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二人の夏休み3 |
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軋む身体に鞭打ちながら雄斗は勤める川向中学に辿り着いた。 とりあえず、ここにくれば昼食を食べる事はできる。ただし給食だったが。 「大丈夫ですか?羽生先生」 教頭がいち早く雄斗の姿を認めると心配そうに駆け寄った。 「顔色が悪いですよ。やっぱりお休みになった方がよかったんじゃないですか?」 「いえ、今日中にテストを印刷しておきたかったので……」 「授業はもしよかったら僕が変わりましょう。僕も本免は数学なんです」 人の善い笑顔でそう提案する教頭に雄斗ははにかみながら頷く。 本免とはメインで取った免許で専門ということになる。学校で一番忙しい教頭に頼むのは申し訳なかったが、今日の雄斗は長い時間立って授業を行なえる自信がなかった。 印刷する為のテストを自分のパソコンに打ち込みながら雄斗は今朝の不思議な竜斗の様子を思い出していた。 もともとノンケだったんだからタチが竜斗に合ってるのは解っていた。 それを無理に受けにしちゃってるんだから自分は竜斗に甘え過ぎていたのだろうか? 今朝の暴走といい、見合い写真の話をしたとたんの豹変といい、いつもと様子が違い過ぎる。 間違いなく竜斗は何か問題を抱えて悩んでいるのだろう。 それなのに自分がその力になってやれないのは、すごく不甲斐無かった。 「頼り無く見えるかなぁ」 ぽつんと呟いた雄斗に同学年の担任の古島がまるで合の手を打つように 話しかけてきた。 「……というか、頼りにして欲しいタイプなんでしょうね。羽生センセは」 首を竦めるように雄斗は首だけで挨拶した。 「センセってどちらかというと可愛い感じがするんですよ。生徒達もセンセが数学を教える姿や、空手を教える姿がそのなんというか一種のギャップを感じるらしくてね」 「だから、なんでしょう?」 今の雄斗にたとえ先輩といえども気を使う余裕がない。 強気に出た雄斗に対して古島はたじっとしながら、 「だから先生は可愛い路線でいくといいんですよ。 無理に頼りになる兄貴を装おう必要はないんじゃないかなと」 「そうですか、御忠告ありがとうございます」 雄斗はけんもほろろにそういうとパソコンに目を落とし、再び打ち込みはじめた。 まさに取り付く島もない様子に古島はため息をつきながら自分の席に戻る。 この古島という男は、雄斗が転勤してきた時から雄斗を気に入って話し掛けるチャンスを伺っていたのだが雄斗はさっぱり隙を見せる事が無かった。 そんな古島の視線など全く感じない雄斗は携帯を何度も見るばかりだ。それなのに午後も竜斗から全く連絡がなかった。 こんな事は初めてだった。何か胸がざわついて仕方が無い。こういう悪い予感だけは 良く当る自分の勘を雄斗は今日ほど恨めしく思った事は無かった。 休み時間に取りあえず今日泊れるように、元のマンションのオーナーに連絡を入れてから 何度も竜斗の携帯に留守碌をした。『連絡ほしい』と。しかし、竜斗から連絡が無い。 雄斗は意を決して光田に電話することにした。 |