雄斗は学校から寮に戻って驚いた。自分の部屋が変わっていたからだ。
「どうして....」 寮長は事務的に鍵を渡しながら事も無げに答える
「新しく入寮してくる子が増えたので、変わってもらった」
それにしてもなぜ、自分なんだろう。 雄斗は不機嫌さを隠す事ができない。
当然と言えば当然である。殆どの1年生は1年生同志で部屋を使っているのに、
なぜか、雄斗だけが2年生といっしょなのだ。
納得出来ないという顔をしていたのだろう。
「君は外部生だね?よくあるんだよ。こういうことは。でも、君はラッキーだ。
君の入る部屋は上級生用にできたシャワールームも完備された新館だから」
しぶしぶ、少ない私物を持って指定された部屋の鍵を受け取る。
何か嫌な予感がした。そして残念ながらそういう予感に限って良く当るのだ。
指定された部屋のドアは半開きになっていた。ルームメイトが在室なのだろうが
ドアくらい閉めておけと雄斗は不機嫌な気持ちになる。
しかし、気を取り直して冷静に考えるとセンパイとやらが在室ということだ。
最初から悪印象を持たれるというのもまずい。
雄斗は部屋に勢いよく入ると同時に叫んだ。
「今度、同室になりました羽生雄斗です。K市の南中からきました。
よろしくお願いします。」 そう言ってさっと頭を上げて先輩の顔を盗み見た。
そこには優し気に微笑んでいるものの、一癖もニ癖もある剣呑な色の瞳を雄斗は見抜く。
『こいつは警戒警報レベル5だな』雄斗は経験上そう思った。
その茶髪の目鼻立ちのはっきりした男は雄斗を値踏みするようにじろじろと不躾に見つめながら
雄斗のものであろうはずのベットにその長い足を組んで座っていた。
「あの、そこは....」
雄斗の口調は怒りの含んだムッとしたものであったに違い無い。
彼は立ち上がりながら、さっと右手を出すと、雄斗の右手を掴んで無理矢理に握手してくる。
雄斗はびくっとしてその手を振払うように引っ込めた。
こういう強引な事をされるとケンとの事を思いだして身構えてしまうのだ。
そんな雄斗の様子をその先輩はまるで子猫がネズミを捕まえていたぶるような残酷な笑みを浮かべてみせた。
「僕は海野笙(しょう)。結構、気が強いとこもなかなかそそるじゃないか。うぶなところも可愛いし」
海野はからかうように笑いながら腐った事をいう。
『自分が鈍感だったらどんなによかったのに』
自分の荷物を片づけながら、雄斗は震えが止まらなかった。
自分では武者震いだと思いたかったが、それは間違い無く、恐怖からの震えだった。
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