海原

cradle of the deep 3



夕日の差し込む2年生の教室は静寂に満ち2人の生徒の黒い影が逆光に写し出されている。 今はもう、まともな生徒は下校したかクラブをやっている時間である。
「どうだい。同室の子猫ちゃんは。」
と久住がいう。 その声はどこか期待に満ちている。 久住は雄斗の同室である海野の元のルームメイトである。 海野の事なら良い事も悪い事も他のものよりずっと詳しかったし、 時には、悪事の協力もしてきた。
「どうも、こうもないよ。僕がちょっと近付くだけでびくびくするんだから」
海野は両手を挙げてひらひらさせながら、呆れたようにため息をついてみせた。 どうも最初の思惑のように事が進んでいないらしい。
「もしかして、お前はもう無体な事をしちゃったわけじゃないだろうな」
海野が何をするかわからない男であるのを一番よく知ってるのは久住だ。楽しい事なら自分も仲間にしてほしかったのにという顔で海野を睨み付けた。
「まだ、何もしてないよ。する暇もない。だけど....」
ふふふと海野が思いだし笑いをした。
「なんだよ。いやらしい」
「子猫ちゃんは空手をやってるらしくて。毎日腹筋とか柔軟に精を出してるよ。 天井から吊るしたピンポン玉を蹴りあげる練習とかもしていて、いじらしいだろ」
雄斗以外の者がやればただの色気ないそんな行動も2人には雄斗の行動はすべて色っぽい話に置き換えられて 逆にそそられるということで....。
「...つまり、残念ながら子猫ちゃんはもう、あっちの経験済みってわけね?」
「そう、それも可哀想にトラウマになるほど酷いショックを受けてるね。 まだ、僕は何もしてないのに、警戒されちゃってすごくいけないことでもしてる気分。全くどうしたもんかな。こんな状態で無理にやっちゃうのは僕の趣味じゃ無いしこれ以上嫌われるのは嫌だよ」
まぁ、海野は無理にやらなくてもいつも相手に不足していたことはない。 だから本当に今回は手を焼いてるのが久住にはよくわかった。
「まあ、方法がないわけでもない。ちょっと非道だけど」
そういって久住は海野の耳に何かを囁いた。
「うん、試してみる価値あり?」
2人は意味ありげに微笑みあった。


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