|
試される運命15 |
|
雄斗が目覚めるとそこは見覚えのない部屋だった。何時の間にここに来たのか?ぼんやりと顔を左右にまわす。そうだ昨日は……一気に昨日の記憶が舞い戻ってくる。知りたくもなかった自分の出生の秘密を 無理矢理聞かされた夜だった。何か証拠を健吾に突き付けられたわけではない。長い間の親に対する違和感が こんな形ではっきりと目の前に突き付けられ、それを潜在意識の中ですでに事実として認めていたのは誰でもない自分だった。 「職場に電話するか?」 「どうしてですか?」 「休むだろう?」 「いえ、行きますよ。仕事をためるのは嫌なんです」 「仕事をためるタイプに見えないがな」 「仕事はできる奴のところにまわってくるんです。だからいつも限界まで仕事を抱えてますよ」 「休めよ」 「嫌です……」 「真野綾香が来る事になってる」 雄斗は絶句した。昨日の今日で会うような気持ちの余裕なんかない。 「嫌だ……」 「もう近くまで来てるさ。一緒に朝食をとろう」 雄斗がその台詞で立上がった時、いきなり玄関のベルが鳴った。チャイムではなくベルだ!雄斗はまた、びくっとする。 「 怖がらなくていいさ、俺がいる」 健吾なんかいてもらったって、なんの助けにもなりはしない。助け?俺は今、誰かに助けて欲しいのだろうか?だとしたら誰に?竜斗にか?いや、それも違う。 部屋に入ってきたのは思ったよりずっと小柄な女性だった。テレビでみるとあんなに大きく見えるのに、多分150cmそこそこだろう 「雄斗……」彼女の口から自分の名前が出てくる不思議……これは現実なのか? 雄斗の息は荒くなり脂汗まで浮かんでくる。 「ユウ…雄斗……大人になったのね。最後に見たのは中学の時だから……」 「俺は会った事ないです……」 雄斗はかろうじて声をあげる。 「あなたにお会いするのは初めてだ」 「そうね……」真野綾香……母はことのほか優しく微笑む。 「いつも、陰からしか見られなかったんですもの」 そういって雄斗の髪を優しく梳いた。 「くせッ毛なのね。あの人と同じ」 「あの人って?」 雄斗の直感は警鐘を鳴らす。それを聞いてはいけないと。だがすでにこぼれちゃったミルクは返らない。 「羽鷲さんよ……聞いてなかった?あなたは羽鷲グループの血を受け継いでいるの」 全身の血の気が引いてゆく。 完全に相手のフィ−ルドで戦わされている……そんな歯がゆさが雄斗を襲う。 今まで、自分が養子だなんて思ってもいなかったから、真野に対してなんの感情もないが……。 それでも、この状況は不利だ。空手の試合中だってこんな脂汗をかいた事はなかった。 |