真珠丸は快楽に溺れそうになる自分の身体を無理に言い聞かせ、瀧海から身体を引き剥がそうとする。
「離せ」
「離す訳にはいかぬ」
瀧海は真珠丸の必死に逃れようと身を捩る様子を珍しいものでも観るように興味深げに見つめている。
その余裕のある様子に真珠丸は無性に腹が立った。
「私にこのような無体を働いて、お前の国が無事であると思うな」
そういって、瀧海を振り解こうとするが、彼はぴくりとも動かない。
それどころか、その手はゆっくりと味わうように下に降りていく。
「もう、お前は『藍の大地の真珠』の皇太子ではない。
それどころかお前はもう、真珠国に戻る事もないであろう」
真珠丸を見つめる瀧海の瞳は優しげで、自分に起こったすべての事に不安を感じていた
真珠丸は瀧海に縋ってしまいそうになる自分を必死に奮い立たせた。
「ふ、ふざけるな。この真珠以外、誰が真珠国の皇太子になれるというのか?」
そういって精一杯の憎しみを込めて睨み付ける
「たしかにそうだな、少し前までなら真珠国の皇太子はお前だけだった。
だがな、今は違う」
何か、自分の知らない事を瀧海は知っている真珠丸はそう確信していたが、どうしても
瀧海の余裕のある笑みを見つめていると無性に腹が立つ自分を押さえる事が出来ない。
「何をいってるのか、さっぱり解らぬ。」
「本当は極秘事項だから、本来なら話す訳にはいかないが
お前は『春龍の滝』の皇太子を産む私の后になるのだから、特別に教えてやろう」
そういって瀧海はまた、真珠丸に口付けようとそっと顎に手をかける。
それを真珠丸は慌てて振り解いた。
「き、后だって?ばかじゃないのか?何を血迷っているのだ、そんな話を聞くのも穢らわしい。」
それから聞かされるであろう話しがただならぬものであると思うと、真珠丸は知らずに震えて、
奥歯がかちかち鳴り出した。
「これだから、お前は愚かだと言うのだ。そこが可愛い所でもあるがな」
瀧海は震える真珠丸を眼を細めて楽しみながら、そっと小鳥を抱くように柔らかく
真珠丸を抱き締めてそっと背中を撫でた。
「うるさい、いいから、離せったら」
「なぜ、一国の元皇太子であるお前が簡単に掴まってしかも、今の今迄誰も助けに来ないのか、
お前は不思議に思わないのか?」 「どういう意味だ」
「お前を私の手許に寄越すようにしたのは、誰あろう、真珠国の御后様だぞ?」
真珠丸は真っ青になる。なぜ、母上がこんな恐ろしげな男に自分を託すのだ?
確かに疎まれていると感じていたが、ここまでされる訳はない。
「うそをつくな。血の繋がった母上がそんな事をなさるはずはない」
「たしかに真珠丸、お前は現王と后の間の子だ。だが、いずれ近いうちにお前の真珠国は亡くなり
瑠璃国となる。つまり瑠璃丸が皇太子だ」
なぜ、こんな辺境の見ず知らずの皇太子がそんな事をいいだすのか?
「ありえない。私がそんな妄言に騙されるものか」
瀧海は真珠丸には答えずに銀色の筒のようなものをポケットから取り出した。
それは、何か金属で出来ているのはわかったが、始めてみる代物だった。
「これを観て御覧」
そこから、仄かな光がゆらゆらと洩れ、小さな人の様なものがその筒の上に立体的に浮かんで見えた。
「なんだ、これ.....」
好奇心から思わず、真珠丸はそれを手にとった。
「そうだ、これはホノグラムというものだ。観た事はないのか?ほら、1年前のお前が映っているよ。
可愛いだろう。これを観ていたからお前とあの時あっても初めてと言う感じがしなかった。
実はこの画像は皇后からいただいたものだ。お前と他の者を区別するためにな。
正直いうと私は女性がだめなんだ。お前を后に取らねばならぬと父王に最初に聞いた時、私は種馬では無いと正直腹がたったが....。」
瀧海はどこか遠くを見つめるようにしてから、真珠丸を観て悪戯っぽく笑ってみせる。
「今からでも遅くはない。私を后にしようなどという愚かな考えはやめるといい、そして私を国に返してくれ」
「話しは最後まで聞くものだ。お前は女でもあるが男でもある...。そうだな?」
「違う、私は男だ、生まれた時から死ぬまで男として暮らす、そのように育てられてきたのだ」
「残念ながら今はもうお前を国に返すのは無理だ。それに私は女にあまり魅力を感じないからこそ、お前が必要なのだ。お前の男の部分も勿論残しておいてやろう、しかし、お前は私の子を産むのだよ。身籠る迄はここからは出す事はできない。」
瀧海の瞳は優しかったが、その腕は信じられない程力強く、真珠丸を抱き締めた。
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