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Now I'm here 2-15 |
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沙羅との愛の行為に石榴は今まで感じた事がないほどに強い快感に溺れてゆく。 「あ、あぁ……沙羅……うん、んんっ…うぅっ」 「もう、石榴をこの手に抱ける日が来ないかと思っていた……」 そういって沙羅が愛おしそうに甘く囁く。 「この匂いも手触りもそしてあなたの身体に僕の種を注ぐのもすべて僕だ、 僕を信じてこのまま感じていいんだ」 沙羅がそういいながらゆっくりと抽送を繰り返し自分の腕の中で歓ぶ愛おしい人に 熱い飛沫を注ぎ込んだ時、石榴はちいさく呻いてそのまま意識を失った。
★☆★
いきなり大型スクリーンが真っ暗になり真珠は慌てて顔を上げた。 「虫に気がついたか。顔が見られないのは興醒めだが仕方ない」 それでも満足そうに腰を動かしていたが 突然びくりとしたように不自然に動きを止めた。 サフィアはまるですぐ近くに敵でもいるかのようにぴりぴりと警戒している。 しだいにその表情が険しくなって眉間に深い皺が刻まれた。 「どういうことだ……」 誰にいうでもなく自問するようにサフィアは低く呻いた。 「まさか、あいつも一緒に中に入り込んでいるのか?」 そう、金属の二つの球体の内部は石榴の内部と連動する動きをし、 そしてそれがそのまま石榴に繋がる仕組みになっていた。 それなのに、全く石榴の中はサフィアと連動せず、独自に動き始めている。 これが、きっと沙羅の動きなのだ。石榴と沙羅が二人だけで感じあっている。 完全にサフィアは蚊屋の外に置かれた形となった。 所詮、彼が感じてるのは、石榴の身体を模したものでしかない……すでに熱く混ざりあった 沙羅と石榴の間には何者も入る余地などなかった。 それに気がつかされてサフィアはカッとなった。 二人の動きが重なって愛おしそうに互いを慈しむ様が直接サフィアに伝わってくる。 「たばかりおって…許さぬ」 サフィアは二つの球体が合体した金属から自らを引き抜くと思いっきりスクリーンに投げ付けた。 「許さぬ……私のグレナを……」 先ほど真珠がエナジーを注ぎ込んだとはいえ、本調子ではなかったサフィアは勢いあまってそのままそこに 倒れこんだ。 小さく肩を震わせ両肩を抱くようにして丸くなっている。 「あなたのグレナではない。グレナはサラのものです。諦めなければ」 「だまれ、だまれ、だまれ」 そういって振り向いたサフィアはその顔を歪めながら瞳には涙をいっぱいに溜めていた。 真珠はそんな傷ついたサフィアを憎む事ができず、逆に愛おしいという気持ちになる。 「どうして、懐いてもいない者を諦めようとしないのです」 「はっ、なぜ、私が自分のモノを諦めねばならないのだ」 真珠から顔を背けたままサフィアは苦々しく毒づいた。 「だからあなたは苦しいのです。彼に愛される事はないと知っているから」 はっとしたように、真珠の顔を見つめてからすっと顎を肩に寄せるように俯いた。 「黙れ、お前に私の気持ちなどわかるまい」 微かに震える声。 「えぇ、わかりません。あなたが僕の気持ちがわからないと同じように。だけど僕には 思い出す事ができる。自分の愛した人が自分を選ばなかった時の苦しみと悲しみと絶望を」 「適当な事をいって慰めようとしてくれなくて結構だ」 そのままサフィアは横たわりそっと瞳を閉じる。 「あまりに身近になりすぎてその大切さを忘れてしまったものもあるのです。 私はここにやってきて、それがもう二度と私の手に戻らないかもしれないと知り そこまでして初めて思い出す事ができたけれど」 そっと伸ばされた真珠の手を邪険に振払う。 「大丈夫だ。私はお前に何の感慨もない。きちんと帰してやろう。それでお前は再び 平穏を取り戻せるだろう」 そういったサフィアの声は消え入りそうに弱々しい。 「ありがとうございます。あなたも今よりもずっと平穏な未来が訪れますように……。」 「それはエマラウドの事をいっているのか?あいつはただの幼馴染みだ」 「いいえ、あなたに平穏な未来を約束してくれるのは、沙羅と国に帰った姫。彼女の子はあなたの子です」 思いっきりよく身体を起こしたサフィアは、大きな瞳をそれ以上に開けられないというほどに大きく開いている。 「まさか……」 「本当です。彼女はあなたの心が石榴にあると知って黙って身を引かれた。 御会いになっていただけませんか?」 なぜか、サフィアの顔が僅かだけ色付いた。 「だが、彼女は……」 「まず、御会いになったら?そしてお子さまのお顔を御覧になれば気持ちも少しは解けましょう」 サフィアはまるで何かを探しているような落ち着きのない素振りで瞳を泳がせた。 「だが、グレナを知ってしまえば、彼女に恋などできぬ」 「恋心は無くとも子供や妻を慈しむ事はできる。慈しみから恋は生まれなくても愛は生まれます」 サフィアは声を出して呻くように泣き崩れた。 彼も辛く苦しかったのだろうと思うと真珠もひとすじの雫が頬を滑り落ちた。 ★☆★
久しぶりに沙羅と石榴は一つに溶け合った。 熱い余韻の中、石榴は気弱に呟いた。 「このまま、溶けてしまいたい」 沙羅が石榴の顎を掴んでゆっくりと唇を落とす。 「今はこれ以上、私を誘惑しないで。藍の大地に帰ったら毎日溶け合うことができるのだから」 空ろな瞳のまま、石榴は呟いた。 「そんな夢のような事……」 「諦めてはいけません。こちらに向う真珠様の気を感じるのです。あなたのこんな魅惑的な姿を たとえ、真珠にだって見せたくはない。支度を整えましょう」 呆然としてけだるい雰囲気の石榴の支度を手早く手伝いながら、沙羅はその漆黒の瞳を眇めて 遥か彼方を窺っていた。
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