KARATE4

試される運命11


 諦めて瞳を閉じたのに当然降ってくると待ち構えた唇がいつまでたっても降りて来ない。雄斗はそっと瞳を開ける。

 健吾はじっと雄斗を見つめていた。

 「名前はなんていうんだ」

 そういってそっと頬に自分の頬を当てる。

 「名前なんか関係ないだろ?第一知ってるくせに……」

 この竜斗にどこか雰囲気の似た男……健吾はいったい何をかんがえているのか? 雄斗は今の状況がさっぱり掴めない。経験した事のない感じが雄斗を酷く心もとない気にさせる。

 「聞いたが忘れた。お前の口から聞きたいな」

 ふっと笑った健吾の冷たい微笑に雄斗はなぜか背筋がぞっとした。

 「……お前の目的はなんだ?」

 雄斗は後ろの首筋をくすぐる指を嫌がって首を振りながら腕を突っぱねて健吾との距離を取ろうとする。 その雄斗の腕を無理矢理払うと健吾はきつく抱き締めた。

 「半分はお前の想像してる通りだよ。竜斗はワシバネの実権に興味なんてないんだ。だから 俺に譲ってくれていいはずだ。それにお前……」

 「俺がなんだ!」

 そこでホテルの地下パーキングに車が到着すると部屋に直行する私用エレベーターに乗り込む。

 「お前の顔に見覚えがあってね。ちょっと調べさせてもらったよ。お前の母親は本当の母親じゃ無いようだな?」

 雄斗は驚いた。何を言ってるんだ?この男は?茫然自失としてる雄斗はすっかり健吾のペースに巻き込まれたまま、部屋の中に招き入れられていた。

 「変な言い掛かりをつけるな。俺の母親が母親じゃ無いはずないだろう?」

 「そうだな、お前の育ての母親はお前に良く似てるはずだ。叔母なんだからな」

 「おば?」

 「そうだ、お前の母親の姉だよ。真野綾香って名前に覚えはないか?」

 「真野綾香?」

 「あぁ、結構有名な女優だよ。お前はその真野綾香が産んだ子だ。どうりで真野綾香とお前が良く似てると思ったよ」

 雄斗は全身の血が一気に引いていくのを感じた。まさか?そんなバカなことが?

 「嘘だ……」

 そういいながら雄斗の頭はぐるぐるとまわっていた。立っているのがやっとの状態の雄斗を健吾はそっと肩を抱きながらベッドルームに連れ込む。

 母親に冷たくされた記憶はなかったが、確かに幼い頃から雄斗は特に愛情を注がれたという記憶もなかった。どちらかというと祖父母の方が自分を慈しんでくれた気がする。今まで殆ど音信不通だって連絡は年賀状の1枚がくるくらいで両親は長く一人暮らしをしていた雄斗に電話の一本もかけてきたことがない。

 今までは両親が忙しいのだと自分を納得させていたが、心の片隅で淡白な両親に淋しい気持ちを抱いた事もあった。

 だからこそ、嘘だという気持ちと本当かもしれないという気持ちが激しく交錯した。

 「だ、だって謄本にも抄本にも養子なんて書いてなかった……」

 「あぁ、調べるのに苦労したよ。金も相当使った。どうやら、真野綾香は誰にも知られたくない男の落とし種を宿したらしい、だから姉の保険証を使って子供を産みそのまま姉夫婦の籍に入れたんだ。お前の戸籍上の両親は子供ができない身体だったらしいからな」

 そういいながらゆっくりと雄斗の身体を弄りながら服を脱がせてゆく。

 雄斗は出生のあまり衝撃で抵抗するのも忘れていた。


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