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願いごとのかなう夜1 |
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「出張?いつまで?」 竜斗が躊躇いがちに出張の予定を告げるとユウの声は予想道理尖っていた。 「1週間くらいかな」 「1週間も光田と一緒なのかよ」 光田と言うのは竜斗の職場に入ってきた後輩で、しかも竜斗への好意を隠そうともしない ゲイのタチだ。 もう、2ヶ月も付き合っているとそんなに悪い奴ではないと竜斗は解っていたが、やはり同居人で恋人の雄斗は面白くないらしい。 嫉妬してもらえるのは実はちょっと嬉しかったりする。 やっぱりどう考えたって竜斗の方がべた惚れだと自分でも自覚があるからだ。 仕事の他の趣味は雄斗の世話をする事なんて情けなくて世間様には知られたくない。 一方の雄斗といえば、空手に英会話に学校の資料作りとセックス以外に竜斗に関心を示さないのだ。 「大丈夫だよ。冷凍庫にピザトーストとクラムチャウダーとカレーが冷凍してあるし、 下着も多めに揃えたし、でもたまには洗濯しないとだめだよ?洗濯機を変えたから ちゃんと乾いて仕上がるからね?」 今度のボーナスで竜斗は新しい洗濯機を買った。 これもすべて雄斗の為である事を雄斗自身は知らないだろう。 それでもいいのだ。自分が好きでやってるんだから。 雄斗には言ってないがお金はない訳ではない。父親が厳しいから普通の社員と同待遇だが、竜斗の母親の実家が 実は金持ちだったりする。竜斗の母親が竜斗の幼い頃に病気で亡くなってからは、父親が再婚しやすいようにと竜斗は母方に引き取られ、名字も母方の名字を名乗っている。 だけど大人になった今なら父親の気持ちが解る。 お金を持つ事に馴れたらとんでもない勘違いをする可能性だってある。自分の稼いだお金で分相応に暮らす。 それはとても大切だ。 だからといって贅沢な服や習い事をさせてくれた祖父母に感謝していないわけではない。 祖父母のおかげで必要な立ち振るまいも身に付いたと思うからだ。 最近の一番の憂鬱は父親に結婚について尋ねられる事だ。まさか本当のことも言えなくて悩んでいる。 雄斗は結婚について悩んだ事はないのだろうか。 「別に飯はいい。コンビニもあるし、レストランだってある」 「でも身体にバランス良くないよ」 「給食食べてるだけで充分だよ」 もうすぐ七夕だ。小さい頃祖母が庭に七夕飾りをつけた笹を飾ってくれたっけ。 短冊に願いをかけると叶うという。 急に七夕飾りがしたくなった。 帰ってくるのはちょうど6日の夜だ。 「ねぇ、頼みがあるんだけど6日に笹を買っておいてくれない?」 「何するんだ」 「七夕かざり……」 雄斗の目が冷たい。「いいよ」それでもぶっきらぼうに同意してくれた。 この前の父の日でちょっと反省してるのかもしれない。 気のせいか雄斗は最近丸くなったと思う。イライラすることもなくなった。 多分それは学校に勤めて安定した生活についたこともあるのかもしれない。 どちらにしても喜ばしい事だった。 竜斗の願い、それはセックス以外で雄斗が竜斗の為に何かしてくれる事だった。 それはなんでもいい。食事を作ってくれても肩を揉んでくれても、竜斗の為に 雄斗の時間を使って何か買ってくれても良い。 とにかく、その行為ではない好意の気持ちが受け取りたい竜斗だった。 一方の雄斗にも実は不満があった。雄斗はあんなに熱く竜斗に告白したのに、 寝物語のついでみたいな告白しか受けていないのだ。 雄斗がもしそう言えば、間違いなく竜斗は行動で表わしてると言うだろう。 でも、竜斗はもともと洗濯も掃除も料理も嫌いじゃなかったのだ。 もしかしたら他の恋人にもしてやってるのかもしれなかった。 そう考えると雄斗は不安になる気持ちを押さえる事ができなかった。 |