「何をいってやがる。卓巳は....。こいつはただの淫売だ。俺が好きな時に好きなようにして....」
しかし、それ以上有賀は言おうとして久住の瞳がしだいに凍っていくのをみて何も続けられなくなる。
「そうか、そこまでいうなら、俺にも楽しませてもらおうじゃないか」
久住は感情の出ない冷酷な顔のまま、森川のベットに音もなく近付いた。
静かに吐息をたてている森川の唇をその形になぞっていく。
「有賀、『卓巳を愛してるからやめてくれ』って言えるチャンスは今だけだ。俺はどんなに卓巳ちゃんが泣叫んでも、途中でやめられないぜ」
森川を撫でる久住の口元にはうっすらと微少が浮かんでいる。
有賀は自分の力に自信があるのか、その挑発にのってしまった。
外見のガタイだけなら殆ど違わない二人だった。
ただ、久住が暴力を振るった話は聞いた事がない。
有賀はなるべく早く久住を出ていかせようとしか考えていなかった。
「くだらねぇ。これは俺のだ。やるなら力ずくでやってみろ」
そう、いうが早いか有賀はその太い拳を久住の鳩尾めがけてつきあげた。
久住はそれを予想していたように、軽くかわしながら、長い足で有賀の顳かみをめがけて
回し蹴りを炸裂させた。
有賀は脳しんとうを起こしたらしく、あっけなくその場に倒れて気を失っている。
「筋肉バカが....。喧嘩の場数が違うんだよ」
久住はそういいながら、ゆっくりと有賀のネクタイで手首を縛り上げた。
「俺の機嫌が最悪な時に最悪な事を仕掛けやがって、お前も運がわるいぜ」
その時、有賀の倒れた物音で意識を戻したのか、森川が肩ひじだけで起き上がる。
ゆっくりと廻りを見回し部屋の様子でなんとなく経緯を察したらしい。
「優しくしてくれよ。」
森川は久住を誘うように笑っている。
「もう、腰は使いたくないな。口で勘弁してくれない?」
久住はそれには何も答えず無言で森川のシーツを剥がすと森川の腰を高く上げてボクサーパンツを一気に下まで引きずり降ろした。
しかし露になった森川の傷口を見て半分顔を背けながら呟く。
「酷いな.....なんだこれは。手当てくらいしておけ。」
「有賀の奴、手加減はなしだし、やる気になったら即やるから、潤滑油だって使う余裕もないんだ。」
森川はあっけらかんと言い放った。
久住が思わずため息をつく。
「一度同じ目に合わせてやりたいな。どう思う?久住」
「やりたかったら、お前が自分で掘ってやれ。俺はこいつ相手に勃ちゃしないよ」
すっかりやる気をそがれた久住は近くにあった薬を森川の後ろにそっと塗り込めた。
「純情だな、久住。お前のモノは海野専用かい?」
久住の顔色が変わる。
「雄斗の中は凄くよかったよ。一度味わうと病付きさ。」
久住が森川の腰を持っていた手を乱暴に離した。
「なんで、久住が雄斗と海野をくっつけたのか、僕には解らないな。海野は雄斗に夢中だろう?
僕だってもう一度機会があればお願いしたいね」
久住の顔がかすかに歪んだ。
「家康の心境さ。鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギスさ。最後に天下をとるのは
家康だからな。」
森川も何か考えているように窓の外を見遣ってから、呟いた。
「僕も寮を暫く出ようと思う。僕の方からこんな不毛な関係を精算したいからね」
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