曇りガラスの向こうに降る雪は 番外



 湊が渡米してから初めてのハロウィン。

 あちこちでハロウィンの飾り付けがされ、玄関前に こちら特有の黄色いカボチャで作ったジャコランタンが それぞれを主張しながら鎮座している。

 「どういったお祭りなんだっけ?」

 湊が浩輔に尋ねると、面倒そうに答える。

 「収穫祭みたいな感じだったかな?」

 月末は普段でも忙しい浩輔の仕事がつまっているのだ。何かと時間に余裕のある湊をなかなかかまってやれなかった。

 「お盆みたいな感じだって聞いたけど?」

 「あぁ、そうだったかな……」

 「……何かお仕事手伝える?」

 「いや、いい」

 そういうと浩輔は振り向きもしなかった。

 忙しいのは解ってる。話しかけてもただ邪魔にしかならない自分が不甲斐無い。

 浩輔がいい顔をしないのは解っていたが、湊は浩輔に何も言わずにそっと外に出た。

 31日当日、NYでは子供だけで無く大人までが仮装してその辺りを闊歩している。せっかくみんながハロウィンを楽しんでいるのだ。

 せめて、浩輔にそれらしい食事でも作って手伝ってやりたい。

 パンプキンパイとかって難しいのかな?

 女の格好はした事があっても、家庭的な事なんか全くできない湊だった。そういう面でいけば浩輔の方が余程上手なのだ。

 取りあえず、本屋に寄ってレシピをみたが、なんだかさっぱりわからない。

 4分の1カップ?どうやって4分の1を量るんだ?

 それ専用のカップが存在する事も知らず、そのカップが日本の1カップと分量が違うという知識も湊にはなかった。

 当然すべて目分量、その豪快さたるや、まさに男の料理である。

 結論からいうと湊のパンプキンパイは残念ながら大失敗だった。

 浩輔はにこにこして食べていたが湊はひとくち食べて口に入れた事すら後悔した。

 こんな激不味な物を浩輔が最後まで食べたなんて信じられない。

 「ごめん……」

 「え?何が?」

 「……浩輔にこんなものを食わして……」

 「ばかだな……最初から上手な奴なんていないよ。湊が作ってくれると思うとなんでもうまいよ」

 浩輔は片頬でにやりと「まさに俺達は新婚そのものだよな?」と笑う。

 「な、なんだよ……」

 湊は真っ赤になった。

 「そりゃ、新婚さんが夜にやることっていったらさ」

 浩輔はそれはもう、上機嫌である。そこにいきなりチャイムが鳴った。

 どうやら、同じマンションの子供達が訪ねて来たらしい。

 「TRICK or TREAT!!!」

 すっかりその気になっていた浩輔を尻目に湊はキャンディがつまった袋を 持って立ち上がった。

 『まぁ、いい。夜は長い』


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