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二人の夏休み2 |
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電話をかけ終わって戻ると雄斗が肩を震わせていた。 「ユウ……」 竜斗は声をかけてそっと顔を覗き込む。ユウの瞳は潤んで今にも涙がこぼれ落ちそうだった。 「ごめんね。ユウの一言が嬉しくてさ。それに最近オレ、我慢してたし……」 ユウは顔を見せまいとしてベッドに顔を埋めた。 「そんなの言い訳にならないよね。怒ってる?」 「怒ってない……学校にいかなきゃ」 「ちょっと乱暴にしちゃったから休んだ方がいいよ。それに夏休みの予定の話もしたいし」 「お前も休む気?」 「うん、だめかな?」 「やっぱり学校に行く、這ってでもいく」 「なんだそりゃ?やっぱり怒ってるじゃん」 「怒ってねーわけないだろーが!!!」 いて……と叫んで起き上がりかけたユウは再びベッドに沈み込んだ。 竜斗はそんなユウをかいがいしく看病しながらしきりにユウの御機嫌をとる。 優しく髪を撫でながら、ユウの口元に一口大に切った水蜜を運ぶ。 拗ねていたユウもしぶしぶ口をあける。仕方ないユウの大好物なのだ。 好物を鼻先に置かれて懐柔されちゃうのもちょっと悔しいのだが、今回は竜斗の心理作戦の勝ちと言う事だ。 そんな事もユウはなぜか悔しくて、ふと思い出した事を口にした。 「そういえば見合い写真が届いていたけど、俺に見せてくれないの?」 竜斗の水蜜を運ぶ手が止まる。 「お前の写真?それとも相手の?」 竜斗は何をいうか考えているように小さく唇を噛んだ。 「ま、俺には全然、関係ないけどな」 雄斗はそういって肌掛けの中に潜り込んだ。 竜斗から何の反応もない事にユウはますます不機嫌になる。 『なんかいえよ。ばっきゃろー。見合いする気なのかよ?』 竜斗がベッドから立ち去る気配がした。 ユウが肌掛けから顔をそっと出す竜斗を盗み見ると竜斗はソファの背もたれに肘をのせ人指し指を噛みながらあらぬ方向を見ていた。 いつもの雄斗なら今は話したくないだけなんだと気にも止めないだろう。 でも今日は気分が最悪だった。自分から振ったこの話題をユウは後悔しはじめていた。 こんな事言わなきゃよかった。でももう口に出して竜斗を追い詰めている。 何か事情があるのだろう。でもなぜ竜斗はそうやって自分だけでなんでも解決しようとするのか? もし俺達が最良のパートナーなら、一言相談してくれてもいいはずだ。 重苦しい時はどんどん二人の間に降り積もりぴりぴりした緊張が辺りいっぱいに張り詰めている。 我慢出来なくなったのはユウの方だった。 「俺、今夜はダチの所に泊まる」 ビクッと竜斗がユウの方を見つめた。 のろのろと起き上がるユウを竜斗はおろおろと見つめていた。 雄斗が服を着て携帯と財布をポケットに突っ込むと竜斗はやっと震える声を振り絞る。 「ユウ、お金は……?」 「お前が口にしなきゃいけない台詞はそれじゃねーだろ」 バタンと無常にもドアがしまる音が部屋に響いたが、竜斗はユウを追い掛ける事が出来なかった。 竜斗が慌ててベランダに出ると雄斗は地下鉄方向に歩いていくのが見えた。 その時徐に雄斗が竜斗の方に振り返った。 『声を掛けなければ』 竜斗は身を乗り出さんばかりにベランダの桟を強く掴んだが 結局お互いに声をかける事もなくユウは再び踵を返すとそのまま立ち去っていった。 |