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試される運命8 |
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そこにすかさず古宮が二人の間を割って入ってくる。健吾は酷く驚いた顔をして思わず立上がったが、すぐに勝ち気そうな瞳で竜斗を睨むとどすんと腰を降ろす。 「失礼ですがそういったお話はアポを取ってしていただかなくては困ります」 「誰だ、お前は?」 「秘書室長の古宮です」 「悪いが、今大切な話をしている。他人がプライベートな話に首を突っ込んでもらっては困るな」 健吾は恐ろしげな表情で威嚇するように古宮をぐっと睨み付けた。 「実は、先程からの会話はすべて録音させていただきました。羽鷲は今、勤務中ですし、ましてワシバネ様も我が社のラウンジをお使いでのこの暴挙、出るところに出れば恐喝と間違いかねられませんよ」 そう言って古宮も負けていない。それ以上に迫力のある顔で睨み返す。 「相変わらず、みんなに守られて生活してるんだな竜斗…… だから、そんな寝ぼけた顔になるんだよっ!」 健吾は捨て台詞をはくとそこを蹴るように出ていった。寝ぼけた顔って……思わず脱力しかけた 竜斗だが古宮は「羽鷲君の方がずっといい男だから嫉妬してるんだろう」と気遣ってくれた。 「古宮さん、本当に僕らの話を傍受していたのですか?でもそれはそれで罪になるのではないのですか?」 「羽鷲くん、全く君は今までそんな呑気でよく無事でいられたね。半分ははったりに決まってる。 だって私が君に何かする時間なんかなかったろ?だがたった今のワシバネの羽鷲氏との会話は私のポケットに入ってるボイスレコーダーに録音されてるはずだ。これはある意味有力な証拠になる。無論諸刃の刃(やいば)ではあるがな」 「そうですね。僕がいたらないばかりにお手数おかけしました」 竜斗は項垂れてがっくり肩を落とす。 「何事も経験だよ、羽鷲くん。僕は君が社長の息子だろうがワシバネの縁故者だろうが ばしばししごくから、そのつもりで」 そうは言ったが竜斗を見つめる古宮の表情は柔らかかった。 「それに調子が悪そうだな。緊張しただけじゃないんだろう?医務室にいって少し休んで来たらどうだ?今にも倒れそうな真っ青な顔をしてる」 竜斗は頷くとそのまま医務室に向った。今朝のユウとの情事も影響してるのだろう本当に調子が悪くて倒れそうだった。 竜斗は医務室の受付で何か声をかけられたことまでは覚えているがそれから竜斗は緊張と体調の悪さとで倒れ込むようにベッドに横になった。
気がつくとそこはすでに自宅のマンションの自分のベッドの上だった。ユウが心配そうに顔を覗き込んでいる。 「おい、大丈夫なのか?」 「大丈夫なら今ごろ倒れて寝て無い……」 「ふ〜〜ん。そんな憎まれ口をたたくなら大丈夫そうだな」 そういって小さな土鍋に入ったおかゆらしきものを持ってきた。竜はなるべく雄斗の機嫌を損ねないように恐る恐る尋ねる。 「これってユウが作ったの?」 「そうだよ」 「……」 竜斗は無意識に受け取りかけた手を引っ込めていた。 「お前って超失礼だな。まぁ、実をいえばお前のおばあさんがやってきて作ってくれたんだ。 俺の事不思議そうに見るから『同居人です』って言ったらさらに変な顔していた」 「あ、会ったのか?」 竜斗はさらに脱力した。心配して来てくれたのは解るが、おばあさまもなんて勝手な事を…… まさか雄斗も余計な事をべらべら話して無いよな?まぁ、そういうタイプじゃないけど。 「納得してないような顔だったから、『実は住み込みでガードマンとして雇われてるんです』とか 言って、『きえ〜〜っ』と空手の型をいくつかみせてやったら納得してすぐ帰ったぞ」 それって脅しみたいなもんじゃないか……竜斗はさらに落ち込んで 思わず羽毛ふとんをかぶってしまった。 大好きなおばあさまと雄斗をどうやって会わせるかいろいろ楽しく思案していたのに どうやらすべて徒労に終わったらしい。 「お前のおばあさん、果物だの肉だの魚介類だのなんかいっぱい冷蔵庫に詰めていったぞ。 俺に『料理は得意か』って聞くから、『今度教えてください』っていったら『喜んで』だって」 なんだそりゃ?しかしいつの間にか雄斗とおばあさまが親しくなっていたのは嬉しい誤算だった。 たしかに冷静に考えると可愛らしい容姿をした雄斗が誰とでも親しくなる特技を持つ祖母と 仲良くならない方が不自然かも…… 竜斗は疲れた頭でそう思っていた。無防備になった瞬間ユウのキスが落ちてくる。 流されちゃいけない……そう思いながらも竜斗はきつく瞳を閉じた。 |