雄斗の鳩尾に強い衝撃が走った。
海野に拳で思いっきり殴られたらしい。
雄斗は意識が遠のくのを感じながら
また、海野に蹂躙されるのだろうと覚悟した。
海野は雄斗が脱力すると
乱暴に腕を握っていた海野の手からも力が抜けていく。
手のひらでそっと壊れ物でも扱うようにおずおずと頬を撫でる感覚が覚束ないながらも雄斗の意識をまた覚醒させていく。
まだ意識を失っていると誤解しているのであろう海野は雄斗を抱きあげると自分のベットに運び上げた。
しかし、雄斗は抵抗する気はなかった。
このまま海野が何をするのか確認してやろうというという気持ちもあった。
海野の愛撫がどんどん進んでいくと、雄斗はその気になってくる淫らな己の身体に狼狽える。
「気持ちいい?」
海野がささやく。
「うん、すごく」
その返事に海野は飛び上がった。
「お前気がついたのか」
雄斗は海野の首に自分の腕を巻き付けて囁き返す。
「ねぇ、もっと、気持ちよくしてくれるんだろう?」
「ケンっていうやつはいいのか?」
「先輩に関係ないだろう。お互い気持ちよくなればそれでいいじゃないか、
先輩がいままで、色んなやつにしてきたことと同じだろう?」
たしかに海野は自分に興味を持ってきた者達に自分の欲望をぶつけるだけ
ぶつけて興味が失せるとなんの躊躇もなく捨て去ってきた。
なぜ、雄斗がそれを知っているのか?
雄斗はそれを知ってそれで良いとでも言いた気だ。
愛撫を続けながら、海野は考え続ける。 『それでいいではないか?
何を不安に思っているのだ。何を恐れているのか?自分達に欲望処理以外の何があるのだ』
雄斗の瞳は欲望ですでに潤んでいた。もう引き返す事はお互いに不可能だった。
お互いに狂った獣のように激しく求めあう。
一度雄斗の中で果てた後でも雄斗は海野を離そうとはしなかった。
雄斗は海野の腰に巻き付けた両足をさらに力を込めて引き寄せた。
「先輩のテクニックを全部俺に教えてくれよ」
淫らな雄斗の要求にこたえながら海野は有賀の言葉を思いだした。
それは、あの浴室での出来事があった数日後、有賀の要求を聞いて森川と有賀を同室にすることに伯父をやっと説得する事に成功した夜だった。
有賀に新しい部屋の鍵を渡しながらささやいた。
「お前もとんでもない男だよな。森川先輩を独り占めするために
そうやって拘束でもなんでもするんだろう」
「俺が卓巳を拘束してるだって?とんでもないね。俺はあいつに取込まれているんだ。
俺なんか、まるで蜘蛛の巣にかかった哀れな虫さ」
有賀はいまいましそうに呟いた。 海野は2人の間にある秘密を知っていた。有賀が他の2人と一緒に森川を強姦してからそれをネタにいつまでも森川に纏わリついていると言う事。
そのくせこんな戯言で自分を正当化しようとしてるのだろう。
海野は自分を棚にあげてそんな有賀を軽蔑したように睨み付けた。
しかし、その日の有賀はいつもの自信に満ちた高慢な顔ではなく、
本当に何かに取付かれたような憔悴しきった表情をしていた。
その時は、何か心にチクリと蟠りの様なものが海野の胸の中にうまれただけだったが、こういうことだったかと
海野が実体験で己が思い知ることになるとは思いもしなかった。
森川と雄斗はどこか似ている。
男を狂わせる何かがあるのだ。
いままで雄斗はそれを自覚していなかったが森川と出会って肌をあわせたことで
自分が何者かに目覚めてしまったのだろう。
有賀のようになる前に自分は雄斗を諦めた方がいいのかもしれない。
伯父に自分の我が儘で部屋を移動するのはいい加減にしろと釘はさされ
雄斗との同室を変更することはできなかった。
雄斗と一緒にいるかぎり、雄斗の誘惑を断ち切る事はできない。それどころか
雄斗が嫌がっても強姦してでも犯ってしまうだろう。
そしてもっと恐ろしい事に自分は雄斗の人間関係すべてに嫉妬してしまうのだ。
こんな気持ちになった事は一度だってなかった。
海野は食欲が無くなり、何かを思い悩むように無口になっていった。
それに比べて雄斗は開き直った分、強かった。
海野からすべてのテクニックを盗んだ後は、森川相手にもう一度リベンジしてやろう
などと不敵な事を考えていたのだった。
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