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Pie in the sky |
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成ヶ澤が出張から帰るという3日くらい前になると俺は朝から晩まで翼の愛撫を受け、前を握られるどころか、触られることすらなくてもあっという間に絶頂をむかえるようになった。 指で入り口をちらちらと愛撫されるだけで俺の前は嬉しそうに涎をたらし、ぴくぴくと蠢く。 そして終いには指で前立腺を刺激されるだけで長く疼くような快感が襲ってくる。 もうその時には俺はどうしようもなくなり、ただぼろぼろと涙を流し翼にしがみつくと「助けて、助けて……」と泣いて哀願した。 快感を通り越して苦しみでしか無いような強い欲望の渦巻きに翻弄される俺をなぜか翼は優しく抱き締めた。 「良く頑張ったな……ドライでいけるようになったじゃないか」 そういってまるで恋人にするような優しいキスをする。 欲望を煽るような激しいキスは何度も受けたが、宥めるようなこんな優しいキスは初めてだった。 そのキスは頬や額や首筋に愛おしむように移ってゆく。 なぜ、今頃こんなキスをするのだろう?これも躾なのか?でもどんなに躾けられたって俺なら好きでも無い男にこんなキスはできないだろう。翼は優しく頬を撫でてひくひくと痙攣をし続ける俺の後ろを覗き込んだ。 「すげぇな……」 いたぶるような翼の言葉に俺は掠れた声で叫んでいた。 「みるな……」 情けなかった。まだ、俺の後ろは物欲しげにひくついているのだろう。 「何をいまさら……」 そういってから鼻で笑うようにしてから俺の顔を覗き込む。 「淫乱なお前にも恥ずかしいとか照れくさいっていう感情があったのか?それってある面でいえば凄い進歩だ」 そういって翼はくすくす笑い出す 「お前みたいな可愛いネコちゃんはそうはいないよ。ゲイじゃ無い俺が勃つんだから間違い無い。 そのうえ俺が今まで成ヶ澤に1年もかけて躾けられた技はみんなお前に伝授したんだから まさに鬼に金棒だ。実際……お前が吐くほど嫌っているこの俺に抱かれてもこんな可愛い反応をするんだから、新しい御主人様はきっとお前を気に入ってくれるよ」 本当は聞くべきでは無かったのかもしれない。自分の未練が俺の魂を後で苛むに違いないのに……だが考えるより先に俺の口から言葉が飛び出していた。 「お前はここを出てどうするんだ?」 翼は少しだけ物憂げに俺を見遣ると顎を撫でながら囁いた。 「ここを出たらちゃんとした就職先が確保されてるのさ。ここにいるうちにすでに俺達は成ヶ澤の会社の海外派遣社員扱いなんだ。ここを出たら1年で2000万円ほどのボーナスももらえる。ここにいる間は全く金も使えないから俺の口座には3000万ほど入ってるらしい。 いいところのお嬢さんも斡旋してくれるから、出たら、このまま成ヶ澤の会社に席をおいて結婚かな?」 久しぶりにまた胸の奥から吐き気が襲って来た。 「どうして俺がここに連れて来られたんだ?」 翼は自分のパソコンを開くと俺の所属していた売り専のボーイリストを開いてみせた。俺がいなくなって一ヶ月だというのに俺はまだ、そのパソコンの中で 貧弱な身体を晒したまま、ポーズをつけて微笑んでいた。 「後釜は俺達檻の中のネコが選べるんだ。いろんな売りのリストの中で唯一俺の息子がその気になったのがお前だったんだ」 愚かな事に俺はその一言で涙が出るほどの喜びに胸が握りつぶされそうだった。そしてその直後に翼が女と結婚を考えている現実が俺に重くのしかかって急速に気持ちが冷えきってその落差でまた、吐き気がしてきた。そんな俺の様子をみて翼がそっと背中を撫でた。 「もうすぐ成ヶ澤が帰ってくるさ、そうしたらお前は嫌いな俺の相手をしなくても、成ヶ澤に可愛がってもらえるよ」 なぜ、翼はこんな別れる時になってから俺に今までなかったような優しい言葉をかけるのか?何かを期待してしまいそうな自分の弱い心がたまらなく嫌だった。 |