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二人の夏休み9 |
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何かなぁ…… 雄斗はまだ、顔が赤かった。今までなんでもなかったのに、竜斗の顔をみるだけで 照れてしまう。 竜斗が優しく自分の身の回りの世話をする様を思い出しては赤くなった。 「今さらだよなぁ……」 竜斗は強引な自分に引きずり回されてるだけなんだと思い込んでいたのだ。 自分だけがこんなに夢中になって自分だけが本気で竜斗を欲しがっていると。 竜斗は雄斗の女顔にちょっと興味を持って、男とのセックスが物珍しくて、おぼっちゃんで気が弱いから 強引な自分に引きずられてるのだと信じていたのだ。確かに竜斗は何度も雄斗を好きだといった。 でも、それは竜斗の優しさからきていて、どこか誤解からきているとタカをくくっていたのだ。 だから心のどこかでいつかは二人に別れが来ると覚悟していた。 まるで、もうひとりの雄斗が醒めた眼で 二人を冷静に観察してるように……。 もともとノンケの竜斗はいつか 雄斗が若く無くなって、ただの普通の男なんだと気が付く時がくる。竜斗の夢が醒める時、可愛い女の子と幸せな結婚して会社を継ぐ、そんな時をいつも意識していたから、悔しさもあって強引に 竜斗に甘え、不遜な態度でいたのだ。 でも、もしも、もしも竜斗も今だけじゃなくて ずっと雄斗を本気で好きで一緒にいたいと思っていたとしたら? 雄斗が押し掛けたからじゃなくて本気で男である雄斗を好きなんだとしたら? あぁ〜〜〜。考えたくない。もう、今までの竜斗の前の自分を消し去りたい。 雄斗の気分は「ぎゃっ」と叫んでそこら中走り回りたい気分だった。 いったい、今後どんな顔をして竜斗に会えばいいのだろう。 今までの竜斗の優しい言葉や甘い愛撫や、雄斗を見つめる熱い瞳を思い出しとても冷静でなどいられなかった。 あの時、竜斗は見合いの写真の事で悩んでいた。あの竜斗の整った優しく憂いを含んだ横顔、 あれは雄斗が考えないようにしていた別れの序曲のようだった。だからあんなに嫌だったのだ。 竜斗を追い詰めると解っていたのに……。 竜斗に電話して一方的に告げた。 「暫く離れて暮らさないか。旅行は日程が8月の10日以降ならなんとかなるから、まかせるよ」 「ユウ……どういう意味だ?説明しろよ。神崎と何を話したの?」 「旅行の時にゆっくり話す」 そういって携帯の電源を切った。 とても今迄みたいに話せそうになかった。嬉しいような悲しいような複雑な気持ちだった。 正直にいうと怖かった。 竜斗を半分からかっているような気持ちだった時はどんな事でも平気だったのに。 竜斗の気持ちが手に入ったとたん、すべてが怖くて仕方なかった。 ソファの上で毛布に蹲り、小さく呟いた。 「りゅう……せつない……よ」 涙が次々とこぼれ落ちて止まらない。 雄斗はその日から2週間ほど竜斗のマンションには帰らず、竜斗から携帯が入っても決して取ろうとはしなかった。 |