KARATE4

試される運命18


 「……羽鷲?羽鷲って?」

 「巻き毛がそっくりだって……お前のじいさんは巻き毛か?」

 「知らない、小さい頃はいつもおばあさんとお風呂に入っていたからおじいさんの乱れた髪なんか見た事がない、第一、おじいさんの巻き毛が、今なんの関係があるんだよ」

 「いいか、まず整理して考えよう。羽鷲家ではおじいさんに兄弟がいた。少なくてもひとりはいたな? それはつまり健吾の祖父だ。そいつも羽鷲多分、健吾の父親も羽鷲だ。これで最低3人は俺の父親の可能性がある」

 「まさかユウが俺の叔父って可能性もあるの?」

 「考えたくないが……あるね。健吾が急に俺と母にコンタクトをとってきた事を思えば 可能性がゼロではない」

 押しつぶされそうな思いで雄斗は呻いた。

 「じゃあ、俺!どっちにしろユウと親戚だね」

 そんなユウの心情も察せずに竜斗は心底嬉しそうに叫んだ!

 「どっちにしろって……たしかにどっちに転んでも俺たちの関係はますます難しくなる」

 「そうかな?ユウがワシバネを継いで俺がシソーラスを継げばなんの問題もないじゃないか?」

 雄斗は小さくため息をついた。

 「……そんな単純なわけがないだろう?もし俺にワシバネを継がせようなんて気持ちが少しでもあったら、今まで羽生姓を名乗らせる訳がないし、リュウをわざわざ娘の嫁ぎ先から引き取って自分の姓に入れる訳がない。これには何か複雑な裏がありそうだ」

 竜斗は複雑そうな顔でユウをじっと見つめていた。

 「何?」

 「雄斗にとって一番大切なものは何かなっと思って……」

 「まさかお前だよ……なんて女みたいな甘ったるい言葉を期待してないよな」

 ちゃかすようにユウは小首を傾げてクスリと笑うが竜斗の顔はいつになく真剣だった。

 「少なくとも僕はそう思ってる……ユウにとってもそうあって欲しい」

 ユウは今度は大きくため息をついた。

 「今の状況でそんな事を確認しあってどうするんだよ?ばかじゃねーの?」

 「俺は雄斗に関してはバカになれるよ。今この状況だから確認したい。何があっても俺たちの関係を最優先できるのかどうか」

 「それって疑ってるのか?」

 「そうじゃない。そうじゃないんだ。俺たちの関係が最優先なら恐れるものなんかそんなにありはしない。たとえ、金や立場や仕事を失っても生きていけるだろ」

 「どうして今、それを確認しなくちゃいけないんだ?そんな観念的なものより、今は目前の具体的な問題を解決するのが先決だろ?」

 「僕には雄斗が目標を失いかけてるようにみえる。両親がいなくても、母親が突然現れてもベーシックが僕達の関係だとしたら、進む方向は自ずと見えてくるんじゃないか?」

 「お前が何をいいたいのか、良く解らない……」

 竜斗はそっとユウの肩を抱いた。

 「雄斗が不安になってる気持ち僕にも解る。僕も両親と離れて暮らしていたからね。祖母じゃ親の代わりにならない時もある。今日、色々な事があり過ぎて混乱してるのも解る……でも忘れないで。僕がユウの傍にいることを。今は僕がユウの一番の心の支えでいたいんだ」

 「だから、どうして今それをいうんだ?今は色んな事を……」

 雄斗の唇をそっとその唇で竜斗は塞いだ。怒った瞳の雄斗を覗き込むようにしてそっと囁く。

 「たまには僕にも甘えて欲しい。雄斗は自分だけで頑張ろうとしてるようにみえるよ。そんな雄斗は逆に痛々しくて……僕らは二人だって忘れないでほしい」

 優しく諭す竜斗の声も余裕のないユウにはただ小さく頷くのがいっぱいいっぱいだった。

 そんな余裕のない雄斗が今の竜斗にはもっとも不安な存在だった。どこかに独り取り残された迷子の子供……そんな雰囲気の雄斗は健吾にどんな対象に見られて何をされたのか、こういうことに疎い竜斗にも解り過ぎるくらい解ってしまうからだった。


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