出る杭は打たれる(18禁)





 左遷された訳でも転勤時期でもない。それなのに、北海道の地方都市に自ら転勤希望を出しておきながら、たった1年で戻ってきた俺は、同僚達の様々な憶測をよんでるらしい。何かと腫れ物に触るような態度で、みんなに接されているから、周囲の動向に関心のない俺でも否応なくそれを自覚する。
 実際、その憶測は当たらずも遠からずってやつだ。なぜなら俺ときたら、一世一代の恋に身を焦がし、 20年前に振られた恋人にずっと未練を残していたのだ。そんな彼が、はからずも伴侶を亡くしたと聞いて、今度こそ俺の出番と喜び勇んで故郷に戻ってみれば、すでにその恋人は、若いツバメに寝取られた後だった。
 振られた後ですら苦節20年。故郷に帰ると言う言い訳でずっと、彼の幸せだけを陰ながら願い、万が一チャンスがあったらその時こそと諦めきれずにいたのに、なんて間抜けな……そしてタイミングの悪い俺。
 俺は矢萩伊織、42才の独身だ。
 実は、俺は婚約者に死に別れたから、とても結婚する意欲なんかは湧かないと、この歳まで周囲にはそれで通してきた。だからずっと独身なんだと周囲のは納得させてきたものの、本当のところはその相手とは、婚約者ではなく実はただの恋人。
 しかも死に別れではなく、恋人が自分の結婚を機に恋人関係を解消してほしいと言われて別れた相手で。
 しかも振られたその場では、かっこつけてふたつ返事で「あぁ」といったくせに、20年も未練を残した挙げ句、さらに今回、2度目も同じ相手にきっぱりと振られるなんて思ってもみなかった忘れられない人。
 確かに20年前は白皙の美青年だった彼も今は、他の人間からみれば間違い無くただのおやじのはずなのだが。
 そう、今更だが、実は20年来の心の恋人だった人とは、大学の後輩だった男だ。
  つまり20年振りに見た彼……葛西駿一は今だに小柄で色白、普段はかっちりとオールバックに固めている髪も濡れると天然パーマになるのが、なんとも可愛いやつだ。
 華奢なくせに筋肉質…そんな昔の彼の痴態を思い出して、俺はあと10年は彼で抜けそうだと思ったくらいだった。
 とにかく、そんなこんなで、それほどまで想い続けた相手にまたもや失恋してしまった傷心で、ずたぼろの俺は自暴自棄になっていた。
 いつか俺の駿がもし離婚したら、こんどこそ離すまい……ただそれだけに20年も夢を繋いでいただけに、失恋したショックは、言葉なんかじゃ言い尽くせやしない。
 きっぱり振られた今でさえ、彼を思い出してあまりに身体が疼くから、せめて可愛い男の子でも物色しようと、今夜もジャニ系の若者が集まるパブのドアを開ける。
 自分で言うのもなんだが、俺は、休日は夏はプール、冬はアイスホッケーで鍛えているから、筋肉はそこそこついている。どちらかというと女受けする…イケメンと言われる事も多く、そこそこモテる。
 そんな俺が店に入ったとたん、店中の男達の視線が気持ちイイくらい俺に集中する。そして合格点を取れたらしい俺に、すぐにキラキラした瞳で少年達が、次々と自分からモーションをかけてくる。
 俺も、気分良くそれをからかいながら、彼等を軽くあしらっていると、ふと何か背中に強い視線を感じた。
 目立つ顔の美人……だが俺は女装野郎に興味はない。
  すっと目を離すと逆につかつかとこっちに やってくるではないか。気がつかない振りをしていた俺だったが。
 「こんばんは」
 「あぁ」
 「初めてお会いしますよね」
 「まぁな。ここには初めてくるから」
 興味のない男にはそっけない俺。それなのに。突然……
 「誘ってる?」
 「はぁ?なんで俺が?」
 「だってわざとらしく目をそらしたじゃない」
 なんとまあ、自分に都合のいい勘違いができる男なのか?
 だがその瞳は挑戦的だ。もしこれがわかってやってるとしたら、相当のタマだ。
 しかも多分20代前半の若さなのにこの自信はなんだろう。女装してるからといって、決してなよなよしてる訳じゃないらしい。
 目に力があってふてぶてしい感じが逆に俺の興味を引いた。
 「化粧を取ってから偉そうな事をいえよ」
 「僕の素顔に興味があるの?でもここじゃあね。個室にいく?」
 余裕のある笑みには淫蕩な薫りが漂っている。
 「あぁ」
 実際俺も少しだけ化粧を落とした顔に興味があった。あまり趣味じゃないけど、よくみるとガタイも悪くないし、俺もしばらく御無沙汰だったから、男でさえあれば勃たない事はないだろう。
 奥の個室に馴れた雰囲気でその女装野郎が向う。
 「あの?いいんですか?」
 背中から誰か切羽詰まった少年っぽい子の声が追ってくる。
 もしかして俺に向けられたものかもとも感じたが、知らない声だし第一今さらそんなウブでもない。 子供にはちょっと刺激が強いかもしれないが、生意気そうなこの若者を思いっきり泣かして征服してやれば、この落ち込んだ気持ちも多少は浮上するかもしれない。
 そんな残虐な気持ちが俺に芽生え始めていた。
 個室に入るとすぐにそいつは鍵をかけた。
 「シャワーはどうなさいます?よかったら一緒に?」
 「お前が、先に入れ」
 相手があの20年来の心の恋人葛西なら一緒に入るのも吝かじゃないが、何が悲しくって女装野郎と 狭いシャワーに入らなくちゃいけないのか。
 第一、俺は化粧の匂いが大嫌いなんだ。
 ところが、烏の行水のようにあっという間に化粧を落としてやってきたその男の顔を見て俺は唖然とした。
 なぜなら、その素顔はまさにすごく俺好みの顔なのだ。濡れた髪を後頭部で小さく纏めて縛り上げ頬に落ちる後毛は、まさに少年剣士とか若武者といった風情。
 最初の女っぽいオカマのイメージとのギャップに、俺は思わずごくりと咽を鳴らせた。
 しかもなんと、ガウンの下から見える太腿もかなりイイ感じに筋肉がついていやがる。少しだけ、はだけたガウンから見え隠れする胸筋と桜色の乳頭がちらちらと覗いていて、なんてセクシーなんだろう。これを意図してやっているとしたら凄いのだが。
 「そんなに見つめられたら照れるよ」
 声色はそのまま柔らかいが、なぜか先ほどまでのおねぇ言葉が消えていた。
 俺はますますドキドキする。すべてが初めての経験で俺の鼓動も少年のようにうるさいほどにゴングを鳴らし。
 自分が自分でなくなりそうだった。
 落ち着け…相手のペースに巻き込まれるなと理性は必死に 自分のあるべき姿に引き戻そうと試みるのに、ぶくぶくと欲望の泥濘に足をとられ身動きがとれない。
 「どうして後ずさりするの?僕が怖い?」
 「怖いわけあるか」
 「そう?じゃあ、こっちに来て…さぁ」
 彼の瞳にはもう、女性らしい柔かさは微塵も感じられず、獰猛な猛禽類の怪しい光を帯びている。
 いったいなんなんだ?この野郎は?
 オカマだったんじゃねーのかよ?
 「君が来ないなら僕から行くよ」
 すっと一瞬彼の唇が触れた指先が、妙に熱くて痺れるようだった。
 俺もこうなった以上、覚悟を決めていつものように、自分の体重をかけて彼をベッドに押し倒そうとした瞬間、足払いをされて、ベッドに転がったのは俺の方だった。
 「何をしやが…」
 最後まで言う前に彼の唇で自分の口が塞がれたのに気がついて、驚愕する。
 なぜ?
 どうして俺が押し倒されてるんだ?
 いったい、なんでこんなことに?
 とあたふたしてる間に彼は俺の服をあっという間に器用に脱がせているではないか。
 「ん、んん…」
 必死にもがくが、彼はどうも身体の構造に精通してるらしく、肩のある部分を軽く押してるだけなのに ちっとも身体が動かないではないか。
 気がつくと自分のシャツブラウスに拘束されて腕の自由が効かない状態だった。
 「あぅ…」
 いきなり男の大切な部分をパンツの上から押さえ込んできた。
 「ふふふ……感じてるんだ……感度がよさそう」
 嬉しそうにいう彼の言う通り快感に弱い、俺の下半身はこの新しい刺激に自分を主張し、涎まで垂らしていた。
 「よせ、よせ、よせったら」
 「気持ちいいんだね。このまま感じていて……」
 違う〜〜!
 感じたいんじゃなくて、俺がお前をこの俺のテクニックであんあん言わせてやりたいんだよ!
 俺の方が感じてどうする。
 「放せ、この腕のシャツをなんとかしろ!」
 「こんなことされるのって初めてなんだ?じゃあ、優しくしてあげないとね」
 ふふふと微笑む様が妙に余裕で憎らしい。
 「なんでお前に優しくされなくちゃいけないんだ」
 「……ふーん。みかけに寄らずMだったんだ?」
 何をいいやがる?ばかじゃねーのか?
 「んなわけねーだろうよ」
 なんだか、どんどんこいつのペースに嵌まっているような気がするのは俺だけか?
 「ゾクゾクするようなプリっとした胸筋だ…腹筋もすごく締まってるし……何かスポーツやってるでしょ?」
 妙な指使いで腹筋を撫でるから、背筋に何かがびびっと走ってくる。
 その微妙な感じが我慢できなくてつい、声を漏らした。
 「ホッケー…」
 答えながら息が上がってる俺が情けない。しかも答える必要なんかなかったな…。
 完全に息が上がりあたふたしてる俺の顎を掴んで両頬を押して口を押し開け再び 激しい勢いで俺の口の中でこいつの舌が暴れまわる。
 だめだ、力が出ない……
 その間も身体の敏感な部分を探し出して 俺を煽ってくる。
 ……あ、あぁ…いっちまう……勘弁してくれ……。
 その瞬間、彼の俺の肩を押さえていた腕の力が緩むが、俺はひくひくと迎え来る絶頂に 耐えていた。
 「まだ、ダメだよ……ちょっとだけ我慢して……」
 手際よく俺の片足を彼の肩に乗せると微妙な指が俺の象徴を通り越して 蟻の戸渡りを抜けとんでもない場所を刺激しだしたではないか。
 「ん、んん…んんんんん……」
 ちくしょ〜〜〜〜まさか、まさか…
 そのまさかだった。なにかひんやりとした液体状のモノを俺の信じられない場所に塗り込めている。  あっという間に指が入り込み、中をぐるぐると探るように弄っているではないか。
 うそだろ?おい!
 こんな事があっていいのかよ?
 指を抜くと身を捩る間もなく彼の怒張がきゅっと入り込んできた。
 いて〜〜〜!
 痛いなんてもんじゃねーぞ。
 「力を抜いて……」
 人が痛がってるのに耳許で甘く囁いてるんじゃねーよ。
 「てめーの方がそのとんでもないもの抜きやがれ!」
 「もう、ある程度入っちゃってるもん。後はあなたが痛い思いをするのを選ぶか それとも楽しむ事を選ぶかを決められるんだよ」
 ひで〜〜〜。
 どういう論理でそういう科白がでるかな?こいつ鬼か?暢気な口調でばかな事いってんじゃねーよと思うのに、彼が俺の痛みに耐えてる様子に彼も快感に耐えじっと息を整えながら 待ってくれている気配が伝わってくる。
 こいつ、見た目に反して場数を踏んだ、かなりのテクの持ち主とみた。
 俺も長い間、いろんなやつを抱いてきたが、一度だってこれほどまで丁寧に相手を扱った事があっただろうか。
 やってる行動はとんでもないが、声色が甘くて優しい指使いと妖しい雰囲気に飲み込まれてしまいそうだ。
 ゆるゆると俺の怒張を優しく宥める彼の指先が、再び俺を痛みから体験した事がないほどの深い快楽の波へと引き戻す。
 少しだけ息を吐くと再び彼がより深く入り込んできた。痛みに再び全身に緊張が走る。
 「協力してくれないの?」
 俺の息子を優しく宥めながら、性感帯を極めようとする指に翻弄され経験した事のない快感に頭の中は真っ白だ。
 「こっちの筋肉もなかなかのものだね。ぴくぴくしてるのに凄くいい感じで締め付けてくる……」
 彼も満足そうな顔をしながら、じっくりと腰をグラインドし、俺の繋がってる場所にある快感スポットを捜すように慎重に抜き差しを繰り返した。
 ちくしょ〜気持ち良過ぎてわけわかんねーぞ?どうなってるんだ?この声が自分の喘ぎ声だなんて 思いたくないが、多分そうなんだろう……もう、どうにでもなれだ。
 
 つづく

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