海への旅立ち3


サッカー部に入った俺達は毎日充実した日を過ごしていた。
成績もそんなにひどくなかったし。俺は地元に進学を希望していたから 特別勉強しなくても希望校にはいれるという気持ちがあった。
3年になってチビの俺にもレギュラーがまわってきた。 1年からレギュラーだったケンにはかなわなかったが 地元の大会でも準優勝し、俺としては満足だった。
相変わらず、ケンと一緒の毎日だったから、女の子のアプローチはあっても 彼女もお互いに作らずにいる。
多分、俺は幼かったのだ。それを不自然とも思わずにいた。
俺は女の子の気をひくよりケンと一緒にサッカーやゲームをした方が楽しかったから。

中3の1学期の期末テストが終わり、俺はいつものようにケンに話し掛けた。
「土曜日お前の家いっていい?」
「....多分、だめ。」
「どうしてさ」
ケンが俺の誘いを断る事はめったになかった。
「じゃあ、おれの家に来いよ」
「いい.....」
ケンの歯切れが悪くて俺をイライラさせた。
「いいってなんだよ」
「だって、今回俺悪かったんだ、テスト。塾にいけって母さんが.....」
そんなに悪かったのか。 「何点?」
おれは今までめったに点数なんて聞かなかった。 成績の話なんてしらけると思っていたからだ。
「382点....」
400点いかなかったのか。400点に達してないと俺達の希望する北高校を 受けさせてすらもらえないだろう。
「ケンって前は420点から落ちた事なかったのにな」
「どうも英語がいけてないんだ。今回58だった。」
「まじ〜〜?」
「まじ....」
声が落ち込んでいくのがわかる。
「俺でよかったら教えるよ。今回96点だったし、スペルミスで」
ケンの眼がすがるように俺をみた。
「いいの?」
「一緒にやろうぜ。一応、俺達受験生だしぃ〜」
俺はおどけたようにいって思いきりケンの肩をたたいた。
ケンの家は一軒家で部屋は少し変わった造りになっている。
1階に2部屋子供へやと玄関、風呂があり、2階が居間と夫婦の寝室。
ケンの部屋は玄関のすぐ横にあり、俺は2階に向かって声をかけるだけで 部屋でゆっくりすることができた。
ケンのお母さんは夕方から近くのコンビニで8時頃までパートをしていた。 今まではケンが部活で遅くなるのでちょうどよかったらしい。 サッカー部も殆ど2年生に主導権を譲ってから、俺達は受験勉強と称して 部活をさぼる事も多かった。
そしてこっそりケンの部屋で煙草をすったりイ・ケ・ナ・イ、ビデオなんかも みたりしたものだった。
その日もケンのお母さんに「おじゃまします」と声をかけ、ケンの部屋でくつろいでいた。 すると珍しくおばさんが入ってきて
「ユウちゃん、ケンの英語をみてくれるんだって?ありがとうね〜。 これ食べて。」
といってケーキと紅茶を持ってきた。
「あ..ども」
一応お礼をいってペコリと頭を下げると感心したようにいう。
「ユウちゃんは、顔も可愛いし、勉強もできるし、礼儀正しいし、本当に 家のケンに勿体無いようなお友だちよね。これからも仲良くしてね」
ケンのお母さんは俺がどんなに可愛げの無い奴なのか知らないらしい。 全く大人って言うのは表面だけに騙されやがって。
「恥ずかしいから早く行けよ」
ケンが押し出すようにしてケンのお母さんをドアの向こうにやった。 それから、少ししてケンのお母さんがコンビニに行く気配がして俺達は顔を見合わせて笑う。 その後、俺達は珍しく真面目に勉強することにした。 だって俺はケンと高校も絶対一緒に行きたかったから。
ふと気が付くと順調に問題もすすんだと思っていたケンの手が止まっている。
「どうした?そこ、解らないか?」
俺がケンの手許を覗き込むとケンは今まで見た事もない真剣な表情で 俺を見つめている。
「ケン....?」
俺がそういったのと、ケンが俺をベットに押し倒したのはほぼ、同時だった。


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