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だけど、まさかこんなオカマ相手にこの歳までずっとバリタチだった俺様が喘がされてるなんて、今まで俺が可愛がってきた子ネコ達には絶対知られたくない。
「こんなオヤジの…ケツに……突っ込ん…で……何がおもしろい…んだよ」
彼がさらに奥まで入り込んでくる。こうなったら俺も男の覚悟を決めて逆に彼の動きに
協力するように腰を浮かせた。後から考えたら顔から火が出そうだが。
「そんなことないよ。あなたは、若い子達の注目を一身に浴びていたじゃない。
まぁ、僕はあんなジャニ系よりあなたみたいな男っぽい男にそそられるんだけど」
「あ……っ…ちくしょ…早くいかせてくれ…よ」
「その前に名前を聞いてもいい?」
この状態でどうして『その前に…』なんだよ!まずいかせてくれよ。
「人の名前を聞く前にまず、自分で名乗ったらどうなんだ」
「そうだね。鈴……鈴って書いてレイって読むんだ」
「まさか…お前が、う、噂のた、立ち食いのレイ?だったりするのか?」
「あぁ〜あ。すっかり悪名が轟いちゃってるんだな」
そういいつつ満更でも無さそうなレイに俺ははじめて恐怖にも似た感情が沸き上がった。
「俺はイオリ……っていうんだ、いいだろ?もういかせろよ」
「うん、いいよ。ごめんね。慎重にやったつもりだけど、少々無理させたかな。もしかして僕の事、ちょっと怖かった?」
答えない俺に、彼は巧みに俺の前立腺を擦りあげるように刺激してくる。
「う……っ」
俺は我慢できずに、柔らかく擦り上げていた彼の掌に欲望をぶちまけた。
「はぁ……っ。ひくひくしてすごくいい。最高……」
俺の腹の中にじわっと暖かいものが拡がっていく。ちくしょ〜生だししやがったな。
とんでもない野郎だ。
「タチばかり…食ってるって本当だったのか?」
「まぁ、厳密にいえば全てじゃないけど、それは概ね間違ってはいないかな」
などといけしゃーしゃーと言いやがる。でも、どこか憎めない男だった。
「傷つけてはいないと思うけど、多少腫れてるかもね」
そういってもう行為は終わったはずなのに、敏感になっている部分に触れようとしてくる。
「お、おい!みるな、さ、触るんじゃねー!」
「終わった瞬間にそれはないでしょう?もう少し余韻を楽しむとかないの?」
「お前と余韻なんか楽しみたくねーよ」
「でもよかったでしょ?」
答えたくない……俺になんて返事をしろっていうんだ?
「今度近くに来たら、寄ってよ。カクテルの一杯くらいごちそうするから」
そういって彼が枕元に置いた名刺を見るとはなく、目の端に置きながら、彼が黙々と事後処理をするのを俺はただ、屈辱的な思いで耐えていた。
そんな出来事が俺にとって、まるでゆめだったのかと思われる頃、俺は日々、新しい懸案に追い回されていた。
提携を予定してる相手は、とんでもなく大手ではあったが、創業者が昨今亡くなり、彼とは血の繋がりのない
養子が会長になったことで、俺達にも多少のチャンスがまわってきたかに思えた。
ところが、担当の部長というのが、ヤケに若いのに頭がきれる男で、俺達はすっかり彼の気紛れにも似た言動に振り回されていた。
可能性が全くないのなら、いっそ諦めもつくのだが、そこそこ期待を持たせるような反応をしやがるから
タチが悪いのだ。
しかも、この担当部長、いったい何の因果か交渉相手に俺を指名してきやがった。
その企画部長恐神という男…は、たぶん、30代の中。東京大学の法学部を卒業しているらしい。若さと頭脳と押しの強さを兼ね備えた相当のやり手だ。
かくいう俺も40代で肩書きは部長代理。出世頭とは言えないが、それなりにうまく立ち回ってそこそこ取締連中の信頼を勝ち取ってきたはずだ。
それなのに、俺なら交渉しやすいと舐められたとしたならば、それこそ心外というものなのだが。
今日も10時に打ち合わせの予定だった。本来もう少し下の者にある程度の下調べをやらせるのが常なのだが、提携内容を機密事項にしたいという先方の意向も受け、結局俺が直接出向く事になった。
待ち合わせ場所に指定されたのは、一見民家にも見える表札もついていない高そうな料亭で
何度か、この手の料亭に足を運んだ事もある俺でさえ、多少気後れするような威圧感があった。
都心にこの竹林は必要無いだろうと突っ込みをいれつつ、中に入れば都会の喧噪が嘘のように落ち着いた佇まいで、まるで時間と空間をトリップしたような感覚に捕らわれる。邪魔にならない程度に微かに炊込められた香が仄かに薫ってきた。衝立られた屏風もその屏風押えも一目見て名の通った職人が造った凝ったものであり、僅かの隙も許さぬその佇まいが、逆にさらに俺を緊張へと追い込んでゆく。
こんな場所で怯んでたまるか! これは相手の心理作戦だ。 飲まれてはいけない。
日本人形のような美しい仲居に案内された部屋は木目が揃って磨き上げられた敷居さえ、威圧感があった。
「先日はどうも」
「こちらこそ、お待たせいたしまして」
相変わらず慇懃無礼な男だ。待たせてはいけないと10分も前に到着したのにもう、来てやがる。
「いえ、つい先ほど、他の案件が片付いたばかりでしてね。さすが片島商事さんは、時間にも正確でいらっしゃる。どうぞおかけください」
そういって何気ない様子で上座を勧められた。が、正直言って微妙な気持ちが強くなる。
なぜなら会社の規模でいったら間違いなく恐神の会社の方が大きい上、立場も上だ。しかもどちらかというと今回の提携はこちらがお願いする立場にあるからだ。
しかし、年令からいうと間違いなく自分の方が5つは上だろう。10近いかも知れない。
向うから申し出てくれたのだからと多少の迷いはあったが、結局、上座に座る事を俺は選んだ。
彼が何か含んだような笑みを浮かべていたのが気にはなったが、今さらだった。
事務的な話をつめるように俺が説明するのにこの男は聞いているのかいないのかよく解らないような
薄笑いを浮かべたままなのが妙に気になる。
「矢萩さん、お話はだいたい解りました。細かい詰めはまた、今後と言う事でどうです?一杯いかがですか?」
いきなりの話の展開に俺の頭はまだついていってなかった。それはほぼ承諾と言う事か?もうこれ以上聞く気はないというのかどちらかなのだろう。しかし全く彼の表情は変わっていない。気にいってもらえたのか?
それとももらえなかったのか? 彼のポーカーフェイスに俺は舌を巻いた。
手強い……予想以上だ。だけど諦めてたまるか。 こういう場合自分に都合のいい勘違いをして
最後まで押し切るという手もあるがこの男には通用するわけもないだろう。相手の出方をみながらなんとか自分に有利に持ち込まなければと俺は必死に頭をフル回転させていた。
「もちろん、恐神さんさえよろしければ、静かなショットバーにでも…それとも女性が多い方がよろしいでしょうか?」
普通の男なら綺麗な女性がサービスしてくれるところを有り難がったりするものだが、この男に限って言えば
はなはだ疑問だった。
金も地位もある若くていい男があえて提携先の部長代理相手に女にでれでれしているところなど見せる必要もないだろう。
「ここはお気に召しませんか?」
「は?」
「他に移動する事はない。このままここで飲みましょう」 「しかし……それではあまりに…」
しかし、ここは相手のテリトリーだ。いくらなんでもそれではあまりに相手に金銭的な負担をかけてしまう。
「いえ、御遠慮なさる事はありません。実は私は月の3分の1くらいはここを根城にしてますので、この離れは我が妙高寺家の貸し切りのようなものです」
またなにか嫌な笑みを恐神が浮かべた。背筋に嫌な汗が落ちる。
「この提携の話の細かい判断はすべて私に任されている。つまりあなたを交渉相手に選んだのはこういう意図があったからです」
一瞬の間を俺は見逃した。
しゅるっと抜かれたネクタイにあっという間に両手を拘束されていたのだ。
だってそうだろう、美人OLや若くて美青年ならいざしらず、俺のようなおやじとも言える年令の男に
そんな事ありえないと思ったからだ。
「別に勿体ぶるお年でもありますまい」
「だけど……」
「お互いに楽しもうと言っているのです」
嘘だ、嘘だウソだ〜〜〜?
なんでガタイもいいこんなオヤジのこの俺がこんな目に……これは新手の嫌がらせか?
絶対そうに決まっている。
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