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二人の夏休み7 |
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合鍵を使って竜斗のマンションに入るとユウは次の日の夜、父親と神崎を呼ぶように 竜斗に指示した。 「部屋は掃除して、後はケーキでも買ってこよう」 「ケーキ?オヤジや神崎が食べるかな?」 「気にするな。これは単なる小道具さ、竜は俺が順番に渡す紙を読んでくれ」 そういうとユウがどこかに出かけようとする。 「どこにいくんだ?」 「いろいろ用意があるのさ」 今朝の傷が痛むのかユウは少し歩くとよろめいた。 「送って行くよ」 「ありがとう、でもタクシーでいく。それより部屋の掃除と旅行計画はまかせた」 そういって竜斗に軽くキスをした。竜斗はつい赤くなる。 いまだにユウにこんな事をされると動揺してしまう竜斗だった。 暫くして帰って来たユウをみて竜斗は口をきけないくらい驚いた。 そしてその格好にも……。 呼び出された神崎と竜斗の父親、樋木竜之介(といきりゅうのすけ)の機嫌はすこぶるよかった。 「よく名前も言わなかった恋人を紹介する気になったな」 用意された寿司をつまみながらにこにこしている。 「竜、勿体ぶらないで、早くここに呼んでくれないのか?」 神崎も期待いっぱいの瞳で輝いている。 「今、つきあってる羽生さんだ」 そういうとキッチンからユウが紅茶とケーキを持って現れた。 神崎と樋木の二人は完全に固まっていた。綺麗にセットされた髪と真っ白なシャツブラウス 黒のタイトなハーフパンツを履いた雄斗は女には見えなかったが中性的な妖しい魅力に輝いていた。 無言で雄斗が会釈すると二人はなぜか赤くなって頭をかいている。 「中学校で数学を教えてるんだ」 神崎などはふ〜と熱くため息をついている。 「これじゃあ、他の女は眼に入らないよな……」 父親の樋木は雄斗から眼を離さずに呟いた。 筋肉はあっても、もともと骨格が華奢な雄斗は小さな顔と細い首や手足が全体的に儚げにみえる。 雄斗はそんな二人の熱い視線に小さく小首をかしげて微笑んだ。 それは幼気な少女か少年のそれを彷佛とさせ、二人はつられて微笑んだ。 「まだ、つきあって間もないんだ、でも今二人の気持ちは決まっているから、見合いは 出来ない。そして一緒に暮らす事を認めて欲しい」 雄斗は竜斗の少し後ろに隠れて竜斗の服の裾を掴む。その仕種がやけに自然で竜斗はわけがわからなくなる。 「まあ、暫くだな、……その……二人で考えてな……」 樋木は少し赤くなりながら頷いた。 「今日はこれで失礼するよ。じゃな、竜斗をよろしく。羽生さん」 樋木は名前を名乗らない雄斗をまだ、名乗るほどには親しくないと勝手に考えたらしい。 今朝だってあんなことやこんなこともやった仲だと言うのに。 樋木が部屋を出ると緊張を解いて3人それぞれ大きくため息をついた。 「神崎さんはじめまして、羽生雄斗です。今日は突然携帯で失礼しました」 雄斗がそういって握手を求めて神崎に右手を出すと神崎は飛び上がって驚いた。 「君は男か?ちょっと失礼だけどボーイッシュな女性かなと思ったよ」 「僕達は女だなんて一言も言ってませんよ。どちらともとれるように仕向けたのは否定しませんけどね」 雄斗は神崎ににっこりと微笑んだ。竜斗はそんな雄斗の横顔を見るだけで胸がきゅんと痛んだ。 |