KARATE4

試される運命12


 真野綾香……あの感じの悪い女優が自分の母親だったなんて。

 戸籍上の叔母である事さえ知らなかった。だれも今まで言わなかったから……。

 いったい自分は何者なんだろう?

 今まで一度だって両親に恨みを抱いた事は一度もなかったが、互いに執着めいた気持ちを抱いた事がなかった。

 それは自分や、親が親子関係に淡白なだけだと思っていたけれど、彼等が本当の両親じゃないとしたら それは、まったく違った意味合いになってくる。

 雄斗が自分自身を無くしかけていた頃、健吾はすでに雄斗の最後の下着に手をかけていた。

 下着の上からそっとなぞる。雄斗は全く抵抗しなかった。

 「いいのか?」

 「……何が……」

 「そんなに……ショックだったんだな……悪かった、こういうことは薄々感じていたんじゃないかと 思っていたんだ」

 「別に……」

 健吾は雄斗の下着の上から弄っていたものが全く反応しないことを確認すると そっと雄斗の上に毛布をかけた。

 「やめた、やめた!反応のない人形を抱いてもつまらない……」

 そしてそっと雄斗の唇にキスをする。

 「どうして抵抗しないんだ?」

 「……抵抗?……」

 そこで健吾は大きくため息をついた。

 「……抵抗しろよ……」

 「あぁ……」

 「いいのか?このまま先に進んでも?最後までやっちまうぞ」

 「ん……」

 「惚れちまいそうだな……そうやって竜斗も誘惑したんだろう?」

 「え?」

 やっと雄斗が覚醒しかけたような顔になった。

 「竜斗は男なんか興味もなかったはずだ、お前だったから落ちたんだろう? お前だったから男でも抵抗がなかったんだろう」

 煽るような健吾の言葉も雄斗の心を打たなかった。

 「やれよ……別に今まで何度もこんな事はあったんだから、こんな事その中のひとつでしかないさ」

 「いや、今はやらない……やらない方がお前の心に残りそうだから……」

 「やられそうになってやらなかった経験だってゴマンとあるさ、俺にとっちゃ何の意味もない」

 「違うね」

 「何が違う?」

 「お前が抵抗してやられなかったのと、いつでもできる状態のお前の据え膳を食わないっていうのは 全く違う」

 「そうかな?」

 「そうだよ。こんなに意志の強い男はいなかったはずだ?竜斗だって結局お前の据え膳を食っちまったんだろう?」

 痛いところをつかれた雄斗がぐっと健吾を睨み付けた。

 「そうだ、その顔の方がずっと可愛いぞ……気の強いお前を……プライドの高いお前を 俺の思う通りにしてやりたくなるね」

 「くっだらないこというな」

 「竜斗はお前の光の当たる部分を愛しているんだ、お前の愛らしさや男らしさだ」

 「……」

 「俺ならお前の陰の部分も引受けてやれるぜ?」

 「いらない……」

 「どうして?楽になりたく無いのか?」

 「俺はただ竜が好きなんだ、お前じゃない」

 「それならなおさらだ、綿々と続く羽鷲家の総領息子が男と暮らしていいはずがない。 まして竜斗はゲイじゃない!アイツが本当に好きなら竜斗を巻き込むな」

 雄斗はそのまま頭から毛布の中にくるまった。 肩が細かく震えている。健吾は毛布の上からそっと包み込むように雄斗を抱き締めた。

 「楽になれよ……楽になっていいんだ。いつだって泣いていい……」

 健吾の囁きに雄斗は否定も肯定もせず、ただ身体を小さくしていた。


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