|
Now I'm here 2-5 |
|
それから数日が過ぎてもグレナは生ける屍のようにベッドから起き上がろうともせず、 一言の言葉すら発しようともせず、点滴だけで生き長らえていた。 サフィアがどれほど優しく愛しても、それどころか嫉妬にかられて乱暴に愛してもどこか遠くを虚ろに見つめ生きる関心を失っていくようにみえた。 グレナの心がそのままあの時間からサラに持去れてしまったようだった。 「グレナ……愛しているよ」 どれほど心を込め何度甘く囁こうとその言葉は もう決してグレナに届く事はない サフィアもそれは確信していた。グレナはもう二度とサフィアに心を開くことはないだろう。 嫌いな者にどれ程愛情を注がれても鬱陶しいだけだ。 たとえサラが二度とグレナに会うことがないにしても。 実際、抵抗もしなければ何の反応も示さないグレナに無理に身体を開かせることが 最近は辛くなってきていたサフィアだった。 グレナが心をどこかに置き忘れ、どんな物にも関心を示さず 時折ため息をついて窓の外を切なそうに見遣るその感情の無くなった美しい横顔をサフィアもやはり切ない気持ちで飽きる事無く何時間も見つめていた。 ただ、過去にとらわれ、現在の自分の存在をただ諦めて生きながらえているだけのグレナを見ている事に胸を締め付けられてしまうのは、はやり本気でグレナに心を絡め取られてしまったからだろう。 サフィアはグレナとともに日がな時間の許す限り一日を寝所で過ごすようになっていた。 だが、最近は体調の悪そうなグレナを気遣って頭や身体をそっと撫でたりタオルで拭いたりはしても 数週間以上もグレナの身体を求める事を躊躇っていたのだ。 そんな傷心のサフィアのもとに、唯一の竹馬の友とも呼ぶべきエマラウドが訪ねてきたのはそれからニヶ月ほど経ってからだった。 寝所にはいるなりエマラウドは、大袈裟すぎる程に大声で叫んだ。 「なんだ、この空気は?なぜこんな辛気くさいところに二人で隠っているのだ? 実はな、すごいニュースがあるんだ」 サフィアは鬱陶しいというようにそっぽを向いた。 「ニュースなど関心はない……」 自暴自棄なサフィアの心を見透かすように、エマラウドはそっとサフィアの肩に手を置いた。 「そうかな?実は前に征服しようとして船の制御がうまく出来なかった為に 失敗した双児星があっただろう?グレナはその近くを彷徨っていた船の中で発見されたのだよな?」 殆ど何にも反応しないグレナがぴくりと動いたのをみて、サフィアは思わず唇を噛む。 「そんな事はどうでもよい」 「その星からコンタクトがきているぞ。沙羅と石榴を帰還させて欲しいといってるが、それって グレナと最近ぺリド姫と婚約を交わしたサラ公爵の事じゃないか?」 エマラウドがそこまで話すと惚けた人形のようだったグレナがすっと顔を上げた。 「グレナ殿、真珠という者を知っているか?勇気のある青年だ。なんと危険も顧みず、 単身この星にやってきて沙羅と石榴の消息を教えて欲しいと我が国の門を叩いたのだ」 「し、真珠が……」 すっと顔色に紅がさす。サフィアは本当に久しぶりにグレナの声を聞いた。 「ならん、会わせる訳にはいかない!」 むきになっているサフィアをエマラウドの腕をぐっと引き寄せた。 「やれやれ、しっと深い夫は嫌われるぞ、サフィア!もう少しグレナに寛容になれないものか? このままならお前もグレナもこの寝室で爛れた生活をして朽ち果てるだけだ」 「どうせ、おれはまだグレナの夫なんかじゃない。だがこのまま朽ち果てる事ができるなら、それはそれで本望だ」 「バカなことをいうな!サフィア。真珠に会わせてやれ!いったいどういう手法を使ったのかは知らぬがこんな厳重な警備な星に単身で乗り込む事がきたのだ。ある意味天晴れじゃないか」 「ではまず、私が会おう」 「まぁまぁ、そう焦るな。グレナもたしかに綺麗だが、真珠というのは息を飲むような美少女だよ。いや貴国では美少女とは言わないか?男でもあるんだったな。どちらにしろ食指の動かされる魅力的な子だ。せっかくだ。皆で会おうじゃないか。ここに呼んでもいいかな?」 エマラウドがそんな風に誰かを褒めた事など聞いた事がなかった。サフィアはそんなエマラウドを
訝しげに見つめた。
|