琴線を打ち鳴らせ

竜斗サイド

大学に入って俺が一番驚いた事、それは信じられない数の合コンがあることだった。 よく、みんなお金と暇があると思う。
俺は、実家の事業がこの不景気で斜陽なため、バイトをしながら大学に通っている。 だから合コンにお金を使うのは気が進まない。
でも、おつき合いっていうのもある。俺って常識人だから。
今夜の合コンも人数合わせとかで仕方なく出てる。
きゃぴきゃぴした今時の女の子はちょっと苦手だから、早く帰りたくて仕方なかった。 でも、今夜はラッキーだ。俺の隣に座ったのは俺好みのボーイッシュな美人だった。 それにしても、短髪にTシャツにシャツブラウス、そしてヴィンテージのジーンズ。 お洒落をする気がないのか、 もしかして男に興味がないかもしれない。
「よく、来るの?」
「そうでもない」
絶句。このハスキーなテノール。もしかして、いや、もしかしなくてもこいつは男だ。 こんなの反則だ。化粧もしてないのに女より綺麗な男なんて始めてみた。 それよりなにより、こいつには男の琴線にぐっとくるフェロモンがある。 ふっと笑った顔が壮絶に色っぽい。
こういう男もいるんだ。
俺はついつい何度も彼の顔を盗み見た。
「好みのタイプはいた?」
「強いて言えば、君かな」
俺は思いきっていってみる。怒ったらジョークにすればいいし。
「じゃあ一緒に出ようぜ」
「いいのかな?」
俺は焦る。会費は払ったけど、まだみんなと碌に挨拶もしていない。
「いいんだよ」
こいつ顔に似合わず強引だ。
店の外に出たとたん、いきなり彼は言い放った。
「俺の事ちらちら見ていたよね?試してみない?後悔させないぜ。」
俺はあっけにとられた。こんな即物的でいいのか?
たしかに彼に興味はあるけど、いきなりっていうのはちょっと.....。 俺の腰が引けてると、手を掴んでタクシーに押し込められた。 まさか、男版の美人局じゃないよな? 俺はすでにびびっている。そんな俺をみて
「美人局じゃないから安心しろよ」
とまるで心の中を覗き込んだように笑ってみせた。
ホテルに行くと思った予想は外れ、マンションのドアの前だ。 部屋はこじんまりとして、いかにも男の部屋という感じで雑然としている。 たぶんここがこいつの部屋なんだろう。
「君の名前を聞いてなかったんだけど」
「雄斗っていうんだ。」
「俺は羽鷲竜斗」
「ふ〜ん」
いかにもお前のなまえなんかは関心ないという感じ。男女の中じゃないからか? どうも調子が狂う。顔は女でも性格は相当に男っぽいタイプらしい。
「飲めよ」
缶ビールを渡されて初めて気がつく
いつの間にか俺の隣に座った雄斗の手が腰に回されている。
俺はゆっくりと眼を閉じた。雄斗っていうのか....凄い美人のせいか 男とこんな事をしてるという抵抗感が全くない。
落ちてきた雄斗の唇を俺はむしろ自分の方から激しく貪った。
その唇は甘く柔らかい。かすかに眼を開けると彼も俺を見ていた。
そっと唇を離し小声で囁く。
「綺麗だ」
それに雄斗はかすかに微笑んでまたキスをねだってくる。
俺達は夢中でキスをしながらベットへとなだれ込んだ。


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