海原

cradle of the deep 5



『なぜこんなことに?』

後でいくら考えてもその時の自分の状態を説明する事が出来ない。
雄斗は自分が危険な状態だと解っていたが、森川には普通の男性には感じない何かがあった。 そしてそれ以上に森川には雄斗のような普通の男達なら感じてしまう情慾というか潜在意識の何かを刺激される危険な香りがある。 危うげに潤んだ森川の瞳が雄斗の欲情を誘う。
そう、そしてその時すでに雄斗は魔物のような森川の怪し気で壮絶な色気に取り込まれていた。 森川の左腕は雄斗を抱き寄せ、冷たい物で湿らせた森川の右手の中指は雄斗の後穴を弄って陰微な音を立てている。 そして森川の欲熱を孕んだ唇が雄斗の白い首筋から細い肩口に落ちていき、そして小粒な桃色の豆を摘んで 軽く噛んだ。
「いやだ、離せ....」
粟立つ肌に森川は乳首を口に含んだまま囁いた。
「大丈夫だ....もう、いい感じになってる...ね...」
森川はそういうと何か冷たい物を付け直しながら入れる指を増やした。雄斗が白い身体を仰け反らせて絶頂をやり過ごしていると その指が抜き出され、代わりに固く熱いモノがあてがわれた。
そしてそれがぐっと入ってくる感じに思わず喉を鳴らす。
「あぁぁぁ....」
「あぁ、熱いよ......」
森川が気持ちよさげにつぶやく。
「う....っ」
雄斗がまた思わずうめくと、すぐにそれを引き出される感覚があり、信じられない事に それを追うように雄斗の腰の方ががうごめいた。
「先輩.....」
森川の両腕が雄斗の身体を抱き寄せて二人は恋人達のように深い口づけを交わす。
森川の舌の動きに雄斗も翻弄されて今の自分の状態を把握できなくなっていた。
なぜ、森川がそんな事をするのか?なぜ、自分がただそれを抵抗なく受け入れる事ができるのか? そういう冷静な判断が一切出来ない状態で自分の欲望に流されていく。 まさに夢心地でまるで宙に浮かんでいるような不思議な始めて体験する感覚だった。
しかしその時同時に雄斗は始めて何者かが浴室内にいる事に気がついた。
そこからはまるでスローモーションの映画を観ているような気分だった。 誰か他の何者かの腕が雄斗の腰を掴む。森川に慣らされたとはいえ、森川とは比べ物にならない程乱暴に 尻肉を掴むと左右に開こうとする。そしてその柔らかく熱くなった窄まりに先程の 森川の遠慮がちなモノよりもっと凶暴なモノが雄斗の窄みを捕らえていきなり挿入してきた。
「ぅっっっ〜〜〜〜〜っ」
叫ぼうとするが唇は森川の口で塞がれ暴れようにも腰と身体を押さえ込まれて 動く事すらできない。
やっと薄目を開けて窺い見ると森川の真っ白な肩ごしに浅黒い筋肉質な男の腕が見えた。 森川の背後にも何者かがいて森川を犯しているのだろう。
「あぁ...」
森川の唇が離れると同時に陰微な森川のため息が浴室内にこだました。
「あっ....あっ...あっ...あっ....」
森川の双丘からぱんぱんという腰を怒濤のように打ち付ける音と森川の喘ぎ声が響いている。 雄斗の後ろの何者かは、まるで味わうようにゆっくりと腰を使ってきた。
悔しくない
こんな事はなんでもないんだ。
俺はこんな事で傷付くものか
こんなこと とっくの間に経験済みだし、俺は女じゃないんだからこんな事たいした事なんかじゃないんだ。
雄斗はそう思おうとしたが胸の奥底から沸き上がってくる重苦しいものが 雄斗の目頭を熱くさせていた。
「うっ、うっ、うぅっ、うっ、うっ」
嗚咽を上げながら、雄斗は心の奥底でバランスをとって必死に冷静になろうとしていた。
「あ....ぁ....あぁ......」
そう、自分の後ろで微かに喘いでいる男の声を雄斗は知っていた。 それは間違いなく、同室の海野笙(しょう)の聞き覚えのある声だった。


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