったからだ。 これってとんでもないと思わないか? たしかに俺達なんとなくつきあってはいるけれど、 いろんな出来事があっていまだ、最後まではいたしていないのだ。 それなのにそんな事をいうなんて、俺としては面白くない。 人から見れば身体の関係も出来てないうちから、尻にひかれてるようで全く情けない話だが、北埜の奴 可愛い顔立ちの割にはなかなか喰えない野郎なのだ。 実際付き合って感じた事なんだが、男と女は全く違う。アイツの外見は可愛らしいが、それにだまされてはいけない。 あいつの意識の中で俺は対等なのだ。いつも女にリードをとっていた俺としてはどうも馴れない。 っていうか納得できないものがある。 「くれるっていうものを無碍にもできないしな」 「なるほどね。つまり喜一はいまだに女に未練があるんだ?」 くっそーどうしてそこで余裕の笑みをもらすかな? 最後までやらせないくせに。 「ふん、北埜は最後までやらせてくれないんじゃないか……」 「なんだ、やっぱりそれか……たまってるんだ」 くすくす笑ってる……なんかすごくむかつくんだけど。お前には性欲はないのかよ。 互いにシコってるだけで満足なのか? 俺は違う……やっぱり最後までやりたい。 お前の中でイキたいんだ。お前が俺のを銜えこみ俺の下で喘いでる姿が見たいんだ。 それって男として極普通の欲求じゃないか。 そりゃ、俺は男とは経験ないよ。 でも女とは一応数はこなしてるからな……。 俺が一人で考え込んでいると、流星は機嫌を伺うように俺の顔を覗き込んだ。 「金曜日さ、講議が終わったら、妙高にいかないか?」 「妙高?」 俺はそこまでイケないぞ。遠過ぎる。泊まる金もねーし。 「叔父貴がそこでペンションやっていてさ。今、シーズンだから部屋はダブルベッドで 男二人が寝なくちゃいけないんだけど、タダだし、掃除とか手伝ったら旅費の他に1泊 1万づつくれるって」 「いく!」 無論即答だった。 同じベッドで2泊もしてなにも無いなんてありえないからな。 北埜のヴァ−ジンをいただいて2万円!こんな美味しい話はない。 金よりも目の前の男のヴァ−ジンの方が俺にとっちゃ大切だった。 ノロノロしてる間に他の誰かに持って行かれたら俺は泣くぞ!絶対。 金曜日の講議が終わると俺達はペンションの備品を調達にきた北埜の伯父さんの車に揺られていた。 ときどき、北埜が誘うように俺に膝を押し付けてくる。 なんか心臓がばくばくしてる。まったく中学生じゃあるまいし、何やってるんだろう?俺 今がシーズンのスキー場はとんでもない込み様で一万円で一日拘束されるのを少しだけ後悔した。食事の用意や土産物のレジ、そして女の子達との記念写真までこなしてくたくたになりながら部屋に戻ったのは、もう9時をまわっていた。 「食事はした?」 「あぁ」 「近くに温泉があるらしいよ」 「俺はいい」 俺達の間に奇妙な沈黙が訪れる。 「怒ってる?」 「なにを?」 「僕に付き合わせてこんな忙しい思いさせたから」 殊勝な事をいってるが、これに騙されちゃいけない。 「いいよ、別に」 「本当は僕に怒ってるだろう?」 「どうして?」 まじに落ち込んだ様子の北埜の声に俺は驚いた。 「だから怒ってねーよ」 「うそだ、怒ってる」 「怒ってねーって」 「だって僕が最後までやらせないから……」 ……北埜のそのとんでもない台詞に俺は思わずやつの顔をまじまじとみつめてしまった。 「女でもないのに、しかも経験もないのに勿体ぶってるって思ってるだろう?」 「どうしてそんなこというんだ?」 「だって、喜一ってやらせたらそれで終わりって女の子達がいっていたから」 はぁ?なんだそりゃ? 「ひでーな」 「違うの?」 「酷い誤解だよ……だけどそれでお前……」 やらせなかったのか? なんか急に北埜が愛おしくなった。 ばかだな。本当にばかだ。 セックスは大切だけど恋人達が続く為にはもっと大切なものもある。 お前がそれを知らないなら、俺が教えてやってもいい。 0時をまわって14日になっていたから俺達はどちらからともなくベッドに誘いあってキスをした。 俺達の初めての夜は思いの他、ロマンチックで。 きっと俺にとって一生忘れられないバレンタインだろう。 北埜……お前にとっても忘れられない夜だろう? 俺はすやすや眠る北埜の髪をそっと梳きながら小さくキスをした。 きっと今日も明日も忙しいに違い無い。 ゆっくり眠れ……今だけは。 |