思い出を忘れたくて

バレンタイン番外(前編)


 俺は夢をみた。

 凄く良い夢だ。

 甘くてふわふわして暖かい夢……

 目覚めたくないと思いながらなんだか急に重苦しくて起き上がる。

 あぁ、ちくしょう〜!

 また俺の安眠をじゃましやがったのはこいつだ!

 沢田充……17才の俺の隣のクラスの高校生……。

 全く、なんの因果で俺はこの男の腕枕で起きなくちゃいけないんだ。

 俺の恋人を自認するこの鬼畜な野郎が俺の自宅で下宿しだしてから、いったい俺達は何度 身体を合わせただろう。

 そんなこと考えたくも思いだしたくもない。

 俺は確かにこいつに会うまでは、ノーマルだったんだ。ふわふわして甘い匂いの女の子を ぎゅっと抱きしめて……そう、そしてその子を腕枕して眠り朝には優しくキスをする……

 それが俺の夢だったはず……あぁそれなのに。

 「ちゅっ」

 こいつぅ〜〜いきなり鼻の頭にキスなんかするんじゃね〜〜。

 「おい、朝からキスなんかするな!」

 「その気になったか?」

 「ち、違う!これは違うの!男の朝の生理現象だ!放せ!放せったら!」

 「よしよし!そういうことにしてやるよ」

 そう言いつつも沢田の奴!ちっともあそこを放そうとしない。

 くっそ〜〜〜何がよしよしだ!昨夜だってこいつが満足するまで3回もやったんだ。なんの因果で朝っぱらから男に愛撫を受けなきゃいけねーんだ!

 「やだ!」

 「お〜〜可愛い声だしやがって〜〜〜」

 出してねー!決して神に誓って出してねーぞ!お前の耳がおかしいだけじゃねーの?

 「よせ!ぶっとばすぞ!」

 「だから声を出すなってば、余計に興奮する……」

 ……くぅ〜〜〜〜〜〜!!!結局朝からやるんじゃねーか!もうやだよ!おか〜〜あさ〜〜ん!

 「ご飯よ」

 タイミングよく母の声が台所から響いた。ふぁ〜助かった。

 沢田のやつ面白くない顔をしながらも、もう着替えてやがる!神業だっちゅーの。

 それにしてもあそこがじんじんする……くそ〜少しは手加減しやがれ。

 最初は「好きだ」だの「可愛い」だのとさんざん俺の身体を弄んでいたくせに ちょっとこっちが感じて声を出しただけで、遠慮なくがんがんやりやがって

 何が止まらないだ、

 何がもう少しだけだ……ちっとも少しじゃなかったじゃねーか……

 ちくしょ〜〜〜〜!!!!

 俺がのろのろ着替えてダイニングに行くとすでに沢田はパンに齧りついていた。

 「ほら、これ充くんとタクちゃんに」

 差し出されたのはいかにも義理と解るチョコレート……そうか今日はバレンタインだったか

 「ありがとうございます」

 ……沢田いつも思うけどお前ってお母さんの前じゃ別人だよな?

 「どうも」

 ベーコンエッグとスープとカリッと焼いたバケットをなんとか腹に流し込む。そのままチョコを受け取って家を出た。

 俺はあんまりモテル方じゃないから、チョコなんか貰って2個くらいだろう。

 義理でもお母さんからでもバレンタインにもらうチョコはやっぱり嬉しいものだ。

 俺が機嫌よくしてると、沢田がいきなり俺のディバックを掴んで沢田の方に引き寄せた。

 「や、やめ……くるし……」

 「おい、女からチョコなんか受け取ったら解ってるだろうな?」

 「何を?」

 「受け取ったらお前のあそこに貰ったチョコを塗りたくって齧りついてやるぞ!」

 ……本気だ……沢田の場合マジだから怖い……やりかねないっていうよりやらないわけがない。

 あぁ、誰も俺にチョコなんかくれませんように……

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