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二人の夏休み10 |
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雄斗が自分のマンションに戻った時、竜斗は何が起きたのか、さっぱりわからなかった。 竜斗がお見合いをするのは嫌だったんだろう。確かに今迄幾度となく好きだと言われた。 だけどやっぱり雄斗のやることは常識人の竜斗からすると予想不可能だった。 どうして出ていってしまったんだろう?神崎と何を話していた? 海野がくれたマンションに帰った訳は?いくら考えても結論は出ない。 すれ違っているのか?それともからかわれてるのか?やっぱり解らない。 「猫みたい奴だよな。それとも子供のトラか?」 雄斗の好きだは独占欲のそれかもしれない。こんなに振り回されて掻き回されてるのに、あの傍若無人な男を 嫌いになれない。むしろどんどんと深みにはまってゆく。 子供のようだと思うと、大人のようだったり、少女のような時もあれば、オヤジみたいだったり。 インモラルで奔放だと思っていたのに、真面目な教師だったり、雄斗は本当にとらえどころがない。 たぶん雄斗にかかわるすべての人が雄斗を愛さずにいられないと思う。あの美しい容姿と捕らえ所のない 所行に。 雄斗が出ていって以来、竜斗は力が抜けて何もやる気がなくなっていた。携帯にも出てくれない。 雄斗はいったい何を考えて何が不満で出ていったのだろう? それより、自分のようなごく普通の男が雄斗を独占し、一緒に恋人として暮らした日々が奇跡だったのかも しれない。 仕事での無理もたたって、雄斗が出ていった10日後には、高熱を出して寝込んでしまった竜斗だった。 熱の中で移ろいながら雄斗が戻ってくる夢をみた。目覚めると淋しくて雄斗がいつも寝ていたあたりを そっと撫でた。戻ってこないかもしれない。本気でそう思った。 『情けないなこんな事で熱を出すなんて……熱が下がったら一人で旅に出たい。どこか遠く離れたところに……。』 そう思いながら寝たり醒めたりを繰り返していた。 会社に連絡して事情を知った神崎が心配して訪ねて来た。 「おい、あの恋人はこんな緊急時に何をやってるんだ?」 「あれきり戻ってこない。もう、戻ってこないかも……」 「何を気弱な事をいってるんだ、あいつに貢いだ分くらい取りかえせよ」 「……そうだ、お金どうしてるんだろう」 「あんなやつのお金の心配なんかしてやるな!」 「でも、あいつの給料、全額俺が預かってるんだ。ボーナスも全部入ってる」 「……?はぁ?」 神崎は呆れた顔で竜斗を見つめる。 「お前、金に困ってないのに、なんでそんなもの預かってるんだ?」 「雄斗がすべてを預けてくれたみたいで嬉しかったから……」 「ばっかじゃないの?お前等……不器用すぎ……」 呆れ返った神崎を首をすくめて竜斗が上目使いに見た。 「仕方ないなぁ、俺がこの通帳をあずかるよ。あいつに返してやる。それでいいな」 竜斗は弱々しく首を横に振った。 「いいか、もう、アイツの事は忘れろ。いくら美人だって相手は男でしかも熱があるお前を平気で放っておく薄情なやつだ。見合い話しも正式にはことわってなかったんだろ?ちょうどよかったじゃないか」 そういって神崎は通帳と印鑑をつかむと縋るような目をする竜斗をそのままに部屋を飛び出した。 神崎は自分の携帯から雄斗を呼び出した。 やって来た雄斗をみて神崎は思わずはっと息を飲む 2週間振りに見た雄斗は痩せたのか更に細く儚げな印象だった。 それでも神崎は怯まずに通帳と印鑑を雄斗に押し付けた。 「見損なったぞ。竜斗が何日も熱を出して休んでるのに」 「……え?……」 雄斗の反応は鈍い。 「熱って誰が?」 「知らなかったのか?それでも付き合ってるなら連絡くらいしたらどうだ? 竜斗は寝込んでいるんだぞ」 神崎がそういうと雄斗は押し付けられた通帳を受け取るのも忘れて飛び出した。 「リュウ……」 竜斗のマンションに飛び込むように雄斗が入ってくる。 寝室に近付くと雄斗の足取りが鈍った。二人は無言で見つめあった。 「痩せたな雄斗」 「そっちこそ、何熱なんか出してるんだよ」 雄斗は泣いていた。 「泣くな雄斗……お前が泣くことはないだろ?らしくないぜ」 「熱があったなんて知らなくて……俺……」 「泣くなってば、手のかかる奴だよ、お前は。でもな、本当に頼りになる奴でもあるだろ? 熱があるからってもどってきてくれるなんて、男気もある」 雄斗は苦笑した。 「俺……お前の気持ちが怖かった、少し離れていないと変になりそうだったんだ」 「俺の気持ちは雄斗にとって重荷か?」 「そんな事、考えないようにしていた。だっていつか来るかもしれない 終わりに怯えるのが怖かったから」 雄斗はそっと竜斗の胸に額をのせた。 |