琴線を打ち鳴らせ 6

竜斗サイド

ここ一週間毎日のように俺は携帯を見てはため息をついている。
雄斗に電話をするかどうか迷っているのだ。
俺がかけなくれば、雄斗の方からかかってくるはずもない。
気がつけば朝となく夜となく雄斗の事ばかり考えている。
生意気な口に似合わず、可愛らしげな顔だち。大きな潤んだ瞳。
桜色の濡れた唇。小さな頭を覆っている柔らかな茶色い猫毛。
雄斗の吸い付いてくるような白い肌、仰け反った時にみえる細い顎、
ため息のような熱い吐息。絡み付いてくる細い指。
薄明かりの中で見た雄斗の寝顔は天使のような幼さと気高さがあった。
今まで、情事の後にここまで執着した相手はいなかった。
(俺ってホモだったのかな)
でも、雄斗以外に欲望は感じない。雄斗だからこそなのだ。
そしてこの沸き上がってくる熱い欲望を雄斗に知られるのが怖かった。
ただ、身体目当ての奴だと思われてしまう。
あの時は雄斗の方から誘ったのだ。
だけど、今自分が電話したら確実に雄斗にはやりたくて電話したと 思われるだろう。
そして、もし雄斗が嫌がらないからといって、雄斗を抱く事ができても本当の意味で 自分が満足できないのが自分で良く解っていた。
(身体目当てだと思われるの....嫌だな。偶然を装って会うとか出来ないかな)
俺は雄斗の携帯しか知らない。大学名くらい聞いておくんだった。
大学の前で待っていたら、ただのストーカーだよな。
でも会いたい、声がききたい、遠くからでもいいからちらっとでも観ていたい。
あぁ、これって不味すぎる。のめり込んでるよな。しかも、相手は女じゃないし。
っていってもその辺の女より綺麗だし、フェロモン出まくりだけど、そんな事いったら殴られそうだな。
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる。場所をまわってる感じ。
こういうのを堂々回りっていうのかなぁ.....。
仕方ないから、今夜はレポートやっちゃおう。
万一雄斗から電話がきたら、レポートなんてやってる暇ないし。
今朝、大学のカフェテリアで雄斗の噂を聞いた。
「彼ねぇ、綺麗な顔してるけど、女遊びが激しいらしいんだ」
「いいなぁ。こっちにも女を紹介して欲しいよな」
やっぱり、女の方がいいよな。どうしてあの時俺を誘ってきたんだろう。
ホモっていう噂は殆ど聞かないし......。
正直いって俺には雄斗に電話する勇気が無くなっていた。
何か、他に会う口実でも無ければと思っていたら、俺は雄斗が空手部に入っているという噂を聞いたのだ。
「K1系のチケットが手に入らないか?」
俺は雄斗の携帯に留守電を入れた。
情けないけど、留守電でちょっとだけほっとしている俺だった。


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