ものごころがついた時から俺は容姿について言われるのが一番嫌だった。
思い出してみると多分あれは、幼稚園の頃だろう。母親に言われて仕方なくスイミングのお迎えバスを初めて
一人で待っていた時だったと思う。
あの時はバスは永遠に来ないような気持ちになり本当に心細かったのでよく覚えている。
心細くて震えていると、多分同年代の子が同じバス停にやってきた。
どれほどほっとしただろう。俺はそのやんちゃそうな子と友達に成れたらいいなと思った。
しかしその子第一声がこれだ。
「お前、女?」
また、言われた。
でもいつもそういってくるおばちゃん達や、お姉ちゃん達にいわれるよりずっときつい一言。
「ううん、男だよ」
「ふ〜ん」
いかにもうさん臭いという目でみる。
子供時代は一緒に遊んだり話たりするのは同性の方がいいに決まっていた。
少なくても俺はそうだった。
この容姿のおかげでどれだけ損をしたか解らない。
幼稚園で楽しそうに男の子っぽい遊びをしてる時、遊んで欲しくてちかよっていくといつも言われる言葉
子供は残酷だ。
「女と遊べよ」「俺達男だけであそぶんだもんな」
普通の男の子が女の子となんか遊んだって面白いわけない。
遊んでもらえない、仲間に入れてもらえない俺は幼稚園でいつも必要以上に
乱暴で目立ちたがりで意地悪になっていった。
ある日通っているプール男子用更衣室で俺はあの日の同じバス停の子にまた会った。
「お前....ちんちんついてるのか?みせてみろ」
「いやだ」
俺は逃げようとしたがそのこの方が一瞬早くスイミングパンツをひっぱり覗き込む。
「やめろよ」
「あ、やっぱりついてるのか。お前男だったんだ」
なぜか、その男の子はほっとした顔でにやりと笑った。
やっと信用してもらったらしい。
お互いクスクス笑ってその時から俺達は友達になった。
幼稚園時代の友人は彼だけ。
でも、嬉しかった。その子の名前は佐野賢太、俺は羽生雄斗。
その日から俺達は『ケン』と『ユウ』と呼び合うようになっていた。
そういうわけで俺の小学校時代は苛めるか苛められるかだった。
こんな女の様な顔だちだったけど俺はとにかく性格がきついタイプだったから
苛められると容赦なく苛め返した。
そう、そして俺とケンはいつもつるんでいた。なんたってケンが口で負けそうになると
俺が加勢し、腕力で俺が危ない時はケンが加勢するといういいコンビだった。
そしていつの間にか俺はクラスのボス的な存在になっていた。
苛め慣れして悪知恵だけは良く働いたからだろう。
そんな俺達の隣のクラスに気に入らない奴がいた。
そいつの名前は羽鷲(うしゅう)竜斗。同じ羽と、斗の字を持つのに出席番号が妙に早いということさえも
なんか俺のカンにさわるのだった。
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