KARATE4

試される運命22


 仕事が終わって久しぶりにマンションに辿り着いた雄斗を、夕食を用意しながら竜斗は待っていた。

 「どうだった?」

 暫しの沈黙の後雄斗が重い口を開く。

 「確かに、俺がお前の叔父だっていうことは間違いないと思う、でも俺は羽鷲を頼る気がないから そんなことはどうでもいいんだ。一番気になっていた真野綾香にワシバネに対する下心がない事が分かったからその件に関しては正直ほっとした」

 今朝のティーラウンジでの出来事をかいつまんで竜斗に話して聞かせた。

 「そっか、よかったな。でも俺が甥っ子だって抵抗あるんじゃないの?」

 「ねーよ。羽鷲の家に興味ないし、俺は羽生雄斗として生きていく。これからもな」

 「そうか、そうだよな」

 竜斗は言葉少なに頷きながらそっと雄斗の皿ににお代わりの紅茶豚とマリボーの入ったミモザサラダをよそってやる。雄斗は美味しそうに頬張りながらにっこりと微笑んだ。

 「あぁ〜、やっぱり旨いな。竜の作った飯を食うとこのマンションに帰ってきたんだなっていう気がして落ち着く……。でも、リュウ……あんまり無理すんなよ。お前だって疲れて帰ってきて夕飯の用意なんかするの大変だろ?」

 「ちっとも大変じゃないよ。逆にご飯の用意をするのは俺のストレス解消法のひとつだ。雄斗の喜ぶ顔を想像しながら作るのって結構楽しくってさ」

 「本当に無理してないのか?……」

 らしくない台詞を吐く雄斗に思わず苦笑する。

 「だから無理なんかしてないって。きっとお祖母様に育てられなかったら、俺も健吾みたいな性格になっていたかもしれないけど、お金で手に入れられるもので欲しい物って殆ど無かったから、あるのが当たり前で物欲なんか育たなかったし、大学時代にお祖父様に反発して仕送りを打ち切られて バイトしたり、お腹空いたりしてさ。すごくそういう経験がなかったから、新鮮でたのしかったね。 唯一欲しいと思ったのは雄斗の気持ちだったし」

 「か〜〜!お前ってそういうことがよく照れずに言えるよな」

 「雄斗がいれば、他に本当に欲しい物なんてないし」

 やってられないというように雄斗は天上を見上げた。照れてる様子がなんとも愛らしい。

 雄斗はまたひとつため息をついてから真顔で尋ねる。

 「だけど、本当に、本当にいいのかよ?今まで何不自由なく暮らしてきて、女の子だって 入れ食い状態だろ?今は俺と暮らして盛り上がってるけどさ、そのうち後悔することになるんじゃないの?」

 何種類かのチーズを皿に盛り合わせながら、竜斗は雄斗をじっと見据えた。

 「ユウ……結構酷い事言うなぁ。それって俺の言う事信じてないっていう風にも聞こえるよ。もう、俺はこの世界に目覚めちゃったんだよ。何も知らなかった頃に戻れる訳無いし、お金を守って生きていくなんてまっぴらごめんだよ。最低限の生活ができればいい。貧乏の楽しさもしっちゃったし、金持ちの退屈もしってるいからね」

 いかにも真っ平ごめんという感じで竜斗は横を向いた。高い鼻梁が綺麗でつい雄斗は見愡れて箸を持つ手を置いた。

 「やっぱりリュウって変わってるよな」

 多少の照れもあって雄斗は大袈裟に両手を開いてみせる。

 「何が変わってるんだよ」

 「男に興味があったわけじゃないんだろ?俺が初めてだったし、それなのに俺の飯の仕度やら掃除やらしてくれて、ケツが使えたわけじゃないのにネコまでしてくれるし」

 じっと悪戯っぽい瞳でリュウを見据える。リュウは思わず顔が熱くなった。その顔が反則のように可愛いんだよな。本人は自覚ないけど……

 リュウはそっとため息をついた。

 「仕方ないよ。惚れた弱味だから」

 「はぁ?よくそんなこと真顔で言うなぁ」

 照れてる照れてる……そんな台詞の割には雄斗の顔も満更ではなさそうだ。

 「雄斗の顔をみながら一緒に飯が食えるのが俺にとって幸せの基本みたいなものだもんな」

 「いってろよ……恥ずいやつ……それよりお前の方はどうなんだよ。健吾に会社譲るって本気かよ」

 「ん、必要最低限の金は欲しいけどワシバネに執着ないし、お祖父様の御機嫌とって貴重な時間を潰してまでやろうと思う仕事じゃない。それより親父みたいに会社を興そうかなって考えてる」

 思わず膝を正すように雄斗がにじり寄ってきた。

 「もしだめになったらどうするんだよ?」

 「そんな事言ったら何も始められないだろ?失敗したらまた、一からやり直すさ」

 「お前って気が弱いのか大胆なのか時々わかんねーよ」

 「金はなんとかなりそうだし、自分の可能性にかけてみたい。雄斗が俺についてきてくれたら嬉しいけど」

 思わず雄斗はまじまじとリュウの顔をみた。多分呆れてるんだろう。リュウは今言うのは失敗だったなと多少後悔した。

 「はぁ?なんで俺がお前と昼も夜も一緒にいなきゃけないんだよ」

 「嫌か……やっぱり」

 「別にいいけどさ、なんか公務員っていう立場に限界を感じ始めていたし。でも急にはやめられないよ。 一応年度末までは責任があるけどその後は……考えてもいい」

 竜斗はぱぁっと明るい顔になって思わず雄斗の首に飛びつく。考えてもいいなんて言ってくれると思わなかったのだ。竜斗の仕事なんか無関心だと思っていたから、心臓が破裂しそうなくらい竜斗は嬉しかった。

 「本当にいいのか?滅茶苦茶嬉しい!雄斗を巻き込むのは怖いけど頑張り甲斐があるよ」

 「でも、健吾の事は腹が立つけどな」

 竜斗の興奮を押さえるように雄斗は唸る。多分思い出すと色々と腹立たしいのだろう。

 「彼はあのままでいいんだ。放っておいても卒なくやってワシバネを大きくしてくれれば、筆頭株主になる僕としても利益があるし、彼がお祖父様に潰される可能性だってある。名誉はあるが決して平淡な道じゃない」

 そういってからにやりと雄斗の顎を掴んだ。

 「それより彼に何をされたのか……ゆっくり聞きたいな」

 「ば、ばかいうなよ。第一覚えてねーし」

 「さっきから雄斗が誘うんだもんな」

 「誘ってねーし」

 「誘ってる……」

 今夜は雄斗が可愛くって我慢なんかできそうになかった。

 「はぁ?犯されたいのか?」

 「お仕置きされるのはお前だろ?健吾に好き放題やられて、俺が嫉妬しないと思うのか?」

 「嫉妬してたんだ」

 そういうと雄斗はリュウの顔をにやりと笑ってみつめてから体重をかけて竜斗を押し倒した。アッと言う間の形成逆転に竜斗は焦りまくる。今夜こそ俺が雄斗を可愛がるはずなのだ。

 「あ、ばか、こんなところで……なにしやがるんだよ?」

 「ナニするに決まってんだろ?」

 「はぁ?いきなり過ぎるだろうが、第一なんでお前が……あ、そんなとこ触んな……」

 思わず竜斗は身を捩って体勢を立直そうとする。キッチンでなんて冗談じゃない!

 「やめろって、いやだ……よせって、あ、あぁ……ちくしょ……放せったら……」

 竜が抵抗する程、雄斗の瞳は爛々と輝きだした。

 「抵抗するとますます熱くなるんだよ。興奮させるな」

 あくまで雄斗は冷静な声でぐっと体重をかける。体重差は殆ど無い二人だが筋肉の付き方が違う。

 「やだって……ん、んん……ずるいぞ、今夜は俺が……」

 「ずるい?どっちが筋肉と体力があると思ってる?正気を失わなきゃいつでもお前が下なんだよ」

 「ひ、卑怯だ……そんなところ掴んで……あ、あ、あ……」

 「いってるぞばから気持ち良さそうだし……可愛い……リュウって」

 包み込むようにそっと竜斗のオスを扱きながら雄斗がリュウの腰を掴んでゆっくりと引き寄せる。久々のきつさに、くんっ!っと竜斗の背中が仰け反った。

 「やっぱり熱いな……お前の中……」

 竜斗が慣れるまで動かずにいた雄斗はそっと竜斗の顎をとってキスをする。

 「いうな!」

 「こんなに固くしてるくせに強情張るなよ」

 「こんな……ば、場所で……や、やだ……そこは……う……うぅっ!」

 下半身だけが裸にされてる 自分がなんとも恥ずかしくて思わず顔を手で覆った。雄斗はリュウの様子を見ながらゆっくりと腰をグラインドさせる。

 「たのむ……頼むから……ここじゃ嫌なんだよ」

 そういうリュウの腰を押さえてぐっと奥まで入れると雄斗は気持ち良さそうに小さく震えた。

 「ばか……抜けよ!もう」

 雄斗はゆっくりと引き抜くと「続きはベッドでしようぜ……」といって慌てるリュウをお姫さまだっこで抱き上げた。

 「抱いてやる……自分で歩くと出ちゃうだろ……」

 「ばっかやろ!ユウがいきなりやるからだろうが……」

 竜斗は真っ赤になりながら雄斗のシャツに顔を埋める。

 悔しがりながらも結局竜斗の甘い声がベッドルームで朝まで続いたのは言うまでもない。

 

 

 FIN

 

 


 BACK  WORK TOP