蒼く儚い望み1

Pie in the sky


 俺には今まで恋人というモノがいたことがない。

 ……そういうときっと俺を知ってる誰もが信じられないと驚くにちがいない。

 なぜならここ数年独り寝をした記憶が無いくらい俺の私生活は乱れ切っているからだ。殆ど毎日違う相手とベッドを共にし、1日にふた桁に近い男達を相手にしてきた。

 そう、男だ。俺は男に身体を売る仕事いわゆる売り専ボーイと呼ばれる仕事に身を窶していた。 そうは言っても窶してるなんて台詞はこの俺には全く似合わない。なぜなら俺は喜んでこの世界に身を置き、まさに天職かと思える程にこの仕事にやりがいを感じていた。様々な男と後腐れなく寝てしかも金を貰う。いったい世の中にこれほど素晴らしい仕事が他にあるだろうか?

 

 ときどき、御親切な客の中にはホストをやった方が金になると助言してくれたがそれはとんでもない話だった。

 男だから身を売れるのだ。

 女なんかと……想像するだけで鳥肌が立ってしまう。

 でも男なら 俺にはあまりタイプなんかない誰専だったから、様々な男と色々な性体験をすることが毎日喜びだった。

 そんな俺にとって何より苦手だったのは性行為の前や後に囁かれる「好きだ」「愛してる」という陳腐な台詞それを聞くだけで俺はすっかり興醒めしてしまう。ましてや恋愛ごっこ……。リピート客が花なんか持って現れると俺は思いっきり顔が強張る。「ありがとう、でもエッチな下着の方が嬉しいよ」にっこり相手に微笑みつつ『俺は女じゃねー花なんか貰って喜ぶか!』心の中でそう罵倒してるのをオヤジ達は知らないだろう。

 だから俺はいくつかの売り専に登録していた。 そうすれば、客や同僚に入れ込まれても逃げ道があるからだ。

 無論こんな俺だって今まで少しだけ心が動いた客や同僚がいたが、そういう上玉の殆どは俺のような浮気な男なんか相手にしないであっというまに好みの相手を見つけてしまう。

 忘れもしない可愛い年上のある客は俺に手を出して来ない上に気がついたらあっという間にこれまた俺のお気入りの同僚のモノになっていたし、金払いの好くてセックスの相性も最高だった某社の社長は何時の間にか自分の秘書と出来上がっていた。

 まぁ、世の中なんか所詮そんなものだ。

 あぁ、紹介が遅れたが俺の名は「アムロ」本名は他にもあるが、今の俺には必要がないから忘れてしまった。 一応20才ということになってる。だってこの世界はすでに3年目だから。 でも、実は18才だ。これがばれると客も俺もオーナーもやばいから内緒だけどね。

 こんな俺だが、誰専とはいっても客に一応最低限の好みがある。金払いの良い客。しつこく無い客。清潔な客。 このあたりは当たり前。最も好きな客は俺と他のボーイや、他の客との3Pをやらせてくれる客だ。 日頃取り澄ましたボーイ達が俺の下で喘ぎ、また俺の中で歓喜の声をあげて達する時、とてつもない充実感を感じてしまう。3Pは日頃マンネリになりがちな行為に彩りを与えてくれるのだ。

 最近来る常連客の一人に金払いのいい、しかも若くてイケメンがいた。

 彼は成ヶ澤と名乗った20代の体格のいい男だ。

 彼の身体はきっちりと引き締まっていて申し分なく、好みのタイプなんかいないと日頃豪語する俺も彼の指名がくるとつい頬が弛んでしまう。

 なぜなら一番の理由は彼は必ず店のボーイと3Pをさせてくれるからだ。

 「いつも御指名ありがとうございます。アムロです」

 その日も俺は指定されたホテルの部屋をノックして、小声で声をかける。電子錠を外され中に入ると いつもと同じ様子で深くソファに腰掛けた成ヶ澤がこちらをじっとみていた。

 だが最初部屋に入って唯一いつもと違ったのは、その指定された部屋がスイートルームだったことだ。

 すごい豪華な部屋で少し驚く。人の金だが無駄な使い方をするものだ。

 そのままベッドルームに案内されるとマホガニーの調度品にキングサイズのベッドが二つ並んでいた。 ついでにそこに腰掛けていたひとりの目つきのきつい男が俺を値踏みするようにみる。

 男としては相当に整った顔だ……俺が見たボーイや芸能人の中でも5本指に入るだろう。

 今日は同僚ボーイを指名しないと思ったら他から連れてきたのか。俺がそう思った瞬間、 その男はシャワーも浴びずにいきなり覆いかぶさってきた。

 どうやら、すでにその男はシャワーを浴びていたらしく。上品なシャンプーの薫りがした。 そうだ、どうせやるだけなんだから下手に話をしない方がずっといい、何も考えずに快感に浸る事ができる。久々に本気で楽しめそうだとますます俺の興奮は絶頂まで近付いていた。

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