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試される運命4 |
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なにより雄斗を不愉快にさせたのは、竜斗に似た羽鷲という男の側近らしい男が いなくなる前にぽつりと羽鷲に漏らした一言だった。 『あいつ、真野綾香に似てない?』 真野綾香とは例のすっぴんが評判になった女優である。 それを聞いて雄斗はどんと落ち込んだ。 何人に同じ事を言われたか解らない。だが、今回のはある意味雄斗にとって決定打といえた。 見ず知らずの男に何の思惑もなく、しかも雄斗に聞かせようと思ったわけではないらしかったから。 そんな、イライラした気持ちのまま、部屋に帰れば、竜斗は自分の為に伊達眼鏡を買ってくれていた。 普段、ぼう〜っとしてるのに、こういう事はよく気が付く男なのだ。 俺の気持ちを一番解ってくれてる。 そしてこいつなりに嫉妬してるに違いないのだ! 可愛いやつ……雄斗はもう、すっかり機嫌が直ってその気満々になっていた。 だが、間の悪い事に竜は、せっかく盛り上がった気持ちに水を差すような事を言い出すのだ。 皮肉のひとつも言ってやりたくなるというものだ。 その上、竜ときたら「嫌み?」 なんて言いやがった。 皮肉と嫌みじゃ似てるようだが全然違う! 皮肉は遠回しにいうだけだが、嫌味には悪意が篭ってる。 信じられない事に竜の奴、俺の一言にスケベな想像までしやがって!淡白そうなのになんなんだ? 『やっぱり、ちゃんと聞いておこう』 そう思って聞いたのだが、原因はお前にあるとはっきり言われて急に落ち込んだ竜の反応に雄斗は少しだけ後悔した。 「俺の母親は俺を産んですぐ、死んでしまった事はいったよね?」 「うん」 思わず雄斗はリュウの顔色を伺うように上目つかいでみつめる。リュウの顔が少しだけほころんだ。 「俺の父親はまだ、若かったから、再婚の可能性もあって引き取った事になってるけど 実は俺の祖父の思惑は違ったんだ。……ワシバネ建設って知ってる?」 「まぁ、俺でも知ってる一部上場の巨大企業だな……」 「ワシバネって鷲の羽って書くんだよ」 「……マジ?!……金持ちだとは思っていたけど、あんなでかいところか?」 「それで俺の母親は一人っ子だったんだ」 「じゃあ、お前がワシバネを継ぐのか?」 「俺の父親も一人っ子なんだよ」 「……どっちも継ぐの?」 「そうなるとシソーラスの方が吸収合併される形になってしまう」 シソーラスとは竜斗の今現在勤めている父の会社の事だった。 「それは俺がお前の父親でも納得できんな」 「俺の力量でいったらシソーラスで充分なんだ。おばあさまは大好きだが、 おじいさまはやり手すぎて苦手だし」 「その話はお前の祖父母にしてあるの?」 「いや、多分シソーラスに丁稚奉公に出してるつもりなんだ。だからおじいさまは 余裕なんだよ」 「お前に従兄弟とか再従兄弟とかいない?」 「従兄弟はいないよ。だって両親とも一人っ子だからな。『ハトコ』ってなんだ?」 「俗にいう「またいとこ」の事だよ。従兄弟の子同志を再従兄弟って呼ぶんだ」 「さぁ、知らないけど、どうして?」 雄斗は帰り道に竜に良く似た羽鷲について話すべきか一瞬迷ったが結局話さなかった。 「つまり、お前がシソーラスにこのままいたいという気持ちも、じいさんの思惑も お前はじいさんや、オヤジに話してないわけだ?」 「まぁ、そうだ」 「呑気なやつだな。このままいくと確実に拗れるぞ」 「解ってる……解ってるから話しずらいんだよ」 雄斗はため息をつく竜斗を背中からそっと抱き締めて促すようにキスをした。
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