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Now I'm here 2-16 |
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「沙羅……無事なんだね?」 少しだけ息を切らせて真珠が二人の元に現れた。 「真珠さまもよくぞ御無事で」 その声にやっと石榴も自分の置かれている現実に戻ってきて、慌てて荷物で身体を隠して唇を噛んだ。 「石榴も……無事でよかった」 「無事なものか……このままお前達二人で藍の大地へ帰るといい」 そんな石榴に真珠は大きくため息をつく。 「石榴……非常事態なんだから、ゆっくり感傷に浸ってる時間や拗ねてる時間なんかないよ」 沙羅は柔らかく微笑んで石榴にそっと手を差し伸べた。 「さぁ、石榴、あまり新しいとは言えないけれど、備蓄用の毛布がありましたからこれに包まって」 だが、石榴は差し出された沙羅の手を撥ね除ける。 「いらない…真珠にやればいい」 相変わらず拗ねたままの石榴に真珠と沙羅は顔を見合わせた。 ふっと沙羅から表情が消えたかと思うと思いっきり背中を掴んで石榴の鳩尾に膝けりを入れる。 あっけなく石榴が倒れるとその肩に軽々と担ぎ上げ「真珠さま…」と真珠を促して近くの備蓄庫に向った。その中で何台かある流線形の形をした宇宙船を見つけるとすぐに内部をチェックした。 「どう?動かせる?」 「動力とエネルギーは入っています。動かし方は不明ですが、なんとかやってみましょう。追っ手が来る前に」 沙羅が石榴を船内のソファにそっと寝かすと、真珠は少しだけ落ち着かなくなった。 「追っ手が来てるな。迷っている猶予はない。石榴のエナジーが使えないのは痛手だけれど、僕がなんとかこの星の重力の影響が出ないところまで、ワープさせてみる。その後の追っ手は沙羅にまかせる」 そういいながらゆっくりと両手を重ね淡い黄色の光の玉を作り出す。 そのまま動力部に作り出したエナジーを移動させると少しだけ宙に浮き上がって祈るように 瞳を閉じた。 船は一瞬金色に輝いたが次の瞬間にすっと跡形もなくその場から消え去った。
そこは深淵の宇宙空間……いくつもの星雲が瞬き、恒星が煌めく。
引き込まれそうなほど、寒く孤独な場所。 魔力を使い過ぎて気を失った真珠とすやすやと眠る石榴の寝息を背中に聞きながら 沙羅はとてつもない孤独に襲われた。 ここはいったいどこなのか? サフィア達の星から、そして故里の双児星からどのくらい離れているというのだろう? 追っ手に追われ無我夢中で船を探してサフィア達の星を脱出したのはいいが、まさに五里霧中 背中から寒さが襲ってきてこのまま凍り付いてしまいそうだった。 いったい、自分達はどうなってしまうのか? それより自分達の帰還を誰かが待っていてくれるのかも分からない。 もし、真珠を送り届ける事ができてもその後は? 自分が勢いで石榴をサフィアの元から無理に連れ出してはみたものの。それが本当に石榴の為によかったのだろうか? 石榴は自分の身を挺してまで自分を庇おうとしてくれたのに。 今まで自分の人生がどれほどの困難に見舞われようとこれほどまでに、恐怖を感じた事はない。 それはやはり、石榴という存在を自分の中に入れてしまったからなのだ。 自分より祖国よりも大切なもの……石榴。 これほどまでに愛おしいものを手に入れてしまえば人というものはこんなにも弱くなってしまうものなのか。 「石榴……貴方を失い、あなたを不幸にするのが怖い……」 そういってそっと石榴に口付けた。 眠り姫のように沙羅のキスでゆっくりと石榴は目覚めた。 「沙羅……本当に沙羅?」 「無我夢中であなたをここまで連れてきてしまったけれど」 そう言ってから、不甲斐無い己を慮って沙羅は唇を噛んだ。 「それだけで本望だ。あのまま生きた屍でいるよりは、一瞬だってお前といられる方がいい」 夢現の狭間を彷徨っているかのように石榴が甘く囁く。 「このまま、あなたをこの冷たい星に囲まれて死なせたくはない」 「真珠は?」 「彼、なんとかサフィアの星からここまでワープさせてくれたけれど、力つきて 気を失っています」 石榴は長い髪を後ろに追いやりながら、「寝てると可愛いのに」と呟いた。 「石榴は起きていても可愛いじゃないですか?」 そういった沙羅に石榴は答えもしなかった。不安な気持ちを押しやりながら、沙羅は微笑みながら器用に石榴の髪を結い上げてゆく。 「結い上げると女みたいじゃないか?」 石榴はそういって拗ねたように言ってはみたものの沙羅からの反応がすぐに返ってこないので 思わず石榴の髪を撫でている沙羅を見上げた。 沙羅は何か物思いに耽っている。 「沙羅……どうした」 「あ、すいません。せっかくあなたを連れ出しておきながら、しかもここまで真珠様の力で脱出できたのに 何もできない自分が不甲斐無いのです」 「帰り道がわからないのか?」 「忝ない。それどころか、ここがどこなのかもわかりません。追っ手が怖いので盲滅法にテレパシーを送る事も叶わない」 そういって沙羅は頭をかかえた。石榴は無言でモニターのスイッチを入れ動力を確認する。 「藍の世界では、なんでも魔力で解決しようとする。少しは機器を利用したらどうだ」 「石榴……」 きつい言葉の割には、なんとか手立てを探そうと、真剣な表情であちこちを触っているそんな 石榴を見ているうちに沙羅は胸の奥から暖かいものが溢れてくる。 「あ、動力が入ったから、魔力を使わなくても、生命維持装置やバリアもすぐに復旧できそうだぞ」 モニターから夢中になって目を離さない石榴の肩に沙羅はそっと唇を寄せた。 「ん、何をする!」 「やっと今頃、貴方を私の元に取り戻せた実感が湧いてきて」 「このまま無事とは、限らないんだぞ。思いのほか、遠くに飛ばされたらしい。マップ機能も働かないし、 近くにランドマークになる特徴的な星もない」 「つまり、あの「災い」を破壊した直後よりは、ましな状況というわけですよね」 そう言いつつ、ゆっくりと石榴の頬を撫で上げる。 「おい!そんな暇があったら、倉庫か何かを探して水と食料を捜せ。腹が減ってイライラする」 そんな石榴の腰を引き寄せると、「何よりあなたが食べたい」と沙羅が甘く囁いた。 胸元に入れられた手を押し合い、キスを繰り返す二人に、真珠はやっと目覚めじっと二人を見つめていた。 「し、真珠が起き…た……?」 真珠は少しだけ寂しそうに俯くとぽつりと呟く。 「僕も瀧海に会いたい」 二人は顔を見合わせて、思わず「会えるさ」と、はもる。 それを横目で恨みがましそうに見ながら再び「瀧海に、翡翠にも会いたい」というと瞳が潤んでいく。 「真珠……」 「会いたい……僕も会いたい……」 誰に聞かせるでもなく何度も真珠は言いつのった。 「真珠……」 沙羅と石榴はかける言葉がなくて、ただ顔を見合わせる。 「あ……」 真珠が徐に立上がってスクリーンの前に駆け寄った。そのまま動きが一瞬とまり、何かに捕われたように船室の前のスクリーンに見入ったまま動かなくなる。 「どうかなさいましたか?」 そう言った沙羅の声も聞こえぬように真珠は、深淵の宇宙空間が映し出されたスクリーンを見入っている。 「真珠様?」 「真珠……?」 やっと二人の声に気がついて真珠は二人を振り返る。 「瀧海だ」 「え?」 「瀧海が僕を探してるんだ。僕にはわかる」 二人は真珠の言ってる事を理解できずに再び顔を見合わせた。 「大丈夫か?」 「真珠様、しっかりなさってください」 真珠はふわっと二人に微笑みかける。 「分からないの?あの七色に輝く発光体の欠片。あれは僕らの星の卵の殻だよ」 「卵の殻?」 「そう、特別な光を放ってるんだ。親と離れた時、卵が自分の存在を探してもらえるように。 それが、ずっと連なって一方方向に向ってる。虹の光の糸のように」 真珠がそこまで言って初めて二人の顔に笑顔が戻った。 「じゃあ、これを辿れば帰れるんだな」 「確かに私達、藍の大地の者たちににしか光は反応しないから、 他の者が気付く事はない」 3人はがっちりと肩を叩いて喜びあった。 そして真珠と石榴のエナジーを動力に再び船はワープ(瞬間空間移動) の体勢に入っていった。。
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