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試される運命16 |
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「羽鷲って会長じゃないでしょうね?」 「まだ健吾さんから話を聞いてないの?」 「悪いが僕は今日は仕事がある。改めて日時をとってお話を伺うわけにはいきませんか? ここで今、お話を伺っても、健吾さん対してもにもあなたに対してもも、僕の印象は最悪状況ですから実りのある話し合いができるとはとても思えない」 そのまま健吾に瞳を送って睨み付けた。卑怯ものめ! 「とにかく失礼する」 「雄斗……」 背中に降り掛かる綾香の声を振りはらうようにして雄斗はそのまま、部屋を飛び出した。すぐに携帯を忘れたのに気がついたが解約すればそれでいいともう、健吾の部屋に戻る気などさらさらなかった。 真野綾香はテレビでみるよりずっと美しくそして感じがよかった。それがかえって腹立たしい。 なぜなんだ?どうして?さまざまな思いが雄斗を取り囲み押しつぶそうとする。 遅刻はしたが、なんとか学校に辿り着いた雄斗はさらに吐き気に襲われた。 立ってるのもやっとだった。 教頭がやってきて保健室へと抱き上げて運んでくれる。その腕まで暖かくて頼りにしたくなる雄斗だった。 「どうして無理してくるんだ?真っ青じゃないか?」 「大丈夫です……」 「授業は2時限目だろう?私が変わろうか?」 教頭はいつも優しい。本当に手をさしのべて欲しい時にだけそっとさしのべられ、いつもはどんな事があっても無神経に干渉したりしなかった。 だめだ、心が弱くなってる……教頭に縋ってしまいたくなる弱い自分を叱咤しながら、雄斗は息だけで返答した。 「本当に大丈夫です……吐き気止めさえいただければ……」 「病院に行った方がいいんじゃないか?」 「いえ、本当に……。あ、でも携帯だけ貸していただけますか?」 学校での私用電話は禁止である。税金だからって無神経に学校の電話を使う同僚が雄斗は大嫌いだった。 「おぉ……いいよ。使いなさい」 そういって雄斗に携帯を渡すとさり気なく教頭は保健室を出ていった。 「リュウ……」 「雄斗!お前、いまどこに?」 「学校……情けないけど一人で家まで帰れそうにない。財布もないし……どんなに遅くなってもいいから迎えに来てくれないか?」 「いいよ、今いく……」 「ばかいうな。俺だって仕事だし、お前も仕事だろ?タクシーでいいからさ。仕事が終わってから来てくれ。それとこの携帯……教頭先生のなんだ。信用出来る人だから、なにかあったらここに電話くれ」 「わかった、仕事を終えたらすぐにいくよ。それまで頑張れ!」 切れた携帯に雄斗は思わず呟く。 「何を頑張れッていうんだよ……リュウらしいけどな」 くすっと笑って携帯を枕元に置くと雄斗は急に眠気が襲ってきた。 リュウの声を聞いただけでまるで洗い流されるように緊張が解れ、落ち着いた気持ちになれたのだ。 雄斗が目覚めると枕元にリュウが立っていた。 「おい!仕事は?」 「終わったよ。もう、6時すぎだぜ?雄斗……仕事なんかしなかったんじゃないか?」 竜斗が苦笑する。それにつられて雄斗もにやりと微笑んだ。 「うん、エネルギー充電200%だ!」 |