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二人の夏休み8 |
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「いつからつきあってるの?」 神崎は興味津々だった。 「一緒に暮らしはじめたのは、この春からです。職場に近いので」 神崎は雄斗の髪にそっと触れながら、 「男でこんな美人って反則だよな。近くで見ても男って感じしないな。肌とかすべすべしてるし、 睫長いね〜ヒゲなんて生えんの?」 「う〜〜ん、あまり、もともと毛深い方じゃないんですよ」 竜斗だって永年つきあっていて聞きたくてもユウの機嫌が怖くて聞けなかったのに、雄斗にとって鬼門ともいうべき事をずばずば聞いてくる。 それなのにどうして、神崎にはあんなに愛想がいいんだろう? しだいに竜斗は不機嫌になる。 いつもなら雄斗はこの手の話題になるととたんに無表情になって機嫌が最悪になるのに なぜ神崎にはにこにこと機嫌よく答えているのか? 「リュウ、僕にもお茶入れて」 これじゃあ、竜斗は完全にふたりのじゃまもの扱いである。面白くないがついついユウのリクエストに 身体が答えるように行動がインプットされているようで、納得出来ないながらも キッチンに立ってお茶を入れる自分がなんとも情けない。 「なんかラブラブだね。竜が素直にお茶を入れちゃうんだ?」 神崎の素直な感想にユウは不思議そうな顔で神崎をみた。 「普段、神崎さんには入れてくれないの?」 「あぁ、男同士だから冷たいもんだよ。勝手に入れろとか 冷蔵庫のお茶を飲めとか」 『俺だって男同士なんだけど』心の中で突っ込みを入れながらユウは急に顔が赤らむのを感じた。竜斗は単純に家事が好きなんだと思っていたのだ。 「可愛いなぁ、赤くなっちゃって……」 神崎が嬉しそうに雄斗の頬を撫でようとした時、「おい、勝手に触るな!!!」 竜斗が神崎を睨み付けた。 『あ〜〜ん?なんなんだ?いったい?ちょっとキッチンにいってる間に随分怪しい雰囲気じゃないか? ぽっと赤らめた雄斗のぷりぷりした頬に触れようなんて親友の神崎でも許せない』 神崎は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。 雄斗は赤くなったまま引き出しに手をかけた。 中からフリルのついたエプロンを取り出す。 「リュウ、これ、神崎さんにあげるんじゃなかった?」 「そ、それは……」 「結婚祝いはもう貰ったろ?」 ますます神崎は怪訝そうな顔をしている。 「お嫁さんになんとかって……」 雄斗は自分の赤くなった頬を誤魔化すようにエプロンを広げた。 「これは、ダメ」 「どうしてだよ?」 神崎は不服そうである。 「新品じゃないから……」 竜斗が赤くなって呟くと 雄斗もゴールデンウィークを思い出して真っ赤になった。 「なんだ?お前達……二人の世界に入りやがって……ちぇっ、俺達新婚よりよっぽど熱いな。 御馳走様、もう帰るよ」 呆れたように神崎は自分のジャケットを肩にかけて立上がった。 ところが、雄斗は神崎を慌てて追いかる。 「僕も自分のマンションに帰ります」 ひとりマンションに残された竜斗は呆然と紅茶をのせたトレイを持って佇んでいた。 |