思い出を忘れたくて番外



 「充くん〜ちょっと手伝って!」

 お母さんの明るい声が台所からこだまする。

 助かった……危なく夕方からエッチに持ち込まれるところだったのだ。

 お母さん!ナイス!

 俺の上にのしかかっていた沢田はちっと舌打ちしながらも別人の様に 「はい!」と元気よく返事をしている。

 俺の強引な恋人沢田充は、なぜか俺の知らないうちに母子家庭の俺ん家に下宿している。

 確かに家は死んだお父さんが残してくれた3階建ての2人にしては広すぎる家があるけどさ。 沢田の奴、すっかり俺なんか蚊屋の外で俺の母親と意気投合して仲良く夕御飯を作ったり買い物したり。 俺はといえば、情けねー事に玄関と風呂の掃除を任されてるだけ。

 全く沢田ときたら、悔しいけど何をやらせてもそつが無いんだ。 あ〜あ、俺もこんな男に生まれたかった。

 男前で頭も良くて、スポーツはもちろん、たとえば家事一切、楽器だの習字だの本当になんでもできる。俺がこいつよりましなのといったら、デッサンをすることくらい。それだって沢田はそこそこ絵も描けるのだ。

 それに気がついたらいつの間にか俺のお母さんに取り入って俺の家庭教師兼、ボディガードという事になってる。

 本音を言わせてもらえば、俺としては沢田から俺をガードしてくれる奴を頼みたいところだ。

 そして今日は沢田の実家からでかい蟹と鮭が届いたのである。 もちろん、沢田はあっという間に魚を捌いて切り身にし、腹に入っていた魚卵はイクラの醤油づけにし、 蟹は蟹飯と蟹甲羅あげを作って俺達をびっくりさせた。

 もう、お母さんなんて感激してうるうる状態である。

 「頼りになる男の子がいるっていいわ〜」

 どうせ、俺は頼りにならないよ……

 俺なんか、「ほら、ゴミでも捨てておいて」なんて言われてしまった。

 沢田のやつ、俺の言う事はちっとも聞いてくれないのに、お母さんの言う事はもう、 なんでも嫌な顔しないで聞いてしまうのだ。

 でも、それって本気で勘弁して欲しい。

 そんな事があった夜は『お前の為にしてやった』などといわれて散々な目に合わされるのは俺なのだ。

 や……正直いうと俺だって男だ。エッチは決して嫌いじゃ無い。

 でも、物事には限度というものがある。

 こいつの絶倫さときたら、もう文才のない俺だってエロ小説が書けてしまうほどなのだ。

 自慢じゃ無いが俺も前にエロ本は読んだ事があった。もちろん、本の中の話を鵜呑みにするほど バカじゃ無い。でも沢田ときたら、本の中の絶倫男も負けない程なんだよなぁ。まさにアンビリーバボーなのである。

 3回なんてごくふつう……最高で7回いや、8回だったかな。 とにかく朝まで俺はひーひー言わされてる。

 それに実際どこで経験したのか妙にうまい。悔しいくらい慣れてる。若いくせにすごいテクの持ち主なのだ。

 俺なんか数回でところてんとかいう高等な技を経験させられてしまって……あぁ…… 沢田と知り合わなきゃ、知らない言葉だったよ。(号泣)

 昨日は近所の子供会のハロウィンの手伝いで沢田のやつ、ゴジラのぬいぐるみを着せられていた。 さぞかし体力を消耗しただろうと思っていたのに、あいつ今朝は明るくなるまでやりやがった。

 な、なんと朝、起きたらアイツがまだ、俺の中に入っていたのだ。俺は半分意識を失っていたのに、 ずっとやっていたんだな……俺のあそこが感覚がなくなったらいったいどうしてくれるんだ!

 俺は泣きたくなった。いいかげんにしろ!

 沢田がいない間に俺は本屋にでも行こうとそうっと玄関に向かう。 それなのに、いつの間にかエプロンをつけた沢田が仁王立ちしている。

 「誰のためにこんな事やってると思ってるんだ?家事は碌に出来ないんだから せめて今だけでもこの前出した宿題をやっておけ!」

 俺が半べそ状態で悔しがっていると「沢田君!やっぱり頼りになるわ」お母さんが嬉しそうに台所から覗いている。

 おかあさん、俺は人身御供ですか?いったい誰に助けを求めたらいいんだ?

 うまそうな蟹甲羅揚げの匂いに腹を鳴らせながら、俺はとぼとぼと部屋に向かう。 ハロウィンのお化けなんか可愛いもんだ!

 俺は、俺は夜が怖い!


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