絶望が朦朧とした雄斗の頭を支配する。
結局海野は雄斗自身の価値など何も認めてないのだ。
彼にあるのは、自分の気持ちだけ。そこに雄斗の気持ちなどどこにもなかった。
自分では認めたくなかったけれど、雄斗は海野に惹かれかけていた。
海野の熱い視線を自分を想う為のものだと信じたかった。
間違いなく、海野もそうだと主張するだろう。
しかしながら、それは海野が一番大切だと思っているのは海野自身の気持ちだった。
それに気がついた今は、淡く芽生えた恋心もどこか、彼方に霧散してしまった。
どこか、脱力してしまった雄斗は、そのまま手足を投げ出した。
そこへ控えめなノックの音がする。
また海野かと思い雄斗は無視を決め込んだが入ってきたのは3年の森川卓巳だった。
「ね、海野はいないんだろ?今晩ここに泊めてくれない?」
なぜ、この男はこういう事に詳しいんだろう。
「海野さんに聞いてください。僕のベットじゃないし」
「部屋に入れてくれるだけでいいんだ。ユウさえよければ同じベットでも僕は構わないけど」
「お断り。それより、有賀さんと喧嘩ですか?」
「寮を出るっていったら、今すぐ出てけって言われちゃってさ」
その夜、雄斗と森川の部屋には海野も有賀も来なかった。
雄斗がなにげに森川に顔を向けると天井を見つめてなにか思いつめてるようだった。
そのまま、背を向けると
「ユウは海野を嫌いじゃないんだろう?」
森川から声がかかった。
「まぁね。嫌いじゃないけど、好きかと言われたら違う気がする。
森川先輩はどうなんですか?有賀さんと。」
「好きかと言われたら違う気がする」
「なんだよ」雄斗はちゃかされたと思って口を尖らせた。
「出合いが悪すぎた。それに僕ってネコっていうよりタチかもしれない」
「ネコとかタチってなんですか?」
「受け身がネコ、攻めるのがタチ」
「たしかに俺もそうかも、受け身に快感がある事は否定しないけどさ。
心の底から楽しめないっていうか....」
「正直だな、ユウ。君のそういうところが気に入ってるんだ」
「ちぇっ本当に気に入ってるのかな?からかわれてる気がするけど」
「ユウも寮を出ないか?」
「いや、やめておく。無体なことさえされなきゃ、まぁいいんだ」
「やっぱり海野が好きなんだな」
「でも、もう海野さんは戻って来ないよ。久住さんと海野さんの方がうまくいく
気がするんだ」
二人はそこで顔を見合わせた。
「ユウ、大人になったな。修学旅行で仲良くする話し覚えてる?」
「う...ん」
「僕は有賀とうまくいかないから、雄斗に恋しかけていた気がした。身体の相性もよさそうだったし。
でも、もういいや」
「ちょっと残念、先輩のテク戴こうと思っていたのに」
二人はそこでクスクスと笑った。
夜がしらじらと明けはじめていた。
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