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部屋からリョウガが出ていくとユーリーはそっと俺に近付いてきた。にやりと片頬で笑うからぞっと背筋が寒くなる。この世界は変なやつばかりだ。 「噂以上に危うい方だ」 冗談じゃない危ういのはどっちだよ。 「噂?どんな噂だよ!カムイのか?」 「そう……ペリドのこの地を実質的に治めるリョウガさまと違って名ばかりの実質の皇子カムイ様は 男にしておくのは勿体無い程色っぽい方だとか」 「ふ、ふざけるな!」 たとえ、自分の事ではなくてもこのように見ず知らずの男に自分そっくりのカムイが 誹謗されるのを黙っていられなかった。 ユーリーの瞳が愛らしい蒼い色からグレイに変化してまるで獲物を狙う肉食獣のような輝きを帯びてくる。 「ふざけるなとはお言葉が悪すぎる……この王子様は姿形は美しいが、いまひとつ躾がされていないようだ。仕方ない、お世話を任されたのも何かの縁、私の好みより随分華奢だが躾けて差し上げよう」 そういうと銀色の髪が怪しくゆらめきそれぞれ意志でももっているかのようにぐるぐると俺の身体を縛り上げた。 「うわっ、き、気持ち悪……なんだよこれ……」 「まさか、何も御経験がないわけではありますまいに……初な反応が可愛らしい」 あるわけないだろう? こんな気色悪い体験が……。 さわさわと生き物のように揺らめく 髪に全身を撫でられて背筋が凍り付く。 終いにはがたがたと震え出した。 「リョウガさまはよほどあなたを可愛がっているとみえる。何度も抱かれているはずなのに、 何をそんなに恐れるのです?私も殺されたくはない。最後までやったりはしません。 少しだけあなたを可愛がるだけだ」 それでも俺の震えは止まらなかった。 まさか、もう一人のカムイはリョウガに抱かれた事があるとでもいうのか? それも何度も? 嘘だ。 彼は敵のはずだ。 そんなはずがあるわけがない。それともリョウガがカムイを辱めようとしているのか? 俺が逡巡している間にいつのまにか レースの細かい穴という穴から彼の銀色の髪が入り込んでくる。 そのまま信じられないような場所にまで絡み付いてきた。 「いやだ、やめろ!やめろってば……!」 前にも後ろにも髪が纏わりついて恥ずかしさと気持ち悪さで吐きそうになる。 「へ、変なところさ、さわるな……」 全身を腕と髪とで絡みとられて身動きができない。 「あ……」 後ろの自分でもあまり触れた事がないような微妙な場所に彼の髪が入り込んできた。 「や、いやだ、気持ち悪い……よせったら」 情けないが、涙が溢れ出てくる。 すっと身体が軽くなる感じがして彼の身体と髪が俺から離れていくところだった。 「ば、ばかやろ……何をするんだよ!この変態!」 そのまま崩れ落ちるように座り込んだ俺を軽々ともちあげるとベッドの中にそっと降ろした。 「ちょっと苛め過ぎてしまったかな」 そういって顔を覗き込むものだから俺は真っ赤になる。 「あなたは、どうやらこの世の者ではないようだ。あなたの中に入って解ったが反応が全く違う」 「ひ、ひとを幽霊みたいに言うな!」 「似たようなものだ。実体はここにはない。もしかしたらあなたは噂の『輪廻の鏡』からやってきたのではないのかな?」 「し、知らない……『輪廻の鏡』ってなんだよ」 「なるほど、記憶を無くされてる事になってるのだから、御存じなくてもなんの不思議もないな。いくつもの世界と繋がっているという鏡の事だ。昔3枚あったが、1枚は戦禍によって失われ、残りの一枚ずつをリョウガさまのお祖父様とカムイさまのお祖父様が持っている……と聞いた事がある。あくまでも伝聞だが」 「どういった鏡なんだ?」 「なんでも3枚一対になっていた時は、様々なこの世のモノではないものを呼び寄せたとか、王族達はそれで違う世界を行き来しているなどと聞いた事がある……」 そういってからいきなり馬乗りになって俺の顔を覗き込んできた。 「ふふふふ……どうやら、偽のカムイ様は何か心当たりがおありになるらしい」 再びにやりと嫌な感じの笑みを浮かべるユーリーに少しずつベッドの端へ後ずさりしていった。 「ないよ!」 「それはどうかな?どうやらリョウガさまはあなたの実体に未だ何も勘付いてないらしい。まぁ、それは私にとっては好都合だが」 「好都合?」 「まぁ、私の事はいい。そんなことより、私と目的が一緒ならあなたに協力して差し上げられる。私がチャンスを捜しますから隙をみて逃げるのです。このまま、ここにいればあなたはこの城に囚われて彼が飽きるまで その身体を弄ばれる事になる。そして彼が飽きれば、形だけの共同統治者として幽閉されてしまう。 それでよいのかな?」 「冗談じゃない!」 俺は真っ青になった。 「どうしたらいいんだ?」 「先ずは彼に逆らわず素直に抱かれなさい。抵抗しても怪我をするだけ。どうせ抱かれるのだから、諦めて素直に抱かれた方が逃げる体力もあろうというもの。そしてあなたの身体で今以上に虜にさせるのです」 彼の言葉を聞いて俺は意識が遠のきそうになった。何の因果で男の俺が良く知りもしない男に抱かれなくてはならないのか?それなのに虜なんてありえないじゃないか? |