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つみれさまへ(三題話) |
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いくら俺が呑気と言っても高2になったからそろそろ真剣に進路を考えなければならない。 まぁ、もし入れるものならば美大に行きたいなっと思っている。 俺が人並みにできるのはデッサンくらいだから。 自慢じゃないけどデッサンだけは一日3時間は欠かした事がないんだ。 誰にも言ってないけど藤田嗣治を見習っていつも俺のポケットには小さなメモ帳とペンが入ってる。 いつでもどこでもポケットの中でさえデッサンができるようにね。 だってほんと俺のとりえはこれしかないんだもの。 実は、美大にいくには親元を離れなくてはいけない。 その上、沢田の進学する予定の大学とはかなり離れている。だからもしかしたら俺もついに一人暮らしができるかもしれない……実は最近そんな事で俺達はちょっとばかりギクシャクしていた。 だって沢田の奴ときたら俺の美大の近くに一緒にマンションを借りて一緒に住もうというのだ。 だけどこれからもサッカーを続けていく沢田にあまり負担をかけたくなくって、せめて中間地点に借りようと言ったら、かるく却下された。 これだって俺にとってはかなりの譲歩だ。 本当は一人暮らしがしたいのにさ。 沢田は勘違いしてみただけど俺はな、女じゃねーんだ。 タメだしあんまり沢田に負担かけたくない。 ってか対等とは言わねーけど、せめて 男の最後のプライドとして庇護される立場になんかなりたくない。 これって高校生の男として普通の感覚じゃないだろうか? 「危ない」 沢田は一言で済ます。 「俺は女じゃねーんだぞ」 「女の方がもっと警戒してる。お前は無防備だから危ないんだ」ふんと鼻で笑いやがった。 ふんってね、俺は男なんだよ?分かってる?沢田くん! そりゃカツアゲとかは警戒するけど、男がみんな沢田みたいに俺に欲情するわけねーだろうが? ばっかじゃねーの?なにが無防備だ。 お前だけだよ危ないの! 無視無視!まともにつきあってられねーよ。 こいつときたら俺の親より過保護なんだからさ。 俺は女でも幼稚園児でもねーんだよ。 ばかにすんなっての。 そんなこんなで数日口をきかないでいたら、沢田からも無視されるようになった。 けっ!大人気ないやつ。 実は最近、郊外のモールに新しい画材やさんと妖しげな輸入雑貨の店がオープンしたっていうから 急に見に行きたくなった。 だけど喧嘩してるし沢田は誘わないでおく。誘えばきっと沢田は来るだろう。部活をさぼってでもくる。 でもそれが嫌なんだ。こうやって互いに無理すると俺達きっと続かない。そっちの方が俺にとってはずっと怖かった。 それにおかあさんにも負担かけたくなくて、放課後あまり利用した事のない電車に部活をサボって乗り込んだ。 車両の中程に乗り込むとまわりは同じ高校生とはいえ見た事のない制服ばかりで、だれか他の友達を誘えばよかったかなとちょっぴり後悔した時だった。 ん?あれ?なんか俺の背後で微妙な動きがある。 やっぱり……間違いない。……ケツを撫で回されてる。 だけど満員電車で振り返ってみても後ろはどうみても高校生の男の子ばかりだ。 気のせいだよな?でも俺の制服はたしかに詰め襟じゃないが女の制服にも見えないと思うぞ? 俺は鞄でバカな勘違い野郎と俺のケツをかけて攻防を繰り返す。 声を出した方がいいかなとも思ったが、女に間違えられて痴漢される情けない男とまわりに思われるのが嫌で、無言で 押し合っていた。 ところがそんな俺の予想に反してそいつのごつい指が俺の前に回るといきなりつかみやがったのだ。 何を掴んだって? そうナニだよ!ナニ!信じられねー!!! ってことはこいつ俺が男だって知ってて痴漢を働いてるのか? ひえ〜〜嘘だろ?こんなマンガみたいな話があっていいのか? 「やめっ」 俺は必死にもがいてなんとかドアの近くに向う。 まだ降りる駅じゃなかったが、そんなこたぁもうこの非常時にどうでもよかった。 ドアが開いたとたん、俺は勢いよく走り出した。 じょーだんじゃねーぞ! この世の中には可愛い女の子が溢れてるのに何が悲しくって健康男子のこの俺が男に痴漢されなきゃなんねーんだよ! 恥ずかしいのと、悔しいのと、びっくりしたのと、そして怖かったのと……もう俺はぐちゃぐちゃで俺は走りながら泣いていた。 情けねーな俺! でも、怖かった。本当に気持ち悪かった。 同じような事を毎日沢田にされてるのに吐き気が止まらなかった。 俺は震える指で携帯の短縮を押す。 それなのになかなか出やがらない。 「沢田……ちくしょー……肝心な時に……」 あたりを見回すともう、駅もはずれの出口だ。誰か追ってくる気配がないのにほっとする。 『拓馬……どうした?今どこだ?』 沢田の声が妙に優しくて俺は急に安心して本格的に泣き出してしまった。 「さ、さ、沢 沢田……お、俺、俺」 嗚咽を洩らすばかりの情けない俺……。 これじゃまた暫く沢田に頭が上がらない。 『……何かあったのか?何かあったんだな?なんでもいいから、すぐタクシーに乗るか交番に入れ。 それが出来ないなら、その携帯をそのままポケットに入れろ』 俺は何も言ってないのに事情を何か察してくれたらしい。嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになる俺。 ほっとして携帯を胸の内ポケットに入れた時だった。 いきなり腕を掴まれ俺は引きずられた。 振り返るとさっきの制服の野郎が3人ばかり俺を見ながらにやにやしているのだ。嘘っ!やっぱりついてきてたのかよ。 焦りまくる俺を引きずるようにして3人掛かりでそのまま近くのトイレに連れ込まれた。 「放せよ!」 「逆らうと怪我をするぜ。坊や」 ぼ、ぼうや?坊やってお前らも俺と同じ高校生じゃねーか。 「さ、さわんな!」 「可愛い顔して随分威勢がいいじゃねーか」 「美味しそうだぜ、まだ剥けてねーんじゃないの?」 必死に抵抗するが3人掛かりじゃ俺の抵抗なんてしてないのもたいした違いじゃないってかんじだ。 そのまま個室に連れ込まれる。 学生服を脱がされてYシャツを胸までたくし上げられた。 そのとたんヒュ−と誰かが口を鳴らす。 「幼そうな顔しやがって随分エロい身体だな」 「すげーこれみんなキスマークか?」 「これなら遠慮しないでがんがんやっても大丈夫じゃねーのか?」 こいつら好きな事いってやがる。 三人三様に6本の手が俺の身体を這い回っている。 「や、やだ、やだやだ…… 」 両乳首を潰され尻肉を乱暴に掴まれる。 腿の内側を撫で回されて俺は悲鳴を上げた。 「か、勘弁して……」 「くくっ勘弁してだって……」 「可愛い事いうな〜」 男達は嬉しそうにくすくすと笑っている。 もう……ダメだ。 絶体絶命だ……俺はこの三人に好き放題やられちゃうんだ…… さんざん沢田にやられてはいたけど他の男に触られるのなんか初めてで俺は吐きそうになる。 沢田……助けて……沢田……お願いだから…… 俺の心の叫びも虚しくあっという間に下半身も裸に剥かれてしまった。 「おいおい、これって……」 「まじ可愛いじゃん」 「俺の小学生の時の感じだ。なつかし〜」 ちくしょ〜懐かしがってるんじゃねーぞ。 こんな奴らにやられるなんて絶対嫌だ。 「ほらほら泣くな、な?」 「気持ち良くしてやるだけだからさ」 気のせいかこいつらの口調……子供をあやすような感じになってないか? バカにしやがって! 「顔は幼くても経験ありそうだから遠慮しないでやろうぜ?」 一番不良っぽいやつがとんでもない事をいって俺のナニをぐっと握ってきた。 「ほら、逆らうと握りつぶすぞ、坊主。自分で足を開きな」 こいつらまじだ。まじで俺をやる気だ。 あぁ、沢田のいうことを素直に聞いてりゃよかった。 ひとりで電車に乗るんじゃなかった そんな事思っても今さらだ。 「さ、沢田……さわだ……さわだぁ〜〜」 ガッターン トイレが揺れる程の大音響だった。 個室のドアが壊されたのだ。 「なんだお前……」 そう言った痴漢高校生の声が震えている。 そりゃそうだ。 沢田を怒らせると俺だってまじ怖い。 背丈も高いが、その喧嘩慣れした燃えるような瞳が全身を凍らせる。 「てめ〜ら」 例の地の底から沸き上がるような身の毛もよだつ声。 「ひえ〜〜〜〜」 「い、いくぞ」 あっという間に痴漢達がトイレから出た後は俺と沢田の二人きりだ。 「いつからストリッパーになったんだ、てめーは?」 そう言いながらも沢田の声が少しだけ柔らかくなっていた。 「泣いてンじゃねーよ」 沢田は震える俺の代わりに服を着せてくれた。 「沢田……沢田……」 「なんとか間に合ったろ?」 沢田が俺の腰をぐっと掴んでそれからあっという間に俺をおぶってしまった。 「恥ずかしいよ」 「黙っていうことを聞け」 今日の俺はとても逆らえそうにない。それにしても大きな疑問がひとつ。 「どうして僕がここにいるって判ったの?」 「そりゃ、新しい携帯にGPSがついてるからさ」 沢田がにやりと笑う。あんなにこの携帯を買うのをすすめたのはこの為だったのか? せっかく沢田が助けてくれたけど徘徊老人と変わらない扱いのような気がして、少しだけやさぐれた気持ちの俺だった。
【おしまい】 つみれさんのリクエストは三題話で、「痴漢」「強姦未遂」「正義の味方、沢田マン」でした。 |