海への旅立ち5
後ろ方に何か冷たい感覚が走る。ケンが俺の中に何かぬりこめていた。
「うぅ...うぅぅ」 叫ぼうとしても口をケンの唇と舌で塞がれて声が出ない。
必死に抵抗するがケンと俺とでは大人と子供くらい
体格が違う。
そうしている間に指が入ってきた。自分でだって殆ど触った事の無い場所だ。
熱が出たって座薬だって痛がって入れさせなかったのに。
「痛い、痛い、絶対入らない...よせってば。」
なんとか口を離し俺は必死にケンに哀願する。
だけど、嫌ならやらないと言っていたケンはもう何も聞こえていない
ただの雄だった。
「ケン....助けて....」
いつも俺が危ない時は助けてくれたケンが今、俺を襲っているのに
それでも俺はケンしか頼るものがなかった。
「ケン!!!」
絶叫している俺の身体にアイツの雄が突き進んできた。
裂けるようなものすごい激痛、そしてケンの獣のような眼と喘ぎ。
俺は血の匂いを感じながら意識を飛ばしていた。
どのくらいの時間がたったのだろう。多分、そんなに経っていないのだ。
部屋に血の匂いが充満している。
俺はのろのろと立ち上がってなんとか服をきた。
ケンの姿が見えなかったが俺にとっては好都合だ。
急いで部屋から出ようと歩き出したが腰から下に力が入らない。
それでもなんとかゆっくり歩いて、家を出るとタクシーで自宅まで辿り着いた。
急いでトイレに入ると家族に知れないように自分でなんとか傷の処理をする。
絶望感は俺を自分でも驚く程冷静で素早い行動力に突き進めた。
最初にサッカー部の部長に退部を電話で伝えてから、
退部届けを部長あてに郵送した
そして市内でも有名な空手道場に電話をして見学する日を決め、
有名塾の特進コースを申し込んだ。勿論進路先を変更するためだ。
有名私立を受けたいという俺に両親は驚きはしたが反対はしなかった。
勿論、おれの今の学力では、無理なのは俺が一番よく知っていた。
たとえ、公立の定期試験に満点とっても有名私立に合格できる保証はない。
問題そのものが全く違うからだ。
予想どうり、俺が入った塾で俺は300点満点で238点しかとれなかった。
「今まで家庭教師も塾の夏期講習も受けてないんだろう?大丈夫、
勉強のコツを掴めば今からだって、充分受かる可能性がある」
塾の先生が上機嫌で頭を撫でる。
俺は身体に触れられた事であとずさりした。
身体は誰かに触れられる事を極度に恐れていた。
俺はどちらかというと勉強より空手を熱心にやりはじめた。
朝起きると柔軟と組み手の練習をし、道場から帰ってもからも
天井から吊るした五円玉を飛び膝蹴りではね飛ばす練習をし、
寝る直前に腹筋を50回以上する毎日。
頼れるのは自分だけ、そんな意識が俺を強くしていた。
ケンはあの後必死にあやまってきた。
だが俺はなるべく彼を刺激しないように表面上は普通に付き合い、
でも、2度と2人でいる機会は避けた。
無論、2度とやつの家には行かなかったし、俺の家に入る事も拒否した。
「ユウ、もう、許してくれないんだな」
ケンは絶望を浮かべた瞳で本当にかなしそうな眼で俺を見る。
「友達だと思っていたんだ。」
そういうと俺は急いで家のドアを占めた。
俺だって胸が潰されそうに痛かった。信頼していたからこそ、あの時の恐怖と絶望感
を忘れる事はできるわけがなかった。
そう、俺は心地よい母なる川から深い海へと旅立っていったのだ。

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