KARATE3

二人の夏休み5



 竜斗は父と不毛な会話を迫られていた。何と言って良いか解らずに置いて来た 雄斗が心配で仕方ない。お金もないのに今、何をやってるのか? まさか、誰かに食事を奢らせたりして部屋に付いて行ってないよな?

 それなのに、父との会話は先程から同じところをぐるぐる廻っている。

 「とにかく取引銀行の頭取のお孫さんなんだ。お前をどこでみたのか 気に入ってるというのだから、会ってみるくらいいいだろう」

 「結婚する気もないのに会う事自体不謹慎ではありませんか?僕の恋人に対しても 不誠実だし」

 「だからその恋人とやらに会わせろといってるだろう?」

 「何度もいってるように、僕らはまだ若い。結婚の話しも出ていません。 やっとその関係が固まりつつあるんです。できればそっとしておいて欲しい」

 「お前はその辺の平社員とは違うんだ。結婚には責任も生じてくる。誰とでも結婚していいわけじゃないんだ」

 「じゃあお父さんは、僕のお母さんだった人とそういう利益を伴って結婚した訳ですか?」

 「そんな事はいってない、今はそんな話をしてないだろう。話を摺り替えるな」

 「お父さんにとっては、どうであれ、僕の人生にとっては誰をパートナーに選ぶかというのが 最も大切な事だ。それが目的でそれ以外は手段でしかない」

 「親子の縁を切ろうと言うのか?」

 「どうして、そうやって飛躍するんですか?とりあえず帰ります」

 「俺の言う事がきけないのか?」

 「今のお父さんと冷静に話し合えそうにないからです」

 「親子の縁を切れば、仕事もやめマンションもでるということだぞ」

 「そういう脅しには屈しない覚悟は出来てるつもりです。お父さんが本気なら他に仕事を捜しますよ」

 「結婚しろと言ってる訳でもないのに、この頑固者が!!!」

 「お父さんに似たんでしょう」

 そういうともう我慢も限界にきて、家を飛び出した。

 しかし携帯は父親に取り上げられたままだ。もし、このまま、電源をつけて雄斗の事を調べられたら お互いに不味い事になりそうだった。

 今の父は冷静さを逸してる。ユウが公務員という固い仕事についているのを知れば 何をするか解らないと不安になった。

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