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Pie in the sky |
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「待て!翼!」 成ヶ澤は慌てて翼を捕まえると引きずるように部屋に入れた。 「放せよ!」 「なぜ、逃げる?」 「アムロが……アムロが熱を出したって成ヶ澤が携帯にメール入れたんじゃないか」 「そうだ。たしかにそう連絡したよ。だがここに戻って来いとは書かなかった……」 つんっと翼はそっぽを向いた。きつい顔だちが少しだけ幼く見える。成ヶ澤はそんな翼の顎をとると 無理矢理前を向かせた。 「なぜ、アムロに嘘をついたんだ?」 俺は訳が解らず二人の顔を見比べる。 「お前を監禁したことなんかなかったはずだ。お前はいつだってここから出て行けた。出ていかなかったのはお前の意志だろ?」 成ヶ澤が何を言ってるのか俺は意味不明だった。監禁されてなかったって?だってドアは開かなかったじゃないか。 「お前はじゃあ、この一ヶ月アムロを無理に監禁していたのか?」 「……そうだよ……」 「どうしてそんな事を……俺がお前に一度でも無理矢理したか?」 「……してない……」 「金も必要なだけやった。仕事先も紹介した。女だって見繕ってやった。それでも 俺に抱かれるのがもう嫌だとごねるから、アムロを好きなだけ買っていいっていったんだ」 買う?俺はやっぱり買われたんだ?成ヶ澤に抱かれる事ができないなら俺の行き場所はどこなんだろう? 「俺、仕事もうきっと戻れない……」 成ヶ澤は優しそうな瞳で俺の頭をぐりぐりと撫でた。 「アムロは何も心配しなくていいんだ。しばらくこのホテルにいてもいいしな」 成ヶ澤は翼をどこか遠くを見るような瞳でじっと見据えた。 「翼……お前、俺の愛撫を調教ってアムロに言ったんだな」 「……い、や……」 「調教だったか?俺の愛し方は調教だったのか?」 唇を強く噛んで翼は足下を見ていた。 「お前を愛していたよ。お前が俺を好きじゃない事は知っていたけど、俺はお前が好きだった」 重苦しい沈黙が辺りいっぱいに充満して窒息しそうだった。 「だから精一杯愛したよ。それをお前はアムロに調教といったんだな?」 「……成ヶ澤……お、俺……」 「もういい。いいんだ俺は諦めていたよ。この一ヶ月出張先のシンガポールから帰ろうと思えば帰られない事はなかった。きっとアムロを愛するお前を見て取り乱したくなかったんだな……俺は精一杯お前を愛してきたけれど……やっと気持ちの整理がついてやっと帰ってきたのに」 「成ヶ澤……許してくれ」 「許しならアムロに請うべきだと思うね。お前はアムロの心を酷く傷つけた。アムロはもう売りの世界に戻れないだろう。何も知らなければきっとこの子はこの世界で幸せだったのだよ……」 「売りが幸せなもんか……」 翼が俺を睨んで吐き捨てるように言い放つ。 その一言で成ヶ澤はぱしっと翼を平手打ちした。その勢いで翼の身体は壁まで打ちあたりもんどりかえる。 「いいんだ。俺は今のままで幸せなんだ、俺は誰も好きにならない……こんなにも身体が汚れきっているんだもの。誰も売り専に本気にならないように……」 俺は翼を庇うように成ヶ澤と翼の間に入り込んだ。すごく惨めだった。
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