もしかしたら昨日、こんな目にあう前にある程度抵抗すればこれほど痛めつけられる事もなかったかもしれない。
でも、蛇に睨まれた蛙のように、雄斗は恐怖に戦慄き何も出来なかった自分が悔しかった。
そしてそんな自分の怯える様子がさらに海野の欲望を煽ることになっているのだろうと予想はつく。
このままでは海野のいいようにされてしまう。それだけは避けねばならない。
雄斗は親しい友人もいないので良くは知らないが、近隣の高校にもファンクラブがあるくらい
海野は女の子にも人気があるらしい事は小耳に挟んだ。
全く、金は有り余っていて、多くの生徒を憧れさせるような精悍で綺麗な顔をして、その上、学園内に後ろ楯になっている人物もいるらしいのに、何が不足でこんな事をするのか。
いくら考えても解らない。俺だって同意でするセックスは抵抗しないのに。
しんと静まり返った寮の部屋で考えていた雄斗はふと思い立つ。
嫌がるやつに無理矢理やった方が興奮する質なのか?
「変態野郎め」
自分がそれとなく誘っていた時は無視していたくせにと雄斗は腹が立って仕方ない。
雄斗はセックスがいやなのではないのだ。女扱いされるのが嫌なのだ。
それだけはどうしても譲れない雄斗の砦だった。
それなのに.....。どうしてくれよう.......。
「あいつの変態セックスに付き合ってられるか。」
そういいつつ、ふと 目に付いたゴミ箱の中のケンの手紙が目に止まった。
拾い上げて読むと もし、僕の事を許してくれなくても夏休みに会えないかというような内容だった。
いま、嫉妬というより独占欲に狂ってる海野を刺激するのは得策ではなかったが、
ケンの手紙を読むうちに懐かしさで胸がいっぱいになり2人で過ごした中学時代が
フラッシュバックする。
海野が帰ってくる前に急いでケンの住所をメモするともとのゴミ箱に戻す。
今夜も昨日のような事をされたらマジに病院のお世話にならなければならない。
なるべく、海野を刺激せず、暫くゆっくりしたい....雄斗はそっと瞳を閉じた。
教室で激しい怒りと自己嫌悪の混じった複雑なオーラを海野は纏っていて誰一人声をかけられないでいた。
久住ですら、喧嘩がもとでここ数日声をかけていなかったので、遠巻きにしていたが
さすがに気になるのか、海野の前の席に後ろ向きに腰掛けると黙ってティッシュを海野に差し出した。
久住は海野が睨みつける瞳にも負けずにもう一度差し出した。
「出てるぜ、涎」
海野は慌てて口を拭くがもとより涎が出ている訳もない。
完全にひっかけられたのである。
「うぜ〜んだよ」
「らしくないぜ。絶交中だがお前のそんな顔は放っておけない」
「黙れ」
「全く....らしくない。もう、アイツの事はかまうな」
「でも.....部屋はもう変更がきかないんだ」
「俺がかわってやろうか?」
久住が意地悪く囁いた。
「もし部屋を変わってお前とアイツが何かあったら、お前を殺すかもしれない」
海野の顔は真っ青だった。
「しばらく俺の部屋にいろよ。アイツはひとりにしておけ。
俺が浮気しないように時々注意してやるぜ」
久住の声は優しかった。
海野は少しだけほっとして縋るように久住を見つめる。
久住は片頬だけ引き上げると小さく何度も頷いてみせた。
「まったく、お前は手がかかる。だけど放っておけないんだな」
そう言う久住は少しだけ淋しそうだった。
|