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試される運命6 |
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社長室に向おうとした丁度その時いきなり電話が鳴る。光田は外回りに出たので大きなオフィスのこの部屋に二人しかいないこの課では雄斗が電話を取るしか無かった。 まだ前の課にいた時の方が雑用がなかったような気がする。どうも父親に自分の力量を測られている意図を感じて面映いが仕方ない。 「はい、株式会社シソーラス営業開発課でございます」 「久しぶりだな竜斗!俺が解るか?」 「あ……」 確かにその声に聞き覚えがあった。 「健吾?」 竜斗は両親ともが一人っ子だった上、母親はすぐに亡くなった為、ずっと祖父母と暮らしてきた。 無論、忙しい祖父と顔をあわせる事はめったに無く、祖母だけが竜斗の近くにいる家族だった。 ところが数度だけ同じ年代の子供が祖父に良く似た年輩の男と一緒に 訪ねてきて遊んだ事があった。その年輩の男性は祖父の弟だと後で聞かされた。 竜斗にとっては大叔父に当たる人物らしい。今までの竜斗の生活は大きな家に使用人の他に普段いっしょにすごす家族は祖母一人。 同じ世代の子供が訪ねてきて遊んでくれた事は竜斗にとって忘れられない出来事だった。 それが、健吾だったのである。なぜか2.3度で来なくなってしまったが。 健吾とは進学した有名私立の中高一貫校でも一緒でひとつ上の学年だったが、殆ど話す機会もないまま 卒業したのでほぼ、竜斗の記憶から抹殺された存在だった。 「あぁ、ところで、竜斗お前、その若さで課長だって凄いな?」 いきなりの電話に竜斗は健吾の意図が測りかねた。 「で、どのような御用件ですか?」 「下の喫茶室で待ってる」 「申し訳ございませんが、先約が入っておりまして」 「俺も時間がない。とにかく喫茶室で待ってる。先約とやらを早々に切り上げて来いよ」 子供の時からこういう強引なところがある男だった。竜斗は苦笑する。 「お前の廻りって昔から凄いガードがかたいようだな」 「え?」 「高校時代からガードが固められていて廻りに全く近付けなかったものな」 そんな話は初めて聞く。竜斗が黙って聞いてるのをいいことに健吾は勝手に話を進めようという気配を感じる 「申し訳ありませんが、当社ではその案件につきましては、扱いかねまして……」 「そんなに警戒するな、ただ懐かしかっただけなんだ。あの頃同じ羽鷲で同年代の子なんて見かけた事がなかったから……まぁ、とにかく時間を作って来い」 「せっかくですが……」 「まってるぜ」 そのまま電話は切れた。なんて勝手な男だろう? 竜斗は健吾の存在が何か悪い予兆のような気がして仕方ない。 子供の時は仲良く遊んだが、どちらかというといつも健吾のいうなりにされていたような記憶がある。 社長の話しも長くなりそうだし、雄斗にいわせるとたった一度だったが、散々焦らされていいようにされた 身体は思うようにいう事をききそうに無い。 竜斗は心の中で雄斗を罵倒しながらゆっくりと腰をあげた。
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