琴線を打ち鳴らせ 8

竜斗サイド

ホテルのフロントで父の伝言がないか確認し、社用でよく使う個室の中華料理店に向う。
ここは個室だからゆっくりはなせるし、オヤジのツケがきくから時々利用してるんだけど。 なぜか雄斗は不機嫌で口も利かない。
俺だって女の子と会うのより緊張する。
「あれ?」
部屋に入ったとたん、雄斗が突拍子もない声を上げた。
「どうしたの?中華嫌い?」
俺が振り向いて訪ねると真っ赤になって俯いている。
「なんでもない」
メニューをみせて好きなものを頼むように促すが雄斗は横に首を振る。
「なんでもいい」
すごくすげなかった。
しまった、中華は嫌いだったか。
注文をとったボーイが部屋を出てから、俺はすぐに本題を切り出した。
「前は君から誘ったんだから、男は嫌いじゃ無いんだよね?」
「たいして好きでもない。あの時 ちょっと女に飽きていたから」
「おれさ、あれから雄斗のことばかり考えちゃうんだ。迷惑かな?」
上目使いに雄斗を覗き見る。口から心臓が出てきそうだ。
「何きれいごといってるのよ。今日やりたいか?やりたくないか。それだけだろ」

それだけ?
雄斗にとってはそれだけなのか?
予想はしていたけど後頭部をハンマーで殴られた気持ちだった。
もう、何を食べたかも覚えていない。
俺は暫く無言で食べていた。
話が弾まなくても雄斗はかまわないのだろう。
雄斗も無言で気が進まなそうだった割に 気持ちいいくらいのスピードで食べている。
「海老チリ頼んでもいい?好物なんだ」
俺は雄斗の要求で自分を取り戻した。
「うん、何でも頼んで」
好きなだけ....心の中で叫ぶ。
俺っていつもこうやってうまくいかなそうだとすぐにあきらめて
(しつこくしても嫌われるだけ)
なんて思っちゃうから、恋愛に淡白な奴だと言われちゃうんだよね。
喉の奥底に何かがつかえている気がして、苦しい。
すでに帰りたくなっている。
こうして目の前にいると辛いのに、別れると会える事を期待してまた雄斗のことばかり考えてしまう。
そろそろ送っていくよと言いかけて、雄斗を見ると雄斗は悪魔の様に片頬で笑っている。
「部屋はどこ?」
「部屋?」
「部屋をとったんだろ?チェックインしていたじゃないか」
部屋?そこまで考えていなかった。
雄斗ともしもそんな色っぽい雰囲気になったら 俺か雄斗の部屋でそういう事もあるかとちらっと思った事は否定しない。
「部屋はとってないんだ。よかったら僕のマンションにおいでよ。 前は雄斗が招待してくれたろ?」


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