華の翳り (444444キリリク)忘れ物番外

P子さんへ(孝之編)


 「上を向けよ」

 「ん、んん……」

 後ろ髪をきつく引っ張られ僕は痛さに呻いた。

 その男はいつも乱暴だった。微かな優しさも僕には与えてくれない。

 僕はいつも奴隷のように彼のいいなりでそんな自分が情けないと思いながら 雁字搦めだった。

 「ほら、お前は俺が欲しいんだろう?この淫乱が!抱いてやるっていってんだよ」

 殆ど前戯もないまま彼と身体を繋げられその痛みに思わず呻く。

 「乱暴にされて感じるなんて変態だよな。僕は変態ですって言ってみろよ」

 彼は身体を繋げている間ずっとSになる。

 僕の人格を否定し破壊しつくそうとするように。

 だが、その後に訪れる無関心ほど僕にとって辛いものはなかった。

 

 

 

 僕らの出会いはよくある大学のコンパの2次会だった。  

 なぜ、もともと女に関心がない僕がそのコンパに何故参加したかというと 彼、熊谷涼(りょう)が参加すると聞いたからに他ならない。

 いったい僕がこんなにも彼から目が離せくなっていたのはいつからだっただろう?

 多分、それは俺の悪目立ちする顔が女達にきゃーきゃー言われて騒がれていた時だ。

 「小平くん、モデルとかやってる?」

 「孝之って彼女いるの?ハーフ?」

 彼女たちの遠慮のない絡みに辟易していた時だった。

 「くっだらねー。男の顔になんの価値があるんだ?男の顔ってのは 出来上がってるもんじゃなくて造り上げられていくもんなんだ」

 そう吐き捨てるように言った彼の言葉が、他のやつなら気障ったらしく聞こえるのに 素直に心に届いたのは僕の好みのイケメンだったからだろうか?

 いかにも淡白そうなその優しげな顔にあんな残忍な一面があるなんてあの時まで僕は想像だにしなかった。

 2次会でカクテルに詳しい彼の蘊蓄を嬉しそうに最後まで聞いていたのは僕ひとりだった。機嫌をよくした熊谷はいきつけのショットバーへ僕を連れて行くとそこで盛り上がった僕達は飲みまくってしまった。

 タクシーで返る金も電車もなくなった俺たちはそのまま1時間程歩いて僕のマンションで泊まる羽目になった。

 

 

 

 あの日、僕のマンションで眠りこけてる君をみて、僕がほんの出来心を犯してしまったからといって いったいどれほどの罪があったのか?

 君の手にそっと唇を寄せた時、突然彼は飛び起きた。

 「なに……しやがる?」

 「何って……何も……」

 「うそつけ!俺にキスしてただろう?他にももっとしたのかよ?」

 「ちがう……ちがう」

 でも違わなかった。

 「てめーホモかよ?ケツで感じるのかよ?冗談じゃねーぞ」

 「ごめん、そんなつもりじゃ……」

 「じゃ、どんなつもりなんだよ!」

 怯える僕の顔を掴むと顎を引き上げた。

 「そんなにやって欲しいならやってやるよ」

 熊谷が僕を自分が寝ていたベッドに押し倒し

 そのまま乱暴に身体を繋げようとしているのが解って僕は驚愕した。

 彼の瞳が怒りと欲望で爛々と光る。

 「まって、まって……そのままやれば、熊谷のが汚れるから」

 「うるせ!」

 多分彼は男と身体を繋げた経験もないのだろう。

 僕の方に経験がなければ確実に血の海になっていた性急さで 彼の砲身を乱暴に僕の秘穴に突っ込んできた。

 男を受け入れるのに慣れた僕でさえ痛みしか感じなかった。

 僕は何度も懇願したのだ、許してくれと。

 結局僕が許されたのは、ブランドから明かりが洩れる明け方になってからだった。

 その日から、熊谷は女と喧嘩した時や、面白くない事があった時に突然現れては暴力のように 身体を繋げた。

 金もせびられたが、金だけは渡さなかった。それが僕にとっての最後のプライドだったから。

 大学で唯一無二の親友とも呼べる北埜流星に彼氏ができたと聞いたのはそれからほどなくだった。

 僕達は互いにカミングアウトしあったゲイのネコ同志だったからいつでもどんなことでも相談できる相手だった。

 「元気ないよ」流星が心配そうに僕の顔をみる。

 女の子とも気軽に話せて好きな彼とラブラブな毎日の北埜をみていると、うらやましいのを通り越して憎たらしくなる。 「別に……こんどのセフレもSなんでね。身体が持たないんだよ」

 北埜は女の子のように真っ赤になった。

 こいつときたら、性悪な事にラブラブな彼氏にまだ身体を拒んでいるらしい。ノンケ相手にとんでもない男だ。

 それに比べてこの僕は……そう思うとまた死にたくなる。

 病気だとは思うがリストカットを繰り返しそうになる自分の弱い心が堪らなく嫌だった。

 セフレだっていいじゃないか?

 ノンケの彼と身体を繋げている。それだけでも満足しなければ。

 そう思うのだが、胸の奥が疼いて気がつけば目頭が熱くなりそうになる。

 その夜、遅くに熊谷が訪ねてきて乱暴にドアを開けてきた。

 「さすがホモは違うよ。尻軽だよな?」

 「な?何が?」

 「見たぜ、てめーは北埜とも懇ろなんだろう?」

 からかうように俺の頬をぴたぴたと手の甲で叩く。

 「いいよな。男が好きなやつは……いつでもやり放題なんだろ?」

 その晩はいつもになく優しく熊谷は僕を抱いた。

 僕のリズムにあわせてゆっくりと入り込み胸の小さな粒を親指で刺激する。

 「あ、あぁ……うっ……」

 「気持ちいいか?」

 そんな確認をされたのは初めてだった。

 「エロイな孝之の顔……」

 熊谷が僕の顔を見ながらやってるなんて思いもしなかった。

 全身が燃えるような羞恥心が襲ってくる。

 後ろから身体を繋げたまま、不自然な体勢で彼がキスしてきた。

 僕は泣く程に感じてしまい彼をきつく締め上げた。

 

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