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願いごとのかなう夜3 |
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「とにかく俺は怒ってる。帰るぞ」 1週間振りだと言うのに結局その夜は雄斗からのアプローチはなかった。夕食はレストランに寄る事もなく 冷凍クラムチャウダーを無言で食べただけ。味なんか解るはずもない。ユウはさっさと自分の都合に合わせてベッドに行ってしまう。あんなに会うのが楽しみだった竜斗はため息しか出なかった。 ふと窓辺をみるとベランダで揺れている笹が妙に淋しそうだ。 竜斗は買っておいた短冊につぎつぎと書き出した。 『雄斗とずっと一緒にいられますように』 『雄斗から、何か心のこもった贈り物がもらえますように』 『雄斗の手料理が食べたい』 『雄斗と旅行に行きたい』 など、ささやかといえばささやか。しょーもないといえば、本当にしょーもない願いを書き連ねた。 「これって牽牛に頼むといいのか織姫に頼むと良いのかわかんないなぁ」 6日の深夜。竜斗は窓辺に佇んで独り言を言ってみた。 ベランダに出ると星が綺麗だ。田舎じゃないからどこが天の川なのか解らないが ベガの位置だけは確認してあったので、時々じっと空をみながら短冊を笹に付けていく。 「ほら……流れ星だ」 背中から声がかかる。雄斗が起きたらしい。 「風邪ひくぞ」 そういってガウンをさりげなくかけてくれた。 まだ、怒っているのかと思っていたからなんか嬉しくて頬を泪が伝って落ちた。 「ありがと」 「うん」 短冊を手にとって雄斗が見ている。 「見るなよ。勝手に」 つい照れて取り上げる。雄斗の顔は真顔だった。 「光田の奴さ、何回もケータイ寄越して今日はどこに行ったとか、市場で知らない兄ちゃんにナンパされてるとか、逐一報告しやがるんだ」 「え……っ?!」 く〜光田の奴……それじゃあストーカーじゃないか……覚えてろ〜 「最初の晩、寝顔にキスしたなんていいやがるから俺もサッポロにいって 光田をぶち殺してやろうかと思ったよ」 「まさか……俺、早く寝ちゃって……」 「……全く、お前ってそういう奴だよ。ぼ〜〜っとしてるっていうかなんていうか。ちゃんと忠告したろ? 携帯にもなんで光田から毎日かかってきて、お前は一度もかけてこないんだよ!」 「ごめん、ケータイなんかすると里心がついて仕事を中途半端にしそうだったから」 「いいけどさ。光田はさんざん脅しておいたから、だから次の日から別の部屋になったろ?」 「うん」たしかに……そういうわけだったのか……。 雄斗は竜斗の手に両手で何かを掴ませて、その上から自分の両手を包み込むようにした。 「お前、金持ちだし、なんでも持ってるからいろいろ考えたんだけど」 そっと手を開くとそれは銀行の通帳と印鑑だった。 「4月からの給料と6月のボーナスが入ってる。これからも俺の給料全部渡すからさ、お前にまかすよ。プロポーズは男同士だから出来ないけど……」 「ユ、ユウ……っ」 竜斗は涙で前が滲んで見えない。思わず雄斗に抱きついた。 「さ、7日になったぜ。俺の短冊に書いた願いはエッチする前にお前の熱い告白を聞く事だ。いい?」 「……だめ……っ……こ、声が……で……ない」 「ちぇっ結局エッチしながらじゃいつもと同じじゃねーか。まぁいいや。夏休みも何時とるか相談したいし」 「取れ……る……のか?休……み」 「あぁ、中体連も終わったからな」 竜斗はそっと腕を雄斗の首にかけた。瞳を閉じると柔らかい雄斗の唇がそっと押し当てられる。 何度経験してもドキドキする瞬間だ。いつかドキドキしなくなる時がくるのかな? 竜斗は漠然とそんな事を考えていた。
二人の夏休みに続いても……いい? |