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自分の腕の中でぐっすりと幼子のように眠りこける鹿央を見ながら、美杉は自問自答していた。 いったい何をやっているのかと。 お仕置きという名目で、いろいろこのむかつくおやじを懲らしめてやるのではなかったのか? そしてついでに、ちょっとだけ自分の性欲処理なんかもできると期待しながら。 それが、いったい何を間違えて、こいつの寝顔を見ながら、ため息なんかをついているんだろう。 ただのセクハラおやじだと思っていた鹿央。 それをこうして身近で改めてみれば 結構、品のある優しげな顔をしている。 さっぱりとして本当に 年齢を感じさせない……どこか少年の面影を残した顔。 まずい……絶対まずい。 かなり自分がその気になっていることがだ。 意識しなければ、エッチしてお仕置きしてそれで終わりのはずなのに。 こうしてエッチを躊躇うのは、深みにハマるよくない徴候だ。 嫌われたくないのか? こんなおやじに。 しかし鹿央も年下の、しかもお仕置きをすると脅す上司に、一般的にここまで無防備になれるものなのだろか? あぁだめだ、余計な事を考えるな。絶対だめだ、好きになっては。本気になっては。 結局ノンケを好きになって傷つくのは自分なのだ。それだけではない。ゲイだとばれれば職場だって 居辛くなる可能性だってある。 それに先ほど鹿央と話をしていたのは、記憶違いでなければ親会社の専務……たしか生島だった。 親会社の社長の長男で、すでに実権は息子に移っていると聞き及ぶ。 いったいそんな実力者と鹿央がどういう繋がりがあるのだろうか? たしか、鹿央は取引先の社長のどら息子だとか次男だとかいう噂はあったが、40才も過ぎて こんなところで飼い殺しにしなければならないなら、たいした企業ではなかろうと 勝手に踏んでいたのだが、その予測は修正しなければならないかもしれない。 専務は確かに鹿央を直樹と名前で呼んでいた。 意外と近しい仲ということも考えられる。 随分、生島は鹿央に対してくだけた話し方をしていた……まるで家族か幼馴染みのように。 それが美杉の胸の奥に小さな冷たい澱のようなものを残す。 もしかして、こんなおやじでも、誰かに攫われてしまうのが不安なのか? 美杉は再び自問してから激しく首を振る。 まさかそんなことはないだろう。 鹿央はあの大人しい性格で、結局今まで女の子達にも押しの強い態度に出られなかったのだろうし、親の七光りだけで就職して何不自由のない生活をしているから、あんなおやじになってセクハラ まがいのことができるどうしようもない男なのだ。 浮かんでは消える鹿央と生島の親しげな態度や、自分の腕の中で酔いに任せて乱れた 鹿央の今までに見たことのない色気のある潤んだ瞳を何度も必死に打ち消そうとした。 だが、隣に無邪気に眠りこけていた男はまるで、幼子が縋り付くように いきなり美杉の腰に手を回し、その起き上がったままの彼の発達した太ももに そっと頬を寄せてきた。 まずい……マグマのように滾った激しい欲望が沸き上がってくる。 慌てて美杉は、すがりつく鹿央の顔を乱暴に押し退けようとした。しかし意外に力強く 簡単にその腕を剥がすことができない。 ドクン、ドクンと胸が激しく高鳴る。 そうだ、お仕置きだ……努力もせずに親の七光りで楽な生活をしながら 女に色目をつかうこの男に思い知らせてやるはずだったのだからこれくらいなんだというのだ? まして、一度は自分が許してやろうとしているのに……。こいつが悪いのだ。自覚のないこの男が。男だって危ない目にあうこともあるのだと、思い知らせてやらねば。 鹿央の下半身に手を伸ばし彼の欲望に手を伸ばした。 それは、甘える鹿央の態度に相反して楚々と佇んでいる。 ゆっくりと刺激を加えると「ん、あ……っ…んんっ」と掠れるような喘ぎに変化していった。 そのままズボンを脱がせても、微かに動くだけの鹿央に美杉の指はしだいに大胆になっていく。 きっちりとした淡いグリーンのボクサーに手をかけると一気に引き降ろして 片足を自分の肩にかけた。 普段、空気にも晒されないような場所まですべて無防備に晒されている。殆ど無毛の処女地である鹿央の窪みは、まるで 美杉の欲望を待ち望んでいるかのように、ひっそりとその呼吸に合わせて息づき、殊の外エロチックだ。 しかもその年齢を感じさせない白い張りのある滑らかな肌に彼はまるで導かれるかのように 自分の指を滑らせた。 鹿央は反覚醒しているのか、酔っているのか全く抵抗しなかった。 自分の目前にあるこの状況に美杉の欲望の箍は簡単に外れてしまった。
指を差し込むと「うっ…くっ」と僅かに呻いたが、指は思った程の抵抗もなく襞を分け入ってゆく。 周りを刺激しながら少しずつ抵抗が弛んだのを確認するとさらに指を増やして ゆっくりと拡張してゆく。 頭が沸騰しそうなほど、美杉は興奮していた。 これほど興奮したのは、初めて好きだった男と 最初にキスをした時以来だった。 そう、それはもう幼いといえるほど昔の事で。 もっと馴らしてから挿入しなければ不味いと理性は囁いたが、もうこの暴走を誰もとめることなど できはしなかった。
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